待合室のホームへのドアが開けば、ようやく列車に乗り込むことが出来る。ユーロスターには1等と2等の2クラスがあるが、今回は1等車を利用してみた。座席は通路をはさんでそれぞれ1列+2列の計3列で、集団見合い式に方向は固定されている。ただし車端部は一部ボックス型に向かい合わせになっており、4人のグループなどが利用しやすいように配慮されているようだ。

車両中央から車端側を取る。1等車内は集団見合い式の方向固定座席だが、車端は片側が1組、反対側が2組、それぞれボックス型になっている

時速300kmでも携帯電話の利用は問題なし

今回乗車した9031列車は定刻13時01分にパリ北駅を出発した。十数分もすればパリ郊外を出てのどかな田園地帯の中を快走する。スピードは最速で時速300kmだが揺れも少なく快適だ。さて、車内での携帯電話の利用は問題ないだろうか? 高速走行中も電波状況はおおむね良好で、アンテナ表示がたまにゼロになることもあったがすぐに復活するなど、長電話でもしない限り問題なく利用することはできそうだ。ちなみに車内では携帯電話で通話する人はおらず、また会話する声もトーンが低めなど全体的に静かにするというのがマナーのようだ。通話するためにデッキに移動する人もよく見られた。一方、SMSやWebサイト閲覧などを利用する人も多く、携帯電話の利用そのものは禁止されていない。要するに他人に迷惑をかけないように利用すべしということだ。

乗車して10分もすれば郊外からのどかな田園地帯の中を走る。携帯電話の電波表示は概ね良好で、アンテナマークゼロ状態が長く続くようなことはなかった

さて、1等車では乗車後すぐに飲物のサービスがあり、乗車して30分ほどで昼食が配られる。メニューが2種類あるのは飛行機を意識しているのだろう。途中Lille駅に停車した後、14時31分にCalais駅へ到着。ここがフランス国内最後の駅で、この後いよいよ英仏海峡トンネルに入る。

1等車は乗車してすぐ飲物のサービスがある

同様に1等車のみの食事サービス。ワインまであるのはさすがヨーロッパ

海底トンネル内で携帯電話は使えるのか?

13時33分にLille駅を出たユーロスター9031列車はすぐに加速を始め、14時36分ごろ英仏海峡トンネルに突入した。ここからイギリス上陸まではわずか21分である。駅出発後から携帯電話の画面を見続けていたところ、トンネルに入った瞬間にすぐさまアンテナ表示がゼロになってしまった。パリ市内では地下鉄内でも携帯が使えることが多く、英仏トンネルでもトンネルに入ってから少しずつ電波強度が低くなるのだろうと思っていたのだが、いきなり切れるとは、トンネル内には携帯電話のアンテナが一切設置されていないということなのだろう。国境を越える「国際トンネル」なので、もしかしたらトンネル内にも両国の通信事業者が携帯アンテナを設置しているかもと期待していたが、残念ながらそうではなかったようである。

トンネルに入るや否や電波はゼロに。英仏海峡トンネル内では携帯電話は使えなかった

イギリス新線区間はトンネルが多く携帯の利用は困難

失意のまま21分が過ぎ、地上に出ると携帯電話のアンテナ表示は何事も無かったかのように復活した。トンネルさえ出てしまえば時速300kmの高速列車内でも携帯電話は問題なく利用できるのだ。しかしここからはトンネル区間が多くなる。イギリスに入るとユーロスターは従来路線と別に設けられた専用の新線区間に入るのだが、その全長約100kmのうち4分の1ほどがトンネルなのだ。しかも長大なトンネルが数本あり、そのトンネル内では携帯電話が使えない。

列車はロンドンの終着駅、「セント・パンクラス駅」へ14時34分(パリ時間では15時34分)に到着する。到着数分前には列車はトンネルを抜け地上区間を走るが、ここからは再び携帯電話の利用は問題なくできる。国際列車であるユーロスターの走る区間なのだから、イギリスのトンネル内での携帯利用はサービス向上としてぜひとも検討してもらいたいものである。

トンネルを抜ければアンテナ表示は復活する。しかし新線区間はトンネルが多く、携帯の利用できない区間が多い

終着駅の到着数分前には列車は地上に姿を現す。ここから先は携帯電話は普通に利用できる

パリから2時間23分でロンドンに到着。新線のセント・パンクラス駅は開業したばかり

ユーロスターは列車本数も多く、また新線区間を多く走ることから乗り心地は快適だ。対抗して飛行機も料金を引き下げるなどしているが、駅から乗れる手軽さにはかなわないだろう。ロンドンとヨーロッパ各地を移動する際に、利用してみてはいかがだろうか?