テレビで快適にネット利用「Cinematic Internet」

Widget Channelは、第5世代のYahoo! Widget Engineをベースにしており、Widgetを通じてインターネットのコンテンツ/情報、サービス、コミュニケーション機能などをテレビで楽しめるようにする。Widgetの導入・管理、そして利用はすべてリモコンを使って操作できる。

Widget Channelを呼び出すと、テレビ画面の下側にWidgetのアイコンが帯状に広がる。その中の1つをクリックすると画面左側にサイドバーとしてWidgetの機能が展開する。テレビ放送を見ながら同時にWidgetを操作できるようにデザインされており、写真のスライドショーなど、必要に応じて全画面に切り替えられる。

Widget Channelを呼び出すと、テレビ画面の下側にTV Widgetのアイコンが並ぶ

プレビューを見ながらTV Widgetを選択できるWidget Gallery

サイドバーに展開されたFlickrのTV Widget

Yahoo! Finance

映画レンタルBlockbuster。作品をブラウズしながら、トレーラー再生を選択すると全画面に切り替わる

Widget Engineベースであるため、Web向けと同様にJAVASCRIPT、XML、HTML 、Flash技術など使ってテレビ向けアプリケーション(TV Widget)を作成できる。デベロッパにとっては、Webアプリケーションの開発環境との互換性が大きなメリットになる。現時点でBlockbuster、CBS Interactive、CinemaNow、Disney-ABC Television Group、eBay、Joost、MTV、Twitterなどが、TV Widgetを開発する計画を表明している。

テレビ攻略にはテレビ専用のソリューション

テレビでIntelとYahoo!が提携するのは、今回が初めてではない。Intelは05年のIDF Fallで「Viiv」というホームエンターテインメントをターゲットにしたパソコンプラットフォームを発表した。年が変わって06年1月、CESにおいてYahoo!が「Yahoo! Go TV」というテレビ向けコンテンツサービスを発表した際に、Intel CEOのPaul Otellini氏が登場してViivでの提携を明らかにした。現状を考えると、テレビ攻略という点ではどちらも成功しているとは言い難い。前回もインターネット利用の新たな可能性が大々的にアピールされていただけに、「Viiv + Yahoo! Go TV」の組み合わせが「Intel Media Processor + Widget Channel」に姿を変えただけで終わるのではないか……と疑いたくなる。

この点についてKim氏は、PCを土台にしたソリューションはPCユーザーをテレビに結びつけられるが、テレビのマスマーケットを攻略するにはテレビを基盤にした専用のソリューションが必要になるという考えを示した。

Yahoo!も同様で、Yahoo! Go TVはPC向けのコンテンツにテレビからアクセスできるようにするだけのサービスにとどまっていたが、今回は「Cinematic Internet」と呼んでテレビでのネットコンテンツの快適な利用を追求している。Yahoo!のConnected TV担当バイスプレジデントのPatrick Barry氏によると、前述のようなインターフェイスに加えて、PINを使ったアカウントログイン、サービスのパーソナル化、セキュリティ機能、保護者コントロールなどをテレビ向けに用意するという。

もう1つ成功のカギとして挙げられたのがオンライン広告だ。メディア投資会社のGroupMのCEOであるIrvin Gotleib氏は「インターネットに比べると、われわれはテレビに約5倍の金額を投じている」とコメントしていた。Widget Channelでは、Widgetを通じてオンライン広告をTV視聴者に提供できる。テレビ視聴者を対象に、テレビCMよりも個々に関連した広告を提供できるとなれば、広告主にとって大きな魅力である。06年以降、Yahoo!が多彩な要求に応えられる統合的な広告サービスを目指して、広告プラットフォームを改善してきたのも好材料となっている。

デパートのMacy'sのセールス広告

基調講演の最後にKim氏がホストになり、Disney-ABC、Sony、Comcast、GroupM、Yahoo!の代表と、テレビとインターネットについて議論

基調講演では、Comcast、Disney、Samsung、東芝など、数多くの企業からのサポートコメントが紹介された。放送、家電、コンテンツを巻き込んだ動きを印象づけるものだったが、いずれも具体的な製品計画に触れなかったのが気になるところだ。IA SoCに関心を持ちながらも、大きな一歩をふみ出すには至っていないような雰囲気も伝わってきた。ただしIDFの展示会場ではGigabyteやTatungなどのプロトタイプが披露されており、アジア地域を中心に搭載製品が芽生えそうなきざしが見られた。ネットブックのように、アジアメーカーが先駆けとなって市場を作り、米国メーカーが後から参入する可能性もありそうだ。

Widget ChannelのデモにはGigabyte製のCE 3100搭載デバイスが用いられた

IA SoCのロードマップ。Silverthorne世代のSodavilleが控え、セグメントごとの最適化が進む