"快適性"への妥協無し

その後もCPUのTDPは上昇を続け、新たにGPUも熱源として無視できない存在になってきた。「高性能なファンに、高性能なヒートシンクをそのままつけても、必ずしも効率的とは限らない」(中村氏)。1998年のThinkPad 600の頃から使われはじめたのがシステムインテグレーション、つまり"組み合わせ"の技術だ。ThinkPad 600ではファンとヒートパイプが一体となった「Fan & Heat Pipe Hybrid」、ThinkPad T40ではGPUもあわせて冷却可能な「Multi Plate Coolong Device」が開発された。

現行のThinkPadで用いられているのがこのインテグレーション技術

ThinkPadの最新機種ではさらに、住宅建築などでも使われる「通風断熱構造」という技術を利用し、風量を増加させることなく筐体の表面温度を低下させることを実現している。例えばノートパソコンをひざの上に置いて使っている時、底面が熱くては快適性が損なわれてしまう。

通風断熱構造では、高温になるヒートシンク付近の本体下部に通風孔を用意することで、外気により内部の熱を断熱している。風量を増やすには冷却ファンのサイズアップが必要で、ノイズ増加にも繋がる。中村氏は「風量を増やそうとして、本体が厚くなってもいい、もしくはノイズがうるさくなってもいい、というのでは新技術はでてこない」という。現行機種ではThinkPad T61が既にこの構造を実現している。

薄く、静かに、そして快適にという要求をすべて満たすために開発されたThinkPadの通風断熱構造

ほかにもTinkPadでは、例えば同じT60という製品であったとしても、搭載コンポーネントの微妙な違いからモデル毎にファン形状を変えていたり、また、CPUやGPUに塗るグリスの素材も特別なものを使っていたりと、細かな配慮が詰め込まれている。

同じT60でもコンポーネントによって細かな違いがあるというのは本文の通りだが、写真は左がT61で右がT60の内部。T60とT61だと、外見からはほとんど違いがわからず、スペック表だけみるとCPUなどが変わっただけで同じ筐体……、などと思いがちだが、実際に比べると別物と言っていいほどの違いが見られる。常に最適なシステムを追求する姿勢の表れということだろう

インテグレーションを適切に設計するというのは非常に難しいことであり、単にファンを載せただけ、孔を設けただけではシステムに最適な冷却機構は作れないのだそうだ。中村氏は、「インテグレーションの最適化こそがレノボの強み」と説明する。

今後の熱設計について

今後のThinkPadの熱設計については、中村氏は次のように語る。まずCPUやGPUといった発熱素子の消費電力については、CPUはゆるやかに上昇を続けるが、ユーザーの利用スタイルの変化から、今後はGPUや通信モジュールの発熱がより問題となってくるだろうとする。

しかしThinkPadの設計哲学は変わらず、特にThinkPad Tシリーズで特徴的な高性能、快適性、小型・軽量といった部分は妥協しない。冷却システムの効率化といった熱設計ソリューションの開発の手は一切休めない方針だという。また、モノが出てきてから対応というのではなく事前の開発、そのためにも冷却デバイスの基礎技術、シミュレーションの強化による早期の対応を可能にしたいと語る。

中村氏が「ユーザーの快適性を追及した製品づくりを心がけたい」と述べるように、レノボではThinkPadを"使う人が快適になる道具"としてアピールしている。中村氏は最後に、自動車の運転席の写真を提示。ハンドルや計器類のほか、エアコンやオーディオ、ナビゲーションなどが運転者の快適性のために効果的に配置された様子を紹介しながら、それをThinkPadのひとつの目標であると紹介した。