実体経済への悪影響を政府高官やマスメディアが懸念

本格的な登場から間もなく丸4年間。前述のように、RMTの年間取引総額は100億元(約1,600億円)を超える大市場に成長した。だが、RMTは多くの問題を抱え、時には激しい議論を呼んでいる。

まず、合法的なビジネスとなることがRMTの一番大きな課題だ。中国政府はRMTに対し、厳禁するとの姿勢を内外にアピールしたことがある。それは2006年末のことだった。中国の若者の間で急速に広まった「QQ幣」という名のバーチャル通貨があるが、学者やメディアの間では、これが人民元で取引されることは人民元や金融システム、中国経済全体の安全性を大きく損なうことに繋がるのではないかと強い懸念が示された。

その後、中国の文部行政を統括する政府機関である文化部や、中国の中央銀行である中国人民銀行などの高官も、QQ幣やゲーム内通貨と人民元の取引を禁止すべきであると強く主張。だが今日に至るまで、その主張を具体化した対策は何一つ打ち出されていないままだ。

要するに、RMTは政府によって禁止されるべき違法取引とみなされているにもかかわらず、現実として、RMTの取引は公然と行われているのである。

さらに興味深いのは、ゲームIDやキャラクターツール、ゲーム内通貨などのバーチャルアイテムが盗まれた場合、中国各地の警察が地域によって異なった対応を取ることだ。

例えば、同じオンラインゲームの同じツールが盗まれた際、持ち主のゲーマーが警察に届けるとする。すると、A地では警察が盗難事件として捜査に乗り出すのに、B地では盗難事件としての受理さえしないのだ。要するに、バーチャルアイテムの合法性、現実の財産として認めるかどうかなどについて、全国共通の認識が出来上がっていないのが現状なのである。