マイコン電子工作には組み込み機器開発の基本が詰まっている。

マイコン上で動作するファームウェアをPC上で開発する「クロス開発」、そしてできあがったファームウェアをマイコン内部のフラッシュROMに書き込む「プログラミング」、この2つを行うことでマイコンは動作を始める。

今回"かなで"ではPSoCマイコンを使用しているので、PSoCマイコンにおける開発環境を簡単に説明したい。なお、CQ出版より「PSoCマイコン・トレーニング・キット」(JAN9784789838337、1万1,550円)という解説書と開発キットがセットになった書籍が発売されているので、本格的に勉強したい人はそちらを参照するのも良いだろう。

PSoCマイコンで開発を行うにはプログラミングを行うための「PSoC MiniProg」(PSoCミニ・ライター)を入手する必要がある。PSoC MiniProgは有料なため購入しなければならないが、47米ドルほどなのでホビーとしてそんなに敷居が高いわけでもない。日本だと秋月電子通商が扱ってくれているが、在庫状況が厳しく、品切れも多いため注意が必要である。米Cypressのオンラインショップ(英語)から、PSoC MiniProgが付属している任意のEvaluation Kitを直接購入した方が早いかもしれない。

なお、「PSoC FirstTouch Starter Kit」という安価なトレーニングキットが発売されているが、これに添付されているプログラマは、同梱のデバイスとごく一部のデバイスしかプログラミングできないという制限がある。今回"かなで"で使用しているPSoCマイコンCY8C29466では使えないので、ここではお勧めしない。

このPSoC MiniProgの入手が最大の難関なのだが、それ以外の開発環境やCコンパイラは現在Webからのダウンロードにて無料で入手できるため特に困る部分はない。ぜひともPSoCマイコンを使った電子工作にチャレンジしていただきたい。

「PSoC Designer」

図12: 「PSoC Designer」

さて、PSoCマイコンの開発環境は「PSoC Designer」(図12)という名前の統合開発環境である。このPSoC Designerでは、PSoCマイコン内部のハードウェアデザインと、アセンブラによるファームウェア開発を含んでいる。マイコンへのプログラミングは「PSoC Programmer」という名前のアプリケーションで行うのだが、これはPSoC Designerとは別のアプリケーションになっている。

この2つとPSoC MiniProgがあれば、基本的なPSoCマイコンの開発をスタートできるわけである。PSoC DesignerとPSoC Programmerは、Cypressのサイトから無料でダウンロードできる。

PSoCマイコンのCコンパイラはこれまで有償であったが、最近推奨コンパイラがHI-TECHのものに変更になったと同時に無料で利用できるLite版「Hi-Tech C Lite」が提供されることとなった。Lite版は商品版に比べてコンパイル時の最適化が行われないという制限があるものの、出力バイナリサイズに制限がないためホビー用途にはありがたい存在である。CコンパイラはHI-TECHから入手できるが、入手の方法からインストールの手順まで日本語での解説資料がCypressに用意されているので、参照されたし。