Act.4 - おじいちゃんがかっこよすぎて困る……困らない

続いては、老人になってしまったスネークにスポットを当ててみよう。なぜ老化してしまったのか……はプレイすればすぐにわかるので、とにかくプレイしてみてほしい。そして、シリーズのプレイ経験がある人は、かつてのスネークとの違いを楽しむ、初めてプレイする人は、"おじいちゃんスネーク"に惚れるところから始めよう。中腰で歩くと腰を痛めるスネーク。ちょっとした段差に手間取るスネーク。体術にいまいちキレがないスネーク。重い装備を持っていると走るスピードの落ちるスネーク。ローリングに失敗してまたまた腰を痛めるスネーク。「オールド・スネーク」と呼ばれるたびにちょっとがっかりしちゃうスネーク。ね、どうです? 愛らしいでしょ? それなのに、いざというときには憎たらしいほどにカッコイイ。この男の物語がいかにして終わるのか……。もはや目を離すことができない。

主人公のスネークは、本作では老化が進んでいるため「オールド・スネーク」と呼ばれる。確かに白髪になり完全におじいちゃんなのだが、銃を構える姿はかつての姿がダブって見えるほど凛々しい。この男の魅力は老化ごときでは衰えないのだ!

さらに、脇を固める人物がこれまたすばらしい。BB部隊の女性陣もさることながら、一押しは新キャラの武器商人ドレビンと猿のリトルグレイ。彼らはとにかくいい味を出している。筆者は彼の決め台詞「EYE HAVE YOU」を流行語にしたいぐらい気に入っており、知り合いとの去り際にはムダに使っていたりする……。

そして、シリーズ経験者は次々に登場する懐かしい顔を見てニヤニヤしてほしい。とにかくいっぱい登場する。かつてはザコ敵として登場していたお腹の弱い彼も今回はしっかり活躍したり、小島監督の作った別のゲームから同名のキャラクターが出てきたり(決して同一人物ではない)と、ネタや過去の複線が山のように盛り込まれている。忘れてしまっている人は、後述の「データベース」を利用したり、過去のシリーズをあらためてプレイし直したりするのもよいだろう。『MGS4』が初めての人は、ここから過去の作品へさかのぼって遊んでみると、プレイ済みの人が味わえない楽しさを感じることができるかもしれない。

ラットパトロール・チーム01の面々。シリーズをプレイしてきた人には懐かしい顔も見て取れるはずだ。中央がメリル、右下でポーズを決めているのが、おなかの弱い彼。右の「!」マークモヒカンがジョナサン、左の黒人がエド、この2人は小島監督のほかの作品にも同名の名前のキャラが存在する

武器洗浄屋のドレビン。実はドレビンは名前ではないが、そんなことはどーでもいいんです。もう、ほんといいキャラですよこの男。決め台詞は「EYE HAVE YOU」。個人的には、振り付きで日常生活でも使っていきたいくらいしびれちゃってます

ちなみに、『メタルギア ソリッド』はインターネット環境があればプレイステーション 3から接続できる「PLAYSTATION Store」でダウンロード購入が可能で、その場合、プレイステーション・ポータブルでも遊べるのでお手軽感も○だ。

Act.5 - シリーズ集大成が意味するもの

最後になってしまったが、このレビューを書くにあたり、どうしても断言しておかなければならないことがある。それは、この『メタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』が、はっきりいって、これまでのシリーズをすべてプレイ済みのファンのために作られた作品であるということだ。本作は、シリーズの集大成として、過去の作品に散らばっていた謎が次々と解き明かされていくのだが、シリーズ未プレイの人にとっては、さっぱりわからないことだらけである。もちろん、未プレイの人でも大筋を楽しめるようにという点のいて妥協はない、がしかし、上記のような細部を理解させることはバッサリと切り捨てている。キャラクターについても同様だ。本作だけでも魅力は伝わるものの、やはりこれまでの蓄積のある人が感じる充足感にはほど遠いのではないだろうか。

とにかくあらゆる面でこれほどまでに"潔く"ファンのために作られたゲームは珍しい。こう書いてしまうと、いろいろな誤解や、おしかりを受けるかもしれない。しかし、これが真実であり、同時にもっともすばらしい点であると筆者は思っている。シリーズ作品である以上、それこそが本来の姿であり、制作側がファンと心中する覚悟を持っていなければ、この作品は生まれなかったのではないだろうか。プレイを通して、それほどまでの決意や愛情を感じた。そんな『MGS4』だからこそ、どれだけすばらしいという言葉を並べていても、この点を賛辞し、説明しなくては意味がないと思うのだ。

では、シリーズ未プレイで興味のある人はどうすればいいのだろうか? 答えは簡単。過去のシリーズを今からプレイすればいいのである……というのが本音なのだが、それはちょっと厳しいという人も多いだろう。そんな人は、現在「PLAYSTATION Store」から「METAL GEAR SOLID4 DATABASE」という無料のデータベースソフトがダウンロードできるので、これを利用して少しでも知識を補完しておくと、より一層『MGS4』の世界を楽しめるはずだ。このソフトには、シリーズに登場した人物や兵器、設定などを収録されており、用語、人物相関図、年表などから検索することもできる。また、「バンドデシネ」という『メタルギア ソリッド』ならびに『メタルギア ソリッド 2』の物語をコミック風に再構築したDVDビデオも発売されているので、こちらで物語を補完するのもひとつの手である。

現在無料ダウンロードが可能なデータベースソフト。登場キャラやメカ、事件、人物相関図、年表などなど「メタルギア サーガ」に関わるあらゆる知識を補完できる便利なコンテンツだ。インターネット環境のある人は迷わずダウンロードすべし!

epilogue - 楽しんだ人が勝ち

長々と書いてきたが、結局のところ本作は「ゲーム」である。テレビ番組や映画と変わらないエンタテイメントの1つでしかない。つまりは、どんなところであっても楽しんでしまえばいいのだ。その点で言えば、このゲームは可能性がたくさん詰まっている。いいテレビを持っている人はグラフィックを最高に楽しめる。BGMも洗練されており、曲も豊富だ。シナリオももちろん秀逸。キャラクターも愛らしく、憎らしい。老人フェチにも最高のはず。アクションが苦手でも大丈夫。カメラワークやカット割りなどは、映画好きならグッとくるかもしれない……などなど列挙すれば限りないほどである。そして、少しでも気になってきた人には、この言葉を贈りたい……「いいセンスだ」。

さぁ、どうかその好奇心を殺さず、ぜひ遊んでみてほしい。これを機に「ゲーム」の面白さ、思い出してみませんか?

ゲームタイトル メタルギア ソリッド 4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット
メーカー名 KONAMI
対応機種 プレイステーション 3
ジャンル タクティカル・エスピオナージ・アクション
発売日 6月12日 (発売中)
価格 8,800円 (通常版)
9,800円 (スペシャルエディション)
CEROレーティング D (17才以上対象)
(C) 1987 2008 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.