Graphics、IOV、Cables

まずは最近公開されたSpecificationの内容から紹介したい。今年5月27日、やっとグラフィック向けの電源規格と言ってもよい"PCI Express 225W/300W High Power Card Electromechanical SpecificationRevision 1.0"がリリースされた。これは要するに2x3ピンあるいは2x4ピンのコネクタを経由して、最大300Wの電力供給を行えるようにするものだ。当初の予定では2H07(2007年後半)に1.0がリリースされる予定だったが、半年ほど遅れた形になる。基本的な内容に変化はないが、実際に見てみるといくつか違いがある。最大のものは、3slotを占有するカードの存在。また細かいところでは

  • 2x3のコネクタが3つ、という仕様が追加された(従来は2x3と2x4が1つずつ、あるいは2x3が2つ、という仕様だった)
  • カードエッジからの電力供給に25Wというオプションが追加された(従来はカードエッジから75W供給を前提にしていた)

などの差が見られる。また、3slotのものは合計1.5kgの重量が許される(2slotだと1kgまで)が、これを保持するリテンションに関しては具体的な構造は明示されず、単に"1kgないし1.5kgを保持できるようにすること"と明記されるに留まっている。このあたりは現状に即しているというべきか、なんと言うか。

150Wではすでに不十分、という話は実際にもうそういう状況になっているわけで、これは現状の追認に過ぎない。もっともこれの策定に携わっている主要メンバーはビデオカードメーカーであり、彼らはまだRev 0.3の頃から規格を先取りして製品化しているわけだから、仕様策定が遅れてもそれほど困らなかったとはいえる

「これは、225W以下のカードは2slotで作れるが、それ以上のものは3slotにする必要があるという意味か?」と聞いたら、「そう思う」との返事。ただこのあたりはさらに質問を投げてあるので、後で回答が来る...といいなぁ

またCableについては、Gen2対応のSpecificationの策定を2月に開始したことが明らかにされた。ただこちらはすでに対応製品が広く出回っている状況であり、コネクタなどに変更はあるかもしれないが、基本的にはスムーズに進むと思われる。

次がIOVである。2007年5月にATS(Address Translation Services) 1.0が、ついで2007年11月にはSR-IOV(Single Root I/O Virtualization and Sharing Specificaion) 1.0がリリースされたが、MR-IOV(Multi Root I/O Virtualization and Sharing Specificaion)がリリースされたのは今年5月12日とちょっと遅れた。そもそもSR-IOVがQ3/2007、MR-IOVはQ4/2007という予定だったから、SR-IOVが1四半期遅れ、MR-IOVは半年遅れである。

ATSに関しては、すでにベンダが対応製品のアナウンスをしている(例えばAMDのサーバ向けチップセットにIOMMUが入る予定であることを発表しているが、これは要するにATSに対応したという話である)、SR-IOVやMR-IOVに関してはこれからといった形になる。もっとも今まではそもそもベンダ間で統一した方針が取れなかったから、見切り発車も難しかった(このあたりが225W/300W High Power CEMと異なる点だ)が、これでやっと対応製品の開発が本格化することになる。

ただSR-IOVはともかく、MR-IOVはいくつかプロトコルの変更があるため、既存の製品そのままという訳にもいかないし、SR-IOVはともかくMR-IOVはエンタープライズ以外の用途は考えられないため、製品の開発や動作検証にはかなりの期間を要すると思われる。実際に製品が出荷されるのは、2010年あたりになるのではないかと予想される。

「Cableの議論が始まったときに、すでに5GT/sは視野に入っていたはずだが?」と聞いたところ、「確かにベンダはそういうインプリメントを行っているが、Specificationはまだ2.5GT/s対応でしかない。これはSpecificationをGen2対応にするという意味だ」との返事が。そういう話だっけ?

SRVとMRVの構図(Members ImprementationのセッションでPLX TechnologyなどはMRVを使うことでサーバのコストを理論上安く抑えられるという話をしていたが、問題はMRV対応のカードやスイッチ、ホストがどのくらい価格を既存のIOV未対応製品に乗っけてくるか、であろう。また現時点ではまだテストの方法論も確立してはいないため、まずはこのあたりから始める必要があるだろう)