ITは発展しても、情報工学系の学生が減っている

日米中印の情報通信関連学科の学部卒業者数の推移(「平成19年度 総務省情報通信白書」)

Imagine Cup 2008 日本大会の様子を紹介する前に、マイクロソフト日本法人がThe Student Dayを主催する背景について触れておきたい。そこには、日本のIT業界が抱える課題が存在する。同社でアカデミック教育本部を統括する冨沢高明氏は「ITの発展とくらべて、情報工学系を目指す学生が減っている」と話す。

いま学生の間でIT業界に対するイメージは低下している。IT企業の労働環境を指す「新3K職場」という言葉もあれば、受注型ビジネスが8割以上を占める日本のIT企業に魅力を感じられないということも原因かもしれない。「平成19年度 総務省情報通信白書」によると、日本の情報通信関連学科の学部卒業者数は、ここ10年ほぼ横ばいで推移している。一方、米中印の3カ国は右肩上がりという状況だ。「ビジネスがオンライン化され、ITに対する期待と責任が大きくなり、求められるスキルも高度になってきた。これを解決するには優秀な人材の確保が欠かせない」(同氏)という中、学生のIT離れは深刻な問題といえるだろう。

学生に"チャレンジの場"を

同社はコーポレートミッションとしてIT人材の育成支援に乗り出した。専門的な知識、技術、ゼロから物事を作り出す創造力、国際的なリーダーシップを持った人材をいかに育成するか。その取り組みの一環として、最先端のITを全国の高等専門学校で紹介して回る「全国高専キャラバン」、学生コンテスト支援、学校への教材導入などを実施。さらに学生が最新のIT事例に触れる場、チャレンジする場としてThe Student Dayを開催しているわけだ。

マイクロソフトの関係者は、このチャンスを利用してぜひ世界へ挑戦してほしいと声をそろえる。Imagine Cupでの体験は、起業や就職にきっといきるはずだ。人気のタブブラウザ「Lunascape」を開発する、Lunascape代表取締役の近藤秀和氏も大会経験者。今年4月に米シリコンバレーに支社を設立するなど、世界を見据えて活動する近藤氏は、Imagine Cupでの経験についてこう話す。「目的を持って、期日を決め、競争をしながらプログラミングする。この分野で人生を過ごしていくうえで、絶対に必要なスキルをまさに短期間で実体験できた。一生に一度経験できるかどうかわからないほど熱い世界中のさまざまな人たちとの交流や、熱い戦いも経験した。今の人生において、非常に貴重な経験が得られたと心から感じている」。