アンケートでは、テレワークに対する需要を問う質問も設けられた。「テレワークで仕事をするチャンスがあったらやってみたいか」という設問に対して、67%が「働きたい」と回答した。また、テレワークで望む働き方として「担当業務が遂行されていれば、勤務時間は自由(みなし労働)」を挙げた割合が60.5%に及び、現在企業で導入されている「週1日をテレワーク」という主流の形態を大きく上回る結果となった。「家事や育児は、たとえば洗濯機のスイッチを入れて、後は洗濯が終わるまでお任せという仕事が多い。テレワークなら、その一瞬の時間を捻出し、後は通常どおりに働くことができ、仕事も家事も効率よくこなせるようになる。細切れで仕事をしたいと考える人が多いのでは?」と田澤氏は推測している。

前述のとおり、田澤氏が率いるワイズスタッフは"ネットオフィス"という概念のもと、1つのプロジェクトを各役割を担うテレワーカーが協働して作業を行うという点で、一般的な企業が制度として導入しているテレワークとは一線を画する。従来のテレワークがオフィス業務を基本とし、資料作成など持ち帰りが可能な業務のみをテレワークで実施するのに対して、ネットオフィスはテレワークが基本の働き方のため、テレワークで実現できる業務が主体だ。

ここでのテレワーク導入のポイントは田澤氏曰く「テレワークのためのIT化ではなく、業務をIT化する上でテレワークを実現していくこと」だという。そこでのカギとなるのは、リアルのオフィス環境をいかにネットワーク上でセキュアに構築するかにある。

田澤氏が考えるチーム業務を円滑に進めるために重要なオフィス環境は、"コミュニケーション"だ。「職場で重要なのは、いわゆる"ほうれんそう(報告・連絡・相談)"。これはバーチャルなオフィスでも同じこと」。テレワーク業務では、チームのコミュニケーションは、メールをはじめ、テレビ会議、インスタントメッセンジャーなど、それを可能にする多様なツールが存在する。しかし一方で、業務の進行や他のスタッフの状況を把握するのに、メールの履歴やコミュニケーションボードのスレッドを辿ったりして膨大な情報を処理するだけでも一仕事で、仕事の生産性を低下させる危険性がある。

そこでワイズスタッフで独自の業務コミュニケーションツールとして開発されたのがPro.メールだ。「メールというのは本来1対1の連絡ツール。Cc:やメーリングリストによるコミュニケーションでは、話題の混乱や返信漏れなど限界があるので、テレワークには向かない」と話す田澤氏。Pro.メールは、一見するとふつうのメールソフトだが、メールをプロジェクトごとに管理するのが特徴だ。

「Pro.メール」はプロジェクトごとにアカウントが用意されるのが特徴。進捗具合が一目でわかるしくみだ

利用しているメンバーは参加しているプロジェクトごとにアカウントが用意され、プロジェクトに関わるメールをすべて受け取ることができるだけでなく、受信したメールをツリー表示することも可能なので、未返信メールや話の流れを一目で把握できる。メールのやり取りが掲示板のスレッドのように整理されていくイメージに近い。「これを見ると、たとえばあるプロジェクトのやり取りで、誰のところで返信が止まっているかも一目瞭然。宛先間違いやCc:のし忘れといった心配もない。言ってみれば、メールをベースにした、業務の"見える化"のためのツール」と田澤氏は説明する。ちなみに、Pro.メールは情報処理推進機構(IPA)の2007年度「中小ITベンチャー支援事業」として採択されて開発された事業で、現在、一般向けにもライセンス販売が行われている。