昨年のIDF Beijingでは、"ポケットにインターネットを"というビジョンを示した。今回はその実現の方法を話したい--Senior Vice President, General Manager, Ultra Mobility GroupのAnand Chandrasekher氏の基調講演のテーマは「The Heart of A New Generation」。Atomプロセッサの細かな紹介と、MID(Mobile Internet Device)の必要性を訴える内容が語られた。

Atomのシリコンウェハを手にするAnand Chandrasekher氏

IAベースのモバイル端末は大きなチャンスとなる

インターネットが世界中で継続して成長を続けていることは疑う余地のないことだが、近年、注目すべきひとつの傾向が見て取れる。それはユーザーの指向が「ソーシャルネットワーキング」に向いてきていることだという。インターネットがより個人との結び付きを強めていく中で、しかしながら、それを利用するための個人向けモバイル端末は十分な性能を実現できていない……と、Chandrasekher氏は説明する。

例えば日本では、モバイルアクセスの90%が携帯電話から行われているが、しかし、その内80%を超えるユーザーは、端末のパフォーマンスや接続性に不満を持っているという調査結果が公開された。互換性も問題であり、仮にあるゲームタイトルを携帯電話に対応させようとすれば、それぞれ個別の対応が必要なため膨大な数のSKUを用意せざるをえなくなってしまう。米国での同様の調査でも日本と似たような結果が出ており、つまり、現状のモバイル端末はユーザーのニーズを十分に満たせていないというのが同氏の主張だ。

現状のモバイル端末ではニーズを満たせない

そういった課題に対し、Intelが投入するのが、IA(Intel Architecture)ベースのAtomプロセッサであり、同プロセッサを搭載するMIDであるとされる。競合製品と比較しての処理能力の高さも強調されるが、IAを採用することで、既存のPC資産との互換性を確保できる点も重要なポイントとされる。フルインターネットを利用できるし、先ほどのゲームタイトルの話題でいえば、IAベースであれば1SKUで済んでしまう。

IAであればパフォーマンスと互換性の面で優位とアピールする

Chandrasekher氏は「("Atom"という)製品ブランドを付けたということは、そこにチャンスがあるからだ。MIDのスタイルの普及は、サービスプロバイダにとっても大きなチャンスとなるだろう」と述べる。Atomプロセッサのメーカー出荷は既に開始されており、基調講演の中でもLenovoなどが新製品を披露している。同氏からは、Atomを搭載したMID製品が今後60日以内に市場投入されるという見通しが語られている。

Atom搭載MIDの市場投入は60日以内とされた

Atomプロセッサの性能を披露

Atomプロセッサでは低消費電力とその許容電力枠内での処理能力の向上、およびパッケージサイズの縮小に開発の重点が置かれているという。プロセッサの回路規模の削減のためとして、複数命令の実行の効率を上げる「アウト・オブ・オーダー実行」の実装を減らす一方、高速化のためにSMT技術である「ハイパースレッディング」を採用している。ハイパースレッディングについては、同社によるベンチマークテストで、同技術利用時で17~19%の消費電力増加に対し、36~39%の処理能力向上という結果が得られたとされる。また、消費電力の低減のためステート機能「Deep Power Down C6」を搭載する。これはコアクロック、PLL、L1およびL2キャッシュをOFFにするステートで、同ステート時の消費電力は100mWほどと非常に低く抑えられるという。

ハイパースレッディングにより効率の良い処理能力向上が可能という

ライブデモ形式でのベンチマークテストも披露された。CHINEBENCH 9.5でハイパースレッディングのON/OFFを比較している

そのCHINEBENCH 9.5のスコア。左がハイパースレッディングONで右がOFFのものだ

C6ステートについてもライブデモで効果が披露された。深いステートからの復帰も高速だ

ほか、このAtomプロセッサと組み合せてMenlowプラットフォーム(Centrino Atom)を構成するチップセットにあたるシステムコントローラーハブ「Poulsbo」の概要も紹介された。省電力の3Dグラフィックス機能を統合し、DirectX 9L & OpenGLをサポート。加えてHDビデオのハードウェアデコード機能を備え、1080i/720pのHDコンテンツの再生が可能とされる。I/Oには2×PCI Express x1、および3×SDIO、MMCなどで、接続可能なメモリはDDR2 400/533MHzというもの。ちなみにPoulsboはシングルチップ構成であり、パッケージサイズも22×22mmと非常に小型となっている。

「Poulsbo」の概要。小さいだけでなく消費電力の低さも特徴

そして基調講演の最後にはChandrasekher氏から、これまでにも何度か存在が予告されていた「Moorestown」プラットフォームの基板が公開された。Moorestownは、Menlowに続いて2009年の投入が計画されている次世代MID向けプラットフォームだ。詳細は次回のIDFまで"おあずけ"とされてしまったが、更なるシステムの小型化が進められる見込みで、公開されたクレジットカード大の基板上には、SoCの「Lincroft」、I/Oハブの「Langwell」、メモリやNANDストレージ、通信インタフェースまでが搭載されているという。

Chandrasekher氏が右手で掲げるのが「Moorestown」の基板

「Moorestown」のボード写真。これなら携帯電話サイズも実現可能か?