BPMこそ、最大のSOA推進要因、企業としての意思決定の弱さが阻害要因

SOA(サービス指向アーキテクチャ)についての最新技術、方法論、事例などを広く紹介するとともに、企業が実際にSOAに取り組む際の要諦などを提言する、「SOAサミット2008」(主催ガートナー ジャパン)が東京・港区で開催された。

ガートナー リサーチ バイス プレジデント 飯島公彦氏

初日の基調講演は「日本企業のSOA適用:実践の時 2008年の重点事項」との表題で、ガートナー リサーチ バイス プレジデント 飯島公彦氏が、日本企業のSOA適用の推進要因や阻害要因、SOA環境を構築する上で着目すべき技術などを解説した。

SOAを推進する要因として飯島氏は「BPM(Business Process Management)への注力」「実現テクノロジ・コストの低減と成熟度向上」「ベスト・プラクティスの確立」「より高度なビジネス俊敏性の探求」などを挙げる。

なかでも、BPMは特に大きな推進要因であるという。BPMは事業活動の工程を監視、分析するものであることから、実際の状況を可視化することで課題、弱点などが浮かび上がってくる。「およそ4割の企業は、SOAといっても、どこから手をつけてよいかがわかっていない。問題点が見えれば、改善のため、何をすべきか、というところにつながる」(飯島氏)ことになる。

一方、SOAの阻害要因としては「スキル/ガバナンスの欠如」「文化的・業務変化への抵抗」などが挙げられた。これらは、いわば、推進する要因の裏返しであり、問題点が明確になっていなければ、対策という考えにたどり着かないわけだが、いま、やっていることを変えたくない、との反応、変化に対しての柔軟性の欠如も障害物としては小さくないようだ。全体的には「企業としての意思決定の弱さが阻害要因」(同)になる。

業務目線でシステムをみるべき

SOAの設計に向かうには業務の観点から、変化に柔軟であることが重要であるという。ここを起点に「設計のベスト・プラクティスは、業務目線があって、初めてわかる」(同)。また、BPMにかかわる「システムと業務の不整合も業務の視点があってこそ、あぶり出される」ことになる。しかも「自らの努力でわかるしかない」(同)。技術という要素だけが備わっていたとしても、それだけでは十分だとはいえないわけだ。

サービスの構築にあたっては、「さまざまな業務目線で、試行錯誤することになるだろう。しかし、サービスの基盤が、継続的な変化に耐えられるようでなければならない」(同)。そのためには「システムと人は疎結合であるべき」で「基盤自体が他の要素と『疎』の関係であることが重要になる」と飯島氏は語る。人とシステムが強く結びつきすぎていては、変化に対し柔軟な対応はとれないし、基盤が、さまざまな要素と遭遇するたびごとに揺らいでしまっては、試行錯誤することはできないからだ。

SOAを構築する上で重要な課題となるのは、どうすれば新たなSOAと、既存の非SOAのアプリケーションを協調的に動作させることができるのか、との点だ。飯島氏は「グローバルでは70%、国内では80-90%が、新規と既存をつなぐことがSOAのテーマとなっている」と指摘する。技術的に必要となるのは「アダプタや変換のメカニズム」(同)であり「異種混在型SOA環境への対応」(同)だ。

ガートナーでは、「SOAの初期-中期段階での、設計のベストプラクティスを確立し、浸透させる時期には、設計スキルとテクノロジー実装のスキルという両輪が必須であり、標準化のプロセスと浸透のための人的配置が必要」(同)と提言している。