昨年国内でも9機種が発表され、携帯電話のソフトウェアプラットフォームとしての展開が本格化したWindows Mobile。今年はスライド型のボディを採用した新製品がNTTドコモから発売されるのを皮切りに、昨年と同じかそれ以上の機種数が用意されるという。マイクロソフト モバイル&エンベデッドデバイス本部長の梅田成二氏らに、昨年の動向を振り返りながら、今後のWindows Mobileがどのような進化を遂げるのかを聞いた。(以下敬称略)

今回の話を伺った、(左から)マイクロソフト モバイル&エンベデッドデバイス本部 シニアプロダクトマネージャの岡田陽一郎氏、同本部長の梅田成二氏、ソリューション統括本部 ソリューションスペシャリストの中島憲彦氏。梅田氏が手にするのはNTTドコモ「F1100」の実機(今年第1四半期発売予定)

その1 - 2007年の個人向け市場を振り返る

――2007年のWindows Mobile搭載スマートフォン市場の概況を教えてください。

梅田 2006年末に、Windows Mobileを今後3年間・毎年3倍伸ばしていきたいと申していましたが、まず機種数でいうと、2005年は「W-ZERO3」の1機種、2006年は4機種(うち1機種は初代W-ZERO3のマイナーチェンジ)だったところ、2007年は9機種を発表することができ、デバイスのセレクションは毎年3倍で増やせました。ただ、2007年はラインナップを増やしたものの、開発が追いつかないこともありました。スマートフォンは各携帯電話事業者の商品なので、正確な数をマイクロソフトから申し上げることはできないのですが、出荷数でいうと、2007年は2006年の倍程度だったとみています。ですので、今年はできるだけ当初の計画通りに開発が進むように体制を整えていきたいと考えています。2008年にリリースする機種数ですが、2007年と同じくらいか、もう少し多い数になるのではないかと見ています。

――ユーザー層に一定の広がりが見られるようになってきたということですが、新たなユーザーを取り込めた理由は何でしょうか。

梅田 やはり端末のバリエーションが広がったのが大きいですね。W-ZERO3がいきなりヒットしたこともあり、最初はスライドキーボード型が中心でしたが、片手でフルキーボードを操作できるスタイルや、より携帯電話に近いスタイルの製品が発売されました。また、海外で生まれたWindows Mobileと日本の一般的な携帯電話はかなり使い勝手が違いますが、各社がその違いを埋める努力をしてきたということも広がりの理由として考えられます。例えば、ウィルコムのW-ZERO3をシリーズ通して見てみると、待ち受け画面で左右キーを押すと着信/発信履歴が表示されたりとか、名刺リーダーのような日本のユーザーに喜ばれるソフトを搭載したりといった工夫があります。毎回新機種の度に、そういう地道な努力をされてきたということです。

――携帯電話に近づく一方で、「Windowsケータイ」という位置付けが浸透するには、PCのようにサードパーティ製のソフトが数多く流通する必要があるかと思いますが、そういった可能性は。

梅田 これはニワトリとタマゴの話で、年間5,000万台が出荷される携帯電話の中で、これまでWindows Mobileの割合は相対的に見てそれほど大きくなく、そこに市場性を見出していただけるパートナー企業が少なかったのは確かです。しかし市場としてもそれなりの規模になってきましたので、ソフト市場も徐々に立ち上がってくるのではないかと思います。またマイクロソフトでは、Windows Mobileのユーザー登録をすると、着信メロディや壁紙などのコンテンツを無料でダウンロードできるようなサービスを開始したいと考えており、準備を行っています。米国では既に開始しているサービスですが、コンテンツを日本向けに変更して提供する予定です。

――開発の体制づくりというお話がありましたが、端末の開発にはその都度マイクロソフトも参加してきたのでしょうか。

梅田 Windows Mobileの場合、Windows Vistaのようにマイクロソフトが開発して全部できあがったらドンと市場に出すPC向けOSと異なり、「Adaptation Kit Update(AKU)」という細かい機能追加やメンテナンスを継続的に行っている部隊と、次期メジャーバージョンアップに向けて開発を行っている部隊があります。新機能を端末メーカーで独自に作るか、あるいはOSの機能としてマイクロソフトで作ってAKUに取り込むかはいろいろな場合があってケースバイケースですが、いずれにしても新機種の出荷間際になると、メーカー、通信事業者、弊社の3社で問題点リストを共有して、ひとつひとつ解決していくといった作業は行っています。

――2005年の初代W-ZERO3発売から、開発体制に何か変化はありましたか。

梅田 先ほど、今年は遅れを出さないようにしたいということを申し上げましたが、これは単に努力しますということだけではなく裏付けもあります。AKUを開発しているチームは米国のレドモンドにありますが、2007年からここに日本人のスタッフが2名入りました。また、現地で日本の事業者向けの開発を指揮している責任者は、外国人ですが日本語ができる者が務めています。レドモンドでも、日本市場向けの開発プライオリティがかなり上がってきたと言えます。

――開発の実作業は、あくまでレドモンドに集約されているということですね。

梅田 世界各地でプログラムを手直しできたほうが効率はいいのですが、ソースコードのツリーが分かれて管理ができなくなりますので、コードを直すところはレドモンドでやっています。ただ、製品を出す前のバグフィックスの段階にはやりとりが大量に発生しますので、ソースコードを追いかけて「おそらくここがおかしいのでは」と診断するといった、端末メーカー向けのサポートチームを都内の調布技術センターに設置しました。これも2007年からの取り組みです。