カシオ計算機の「Privia(プリヴィア)」は持ち運びもできるコンパクトサイズでありながら、グランドピアノに迫るクオリティーを実現した電子ピアノだ。2003年11月から2007年11月までの販売台数シェアNo.1を達成し、2007年9月には新モデルである「PX-720」が登場した。そこで今回は、「Privia」の開発チームの方々に開発の経緯とこだわりについて伺った。
理念は「楽しめる楽器」
――「Privia」シリーズ開発のコンセプトは?
段城 従来の楽器は"演奏技術で楽しむ"ものでした。逆に言えば、弾ける人でないと楽しめないということです。それに対してカシオの楽器は、"音楽に参加して楽しむ楽器、手軽に楽しめる"をコンセプトに作られています。なかでも「Privia」は、「重い」「大きい」「高い」という従来のアコースティックピアノのイメージに着目し「軽量コンパクト」且つ「低価格」でありながら「基本性能を維持」した電子ピアノを目指しました。また、「Privia」という名前は「Private Piano」からの造語です。サイズもコンパクトで置き場所が限定されず、持ち運びもできるということで、自分の部屋に一台置いていただける、名前のとおりの商品ではないかと思います。
――グランドピアノのクオリティーに近づける際、苦労された点は?
段城 「Privia」開発の際、小型化するに当たってのネックは鍵盤でした。電子ピアノに求められる点として「音の良さ」「鍵盤タッチ」「デザイン」というものがあります。なかでも「鍵盤タッチ」に関しては、専用の鍵盤を開発することで、タッチ感は維持しつつ小型軽量化を実現することができました。電子キーボードではよくある一体型のバネを用いたものではなく、低音域では重く、高音域では軽い鍵盤タッチの「スケーリングハンマーアクション鍵盤」を採用しています。同鍵盤は、グランドピアノと同様にハンマーを用いる仕組みですが、先ほどお話した「軽量コンパクト」という「Privia」の理念にかなうようにハンマー自体を小型軽量化しながらも、グランドピアノの弾き心地を追求しました。電子ピアノは、元々アコースティックピアノを弾かれていた方や、これからピアノを弾いてみようという方をターゲットとしています。ですから、電子ピアノといえどもグランドピアノの「音」や「鍵盤タッチ」を目指して製品づくりを心がけています。