マイクロソフト コンサルティングサービス統括本部 プリンシパルコンサルタント 大竹功氏

このマイクロソフトの新機軸となるソフトウェアプラスサービスでも、SaaSはソフトウェアを提供する重要な一形態として重要視されている。経済産業省と総務省がそれぞれの立場からSaaS化を支援する姿勢を明確に打ち出す中、内部統制やコンプライアンス強化の必要性も色濃く影響し、企業のSaaS化の動きが加速することは疑う余地もない。しかし、SaaS化の事業化に向けて検討すべき課題はいくつもある。同社コンサルティングサービス統括本部 プリンシパルコンサルタントである大竹功氏は、ソフトウェアベンダがSaaS化を進めるために必要なアプローチとして、SaaSを取り巻く現状を正しく認識した上で、マーケティング、テクニカル、オペレーションという3つの観点からアプローチを考える必要があると指摘する。

一般のアンケート結果によると、SaaSのユーザ認知度は6割ほどに留まっているのが現状だ。実際にユーザが利用したいSaaSサービスとしては、カスタマイズが簡単なグループウェアや社内ブログなどのコミュニケーションサービスを筆頭に、専門家へのアウトソーシングニーズが高いセキュリティ関連、CRMなどビジネス変化が激しいフロントエンド分野に集中している。

逆に、生産管理や生産計画、物流管理などの複雑なワークフローが求められる領域では、SaaS導入が難しいと考える人が多いようだ。SaaSのメリットである導入コストの手軽さや管理のしやすさが市場のニーズにもはっきりと反映されている。さらに、ネットワーク障害やレスポンスへの不安などのデメリットも考慮すると、SaaS導入によりユーザーが得るバリューは、「トータルコストの削減」「導入スピード」「導入のしやすさ」の3つに集約されるという結論にたどり着く。これを踏まえてSaaS化への留意点を確認することが大切だ。

では、マーケティングではどんなことに配慮すべきなのか。Webがプロモーションの中心になるSaaSでは、顧客獲得のために従来の購買モデルとは異なる新しいプロモーションプロセスの設計が必要だ。検索や比較、トライアルといった従来のモデルにはない新しいプロセスがSaaSではマーケット拡大の重要な鍵となる。また、ソフトウェアベンダと販売代理店が連携する従来型モデルに加えて、販売チャネルの多角化も必要になってくる。料金プランに関しては、サービスの継続維持、導入や購入のしやすさという訴求ポイントが通信料金プランに共通しているとも言える。

技術面からのアプローチでは、既存資産の形態に応じて検討要素を選定していく必要がある。経済性や利便性に大きな効力を発揮する技術は積極的に採用すべきである。

また、SaaS事業の参入にあわせて企業のオペレーションにも変化が求められる。拡大する販売チャネルへの対応やサポートデスクの新設、サービスレベルのマネージメントといった表層部分と、システムを構築するための仕組みづくりといったバックヤード部分の検討が必要だが、プラットフォームベンダとの連携により、既存システムの有効活用が可能となり、オペレーションの負荷を軽減することができる。

3つの観点から見たSaaS化推進のポイント

大竹氏はこのようにSaaS化にあたっての検討課題に言及した後、マイクロソフトが今年3月から提供しているSaaSインキュベーションセンタープログラムについても触れている。同社は、このプログラムでビジネスモデルやアプリケーションアーキテクチャのコンサルティングを提供し、企業のSaaS化を支援する。ソフトウェアプラスサービス構想を推し進める同社が、企業のSaaS化を推進する足がかりとなることは間違いだろう。