カメラの選択

今回の撮影にはマイコミジャーナル編集部の連中も愛機を持ってやってきた。カメラはキヤノンEOS40Dと30D。レンズは40DにEF100-400 F4.5-5.6L IS USM、30DにはEF70-200 F2.8L IS USMを付けて撮影。編集部員の腕はともかくとして、カメラ構成は競馬写真を専門に撮っている方々のサブ機クラスだ。連写速度は40Dが6.5コマ/秒、30Dは5コマ/秒。

・EX-F1
小型軽量ながら光学12倍ズーム搭載。スチル撮影だけでなくハイビジョン撮影もできる優れもの。これ1台で競馬撮影がすべてできてしまうので、疲れ知らず

・EOS 40D
EOS 40Dはキヤノンの中級者向けカメラ。6.5コマ/秒の連写機能はこのクラストップ。高いAF精度の実力を発揮させるためにも、明るい大口径の望遠レンズが必要

・EOS 30D
EOS 40Dの登場で第一線から一歩後退したEOS 30D。5コマ/秒の連写速度では競馬撮影でシャッターチャンスを逃しやすい

・EX-F1
スタンドに設定した撮影ポイントからゴールまでは約50メートル。EX-F1のズーム端432ミリで狙うと馬体がきちんとフレーム内に収まる

・EOS 40D
ゴール手前50メートル地点。レンズの400ミリは焦点距離1.6倍のEOS 40Dでは640ミリ相当になる。手ブレ補正機構内蔵のレンズを使っていても、手持ち撮影ではかなりの確率でブレてしまう

・EOS 30D
200ミリのレンズ+30Dでゴールの瞬間を撮る。320ミリ相当の焦点距離になるが、トリミングをしないと周辺まで写りすぎて、迫力に欠ける

テスト結果

・EOS 40D+EF100-400ミリ

EF100-400 F4.5-5.6L IS USMは、最大400ミリもの望遠域ながら、手ぶれ補正機構がレンズに内蔵されているため、1/60秒でもじゅうぶんに手持ち撮影が可能なため、競馬写真ではもっともよく使われるレンズの一つだ。そうは言っても時速約60キロで疾走する競走馬を確実に捉えるためには、1/300秒以上は確保したいので、TV(シャッター優先)モードにして、絞りをF8程度、ISO感度を400に設定した。しかし非力な女性が扱うにはカメラ、レンズともに重く、フレーム内に確実に競走馬を捉えることは難しかった。

重いカメラを長時間構えていると、腕が疲れてフレーミングが斜めになりやすい(特に女性では)。しかも手ブレ。

カメラの設定を間違えていたのか、露出がオーバー。しかもピントがきていない。EX-F1で撮影すればこのような初歩的なミスはまずない

6.5コマ/秒をほこる40Dでもゴールする瞬間が捉え切れていない。最大60コマ/秒連写可能なEX-F1ならば、まずこのようなミスは起こらない

・EOS 30D+EF70-200ミリ

EF70-200 F2.8L IS USMを付けての撮影。撮影したスタンドからゴール板までは50メートル以上あり、フレーム内一杯に競走馬を写すことができなかったので、残念ながら迫力あるシーンは撮れなかった。しかし30DはAFセンサーの中央横センサーが「F2.8対応」なので、明るいレンズとの組み合わせは良好で、うまく測距するととても切れのいいシャープな画像が得られた。こちらもTVモードで基本的にシャッタースピードは1/300秒以上に設定。

ゴール前50メートルの叩き合い。F2.8の明るいレンズを使っているため、AFはしっかりフォーカスしている。もう少し寄れればより迫力のある写真になった

一周目のゴール板通過。馬のスピードがまだゆっくりなのと、300ミリ相当の画角なので、迫力はないが、フレーミング内に被写体がきれいに収まっている(これがゴールだったらよかったのに)

馬のスピードよりも連写する気持ちが先走ってしまい、かろうじてゴールの瞬間を捉えることができた。連写のコマ数が不足しているので、すでにゴール板を過ぎてしまい、シャッターチャンスを逃している

・EXILIM EX-F1

光学12倍ズームは最大望遠域432ミリなので、ゴールまでやや遠い場所に撮影ポイントを設置しても迫力ある写真が狙える。デジタルズームを併用すれば最大48倍ズームになるが、画質はせいぜいL判プリントクラス。画質優先派は、やむを得ない場合を除きデジタルズームの併用は極力避けた方がいい。連写能力はまさに別次元のすばらしさだ。最大60コマ/秒だが、競馬写真では15~20コマ/秒あれば、まず走り姿を撮り逃がすシーンはないので、余裕を持って撮れる。撮影したデータは一度バッファーに保存され、その後SDカードに記録されるが、さすがに60コマを一挙に記録するとなると時間がかかる。今回はクラス6のわりと速いSDHCカードを使ったが、それでも書き込みに40秒近くかかった。競馬の場合は次のレースまで30分あるから問題ないが、野球やサッカーのシーンなどではチャンスを逃しやすいので、書き込みの速いメモリカードが必携。

皐月賞前日に行われた中山恒例の大障害。距離にして100メートル近く離れていたので、デジタルズームを併用。ジャンプの瞬間は見事に捉えられたが、デジタルズームを使った分画質は劣ってしまった

ゴール板の延長線上近くから撮影。20コマ/秒でゴールの瞬間をしっかり捉えている

ゴール板をやや斜めから見る位置で撮影。このくらいの角度から撮るほうが、何頭かがなだれ込んだとき、接戦の雰囲気がよく出る

ゴール手前50メートル付近の、接戦から1頭が抜け出した瞬間。15コマ/秒でここから4秒間、ゴールの瞬間まで連写

返し馬の写真。さすがに近くから撮るとAFが追いつかないため、フォーカスを外しやすい。やや距離を置いて撮る

必死に逃げるキャプテントゥーレ号、それを猛追する後続馬。15コマ/秒で4秒間も撮れるからこその写真

最後は2馬身半も後続馬を振り切ったので、写真としては迫力のないものになってしまったが、ゴールの瞬間はしっかり撮れている

また、高画質ハイビジョンと、高速度撮影がすばらしい。ハイビジョンは1920×1080ドット(60field:1080i)のフルHDと1280×720ドット(30fps:720P)の撮影ができ、高速度撮影(スローモーション)は300フレーム/秒、600フレーム/秒、1200フレーム/秒が撮れる。ゲートが開く瞬間や、数頭がゴール板へダンゴ状態でなだれ込むシーンなどを、家のテレビで見るとこれまでと違った競馬の世界が見られて実に楽しい。ひょっとするとEX-F1の真のすごさは静止画撮影よりも動画撮影かもしれない。

・Hivisionムービー1
皐月賞のスタート風景。デジカメとは思えないほどの高画質ムービー(※QuickTime H.264形式)

・Hivisionムービー2
中山芝2000メートル。AFの追従性が遅いため、時々ピントが外れるのが、今後の課題だ(※QuickTime H.264形式)

※EX-F1は1920×1080ドットのフルHD動画撮影も可能。しかしフルHDはQuickTimeが未サポートのため再生できず、容量も大きくなるため、ここでは1280×720ドットで撮影したものをカット編集の上掲載した

・300フレーム/秒
返し馬。今後の勝ち馬研究に大いに威力を発揮しそうな高速度撮影だ(※QuickTime形式)

・600フレーム/秒
今まで見たことがない競馬の世界が撮れるのが楽しい(※QuickTime形式)