さて、USB 3.0に関するレポートは以上なのであるが、こうなってくると「んじゃIntelはいつ自分のチップセットにxHCI Host Controllerを搭載してくるの?」という疑問は出てくるわけで、実際直球で「んでいつ入れるの?」とJeffに質問してみたが、当然答えが返ってくる筈もなし(「搭載したらプレスリリースだすからそれを待ってろ」という、これまた直球の答えが返ってきた)。なので、ちょっと推定してみたいと思う。
まず、現状のIntel X58とか、次に出てくるIbex Peakには絶対入らない。Photo08にもあるように、Product Developmentに入るのがこれから(そろそろ始めているところかもしれない)だそ。Board Deploymentが2010年となっているから、時期としては2010年~2012年の間といったところだ。この時期にはとっくにX58やIbex Peakなど使われていないだろう。世代的にもSandy Bridgeに入ってる筈で、なのでプラットフォーム的にはは2~3世代先になるだろう。
問題は、これと同時にSATA/6GとかPCI Express Gen3も控えていること。市場投入が始まったX25-M Mainstream SATA SSDの場合、2台構成のRAID 0までは性能が上がるが、これを超える場合は外部のRAIDコントローラを使うなどしないと、ICHの側(というか、正確に言えばDMIそのものだろう)がボトルネックになって性能が上がらないというところまで来ている。従ってSATA/6GやUSB 3.0に対応するためには、根本的にCPUとI/O Hubの間の高速化が必要になる。
もう少し具体的にみてみよう。例えば将来のNehalem CPUと将来のPCH(Platform Control Hub:Ibex Peakの後継製品)が今と同じDMI 1.0で接続されているとする(図1)。DMIはPCI Express Gen1のx4をベースにしており、Up/Downともに1GB/secの帯域を持っている。対してデバイスの方は、
・USB 3.0 : xHCIホストは1つで、そこに複数のUSB Portが接続されるが、トータルとしては最高速度の500MB/sec(Up/Down)
・SATA/6G : ポートあたり最大600MB/secなので、4~6ポートあるとするとトータルで2.4~3.6GB/sec(Up/Down)
・10GbE : 10GBase-Tが搭載された場合、実行速度は10Gbpsをやや下回る(9.4Gbps前後)ので、実効速度は概ね1GB/sec前後(Up/Down)
といったところ。他にもAudioやらなにやらはあるが、必要とされる速度はこれらよりも少ないから、無視しても差し支えないだろう。こうなると、デバイス側は合計で3.9GB/sec~5.1GB/secということになる。どう考えても、これはマッチしていない。つまり、DMI 1.0で繋ぐという方法では到底耐えないことになる。大体現状でもSATA/3Gが4~6ポートだから、これだけでフルに稼動すると1.2GB/sec~1.8GB/secとなっていて既に足りないわけで、ここにUSB 3.0を繋ぐのは無理である(というか、繋いでも意味が殆どない)。
ではどう解決するか? 可能性の一つは、DMIの高速化だ。元々Nehalem世代のLynnfieldやHavendaleはPCI Express Gen2 x16のI/Fを持っている。だから、DMIのI/FをGen 2相当にすることは無理ではない(というか、Gen2のPHYをGen1相当で使っているのではないかと想像される。1つのコアに、Gen1とGen2、2種類のPHYを統合するのは検証の手間が増えるだけでいい事は何も無いからだ)わけで、PCHの方もGen2相当に引き上げればそれだけで2GB/sec。まだミスマッチはあるが、多少マシになっている。更にUSB 3.0やらSATA/6Gが出てくる頃には、PCI Express Gen3もターゲットに入っているわけで、ならばGen3相当の8GT/sまで速度を引き上げれば帯域は4GB/secとなり、SATA/6Gが4ポートならマッチするところまで来る。
もう一つの可能性は、DMIの代りにQPIを使うというもの。現状のQPIは20bit Widthで帯域は6.4GB/s(Up/Down)となっているが、QPIは20bit以外に10bit/5bitの動作も行える(帯域はそれぞれ1/2の3.2GB/sか、1/4の1.6GB/sとなる)。20bit幅のQPIは6層以上の配線が必要になるので、メインストリーム向けにはまるで適さないが、10bit幅ならばこのあたりが緩和される可能性もあるし、帯域的にはややマッチしていないものの、DMIを使うよりはマシである。しかもこの場合、技術的には「性能に不満があれば上位の20bit QPIのM/Bに乗り換える」というアップグレードを提示できることになる。20bit QPIなら6.4GB/secだから、SATA/6Gが8ポートとかでも概ねマッチするわけで、技術的には非常に魅力的な解に思える。
ただ、どちらの場合でも、現在のIbex Peakと互換性がなくなるのが問題である。だからといって、折角のプラットフォームを半年で切って捨てたら、OEMベンダーからクレームの嵐だろう。最低でも1年、現実的には2年程度はこのプラットフォームを維持すると思われるので、逆に言えば2011年あたり以降からはxHCIを統合した新プラットフォームに切り替わる可能性がありそうだと筆者は見ている。遅くても2012年あたりで、逆に言えば2010年の可能性は無い、というのが筆者の推定だ。