その3 - 今後のバージョンアップ予定

――今年のWindows Mobileが目指す方向についてお聞かせください。

梅田 2007年を振り返ると、女性層などへも一定の広がりを果たせたのは良かったと思いますが、もう少し俯瞰的に見たときに、やっぱり「iPhone」の登場は大きかったなと。iPhoneやiPod Touchの延長線上にあるようなデバイスがほしいという需要は、かなり顕在化してきたと思います。そういう新しい需要をもっと掘り起こしていこうとすると、ユーザーインタフェースだとか、ブラウザの性能だとか、ハードウェアの見栄えの良さだとか、そういうものがもっと必要になってくるだろうと考えています。

――今年はiPhoneの日本市場投入もささやかれていますが、対するWindows Mobileの優位性はどこにあると言えるでしょうか。

梅田 iPhoneの場合、ハードウェア・OS・アプリケーションが一体となったソリューションですが、我々はプラットフォームベンダーですので、同じ基盤を共有しながら、ビジネスライクなものがあったり、ケータイライクなものがあったり、タッチスクリーンのものが出せたりといったところが強みだと思っています。今までやってきたビジネス向けの方向性も当然やっていきますし、それに加えて、モバイルインターネットの新しい使い方を、コンシューマーのより広いゾーンに展開していこうというのが、次の大きなバージョンアップの基本的な考え方になります。

――その新しい展開というのは、いつごろの時期になると考えられるのでしょうか。

梅田 この先1年半~2年くらいのレンジで見ていただけるとわかりやすいと思います。昨年末、モバイルブロードバンドのための周波数割り当てがありましたが、そういった新しいネットワークの技術が最初に立ち上がってくるのが2009年の夏くらいだと考えられます。各メーカーさんもいまそこへ向かって開発を進められていると思います。

――既に、20Mbpsクラスのモバイルブロードバンドを想定された開発がスタートしているということですか。

梅田 開発チームとしては、非常に高速な次世代のネットワークを使う端末を想定したOSのための「仕込み」をするのが半分、いままでやってきた延長線上の中で、計画通り遅れなく出していくのが半分ということになります。

――2007年、NokiaのS60プラットフォーム向けに、iモードに対応するためのソフトがリリースされましたが、Windows Mobileで同じような可能性はあるのでしょうか。

梅田 技術的にはもちろん可能だと思います。ただ、どれだけやりやすいか、という問題はあります。iモードのようなサービスに対応するために、最低限必要なセキュリティが2種類あって、ひとつは着信メロディとか動画とか、ダウンロードしたコンテンツのライツマネージメントをどうするかというセキュリティです。もうひとつは課金のセキュリティで、おサイフケータイやパケット定額制といった仕掛けをクラッキングされないようにする必要があります。これを、いまのWindows Mobile 5/6で実現するのがいいのか、それとも次世代のWindows Mobileでやるほうがいいのか。というのは、次のメジャーバージョンアップではWindows CE 6.0がベースになると思われますが、組み込みOSとしては従来とかなり大きな違いがあります。CE 5.0ではひとつのメモリ空間をいろいろなアプリケーションで共有しているのに対し、CE 6.0はそれぞれが隔てられているので悪意のあるソフトが悪さをしにくい。では、いまのWindows Mobile 5/6で実現できないかというと、そういうわけでもないんです。ソフト的にいろいろな工夫をするとか、iモード的な世界の部分は別のチップで処理するとか、いろいろやり方は考えられます。ただ、どっちが開発期間やコストの面で有利かと考えると、次世代のWindows Mobileのほうがやりやすいのではないかということです。

――今年はいよいよNTTドコモから個人ユーザー向けにWindows Mobile搭載機が発売されます。

梅田 これによって例えばPCにほとんど興味のないような層にまで急にスマートフォンが売れるようになるとは考えていませんが、より多くのユーザーが入ってきやくなるという意味では大きいと考えています。「F1100」は日本の携帯電話の使い勝手により近いさまざまな工夫が見られますし、「HT1100」はWindows Mobileのプラットフォームを利用しながら「TouchFLO」などのユニークな技術が盛り込まれています。今年はこのように、一般の携帯電話との差を埋めながらも、これまでにない独自の機能を盛り込んだ製品が期待できるのではないでしょうか。