そんな田澤氏が抱く、女性の労働環境改善への強い思いは今日でも続いている。ワイズスタッフでは、今年5月から「女性の就業環境に関するアンケート」を実施し、6月17日にその集計結果を公表した。

「厚生労働省や経済産業省で有識者が集まって、女性の労働環境についていろいろ議論はするが、現場の声を集めるという機会はほとんどなかった。働きたいというニーズがこんなにも多様化している女性の実際の声を届けたい」と、今回アンケートを独自に行った理由を説明する。

アンケートを通して実感したのは「結婚・出産後も以前と同様に働きたいと考える女性、仕事量や役割負担はそこそこでも働き続けたいと考える女性など、働く女性のニーズは多様である」という点だという。しかし、「それに対する制度は、国が用意する施策も少子化だから保育園を増やそうとか一様なものばかり。保育園に子どもが入れて、働けるようになったとしても、それはまた別の問題に発展していくのに、それに対するフォローがなされていない。政府はいろいろな委員会を設けて少子化対策や子育て支援を話し合っているが、施策が縦割りで行われているので全体を見渡したものになっていない。子育てしながら女性が働くための制度は整いつつあるが、女性が働きにくい状況はまだまだ改善されていない」と、アンケート結果を田澤氏は分析する。

アンケート結果の回答を1つ1つ読み込んだという田澤氏。「女性の働きやすさは保育園の数では決まらない。政府はすごく努力していると思うが、努力の方向性がやや違うのでは、と思うこともある」(田澤氏)

さらに、アンケートに寄せられた回答の中でも意外だったのは"女性の敵は女性"という意見だという。「結局、出産・育児後の女性が職場で働く場合には、どうしても同僚への負荷がかかることは避けられない。正直、制度を利用して甘えた働き方をしている女性もいるし、『なぜ私ばかりに負荷が?』と不公平感を抱く女性も多い」という声もあるそうだ。

また、「制度が整ってもそれを利用できない」という声も多く聞かれたという。田澤氏は「大企業では、たいてい子育て支援のための制度は用意されているけれども実際にはそれがあまり活用されていない。特にキャリア志向の女性にとっては、結婚・出産をしないという選択へ流れていく場合もある。選択は個人の自由だとはいえ、結婚・出産をしない主な理由が労働環境にあるのであるというのなら、それは改善すべき重要な問題」と指摘する。