伝統的なコミュニティサイトにとどまるケースも

基本型のSNSは、この三つの中でも、最も規模を広げやすいタイプである。理由はいたって簡単。対象ユーザーの範囲が広く、友達づくりの動機も比較的はっきりしているためである。

だが、濃密な人間関係、ネットワークが存在すれば、マーケティングの精度も当然増す。この点で言えば、基本型のSNSは好ましくない、ということになる。気楽に友達づくりができ、緩やかなネットワークを志向するだけに、ビジネス面からみればSNSとしての特徴が稀薄となり、「伝統的なコミュニティサイト」といった次元にとどまっているからである。

一部のSNSは、ごく普通のコミュニティサイトに比べても内容的に見劣りする。このようなサイトが「新型SNS」になる可能性はない。むしろインターネットの持続的な発展のなかで、伝統型の応用としての方向性を模索するだろう。

しかし未来を切り開く新奇性がないからといって、現段階でビジネスにならないとも言えない。それどころか、基本型のSNSは、経営面からみれば上記三つのタイプの中で、最もうまく経営されているということができる。

「人間関係のネットワーク化」と「実名登録制」の導入は困難

第2の型である関係志向型SNSにとっても、規模はもちろん求められる(三つのどのタイプにとってもスケールメリットは重要かつ不可欠のものである)。だが、このタイプがもつ最大の特徴は、前述の(2)と(3)の実現可能性、つまり濃密な人間関係に裏打ちされた精密なマーケティングを可能ならしめるという点である。

こうしたWebサイトは大なり小なり「Facebook」の中国における複製品と言え、従って最もSNSとして備えるべき特徴を持っているとも言える。現在各SNSが例外なく始めているのが、実際の人間関係のネットワーク化と実名登録制である。

だが、両者とも決して実現しやすいことではなく、むしろ今のところはほとんど実現のメドが立っていないと言うべき状況にある。これは、現在の中国におけるネットワーク社会の発展段階と密接につながっている。

現実社会において人間関係をネットワーク化したり、実名登録制にしたりするのは簡単である。だが、SNSで実現するには立ちはだかる壁があるのだ。

それは、中国人のインターネットに対する考え方、中国の国情に照らし、そぐわない点があるからに他ならない。中国のユーザーはまだ、ネットを信頼して使うことに慣れていない。ネットワーク上で人間関係を切り開くというのは、理屈上では有り得ても、真実の情報がどれだけあるのかといえば、これまたかなり心もとない、と考える人が多い。

このような背景があるからこそ、関係志向型を目指すSNSが、基本型SNSに近づいてゆくのだ。関係志向型SNSについては、中国では、徐々に温められ、育てられるべきものである。その冗長とも言うべき発展速度が、実は中国の国情に合ったものなのだ。決して、速過ぎてはならない。当然このような状況であるから、関係志向型SNSの市場価値は、当面下降線をたどるであろう。