GeForce 8800 GTやATI Radeon HD 3800シリーズといった、"リーズナブルでパワフル"な新世代GPUは何のためにあるのか? それに対する解答は人によりけりだが、私はあえてこう言いたい。「最新ゲームをフルHD&最高画質で遊び倒すためにあるのだ」と!

最近のゲームはマルチプラットフォーム展開が一般化してきたためか、PCはもちろんXbox 360やプレイステーション 3でも遊べます、というものが多い。しかも家庭用ゲーム機のほうが機器側のスペックに最適化したグラフィックで押してくる。その美麗な画像に感動を覚える人も少なくないだろう。その一方、GPUメーカーが推すDirect X10環境だが、これまで高性能で手ごろな価格レンジのGPUがなく、キラータイトルもなかったため、今一つ盛り上がらなかった。

11月29日に発売される『Crysis 完全日本語版』のパッケージ。初回生産分には、限定特典として特殊車輌解除コードが付属する

だが、その状況を一変させそうなのが、前述の最新GPUと、エレクトロニック・アーツが放つDirect X10対応の最新ゲームタイトルで、本日29日に完全日本語版がリリースされる『Crysis』の存在だ。そこで今回、Crysisのゲームとしての魅力を語りつつ、Crysis迎撃のためのグラフィック環境というのをちょっと考えてみたい。なお、本レビューは製品版が発売される前に行っているため、検証作業にはデモ版(Crysis Single Player Demo)を使っている点を、あらかじめお断りしておく。

B級アクションムービーの雰囲気満点

このCrysisというゲームは、2004年に超美麗なグラフィックで話題を集めた『FarCry』の開発チームである「Crytek」が製作している。両タイトルとも南の海に浮かぶ小島が舞台だが、直接の関連はない。

Crysisのストーリーは、フィリピン海に浮かぶ島で発見された不思議な物体を巡り、北朝鮮とアメリカのデルタフォース(主人公チーム)が島の上で衝突するところからはじまるが、程なくして主人公達は奇怪な現象に遭遇する。一面が氷ついた陸地のど真ん中に打ちあげられた北朝鮮のパトロール艇、そして、そこに突如乱入してきた謎のエイリアン。これだけで、B級アクションムービー好きならご飯3杯はいけるシチュエーションである。

冒頭のシーン。問題の島に送り込まれたアメリカの調査チームは突如として連絡を絶つ。その島に夜間、高高度から落下傘による進入を企てる主人公チーム

これが2020年のデルタフォース。どいつもこいつも筋肉ダルマというのが何とも洋ゲーらしい。肉じゅばんに見えるのがゲームの要となる「Nano Suit」だ

ゲームのシステム面での特徴は、主人公チームが装着している「Nano Suit」の存在だ。見た目は単なる筋肉スーツなのだが、自分の身体能力を大幅に強化することができる。強化項目は次の4つだ。

Speed

Armor

Strength

Cloak

徒歩の移動速度が大幅にアップ。ジャンプの飛距離もアップするので谷のショートカットにも使える

受けるダメージが大幅に減る。戦闘時には必ず選択しておきたい

腕力が上がり、アイテムを掴んで投げる、ドア等を破壊する能力が上がる。ジャンプの高度も上がる

いわゆる光学迷彩によるステルスモード。透明化することで敵から発見されにくくなる。ただし発砲すればバレる

マウスホイールを押すと出てくるスーツの強化メニュー。Speedだけはエネルギー消費がないため、移動時は常時オンにしておきたい

スーツのエネルギーゲージは右下のヘルスゲージの上にある。これが切れるとスーツの強化能力は使えなくなる

銃のアイコンを選択すると、銃のカスタマイズができる。サイレンサーを付けて位置をバレにくくしたり、麻酔弾のような特殊弾を撃てるようにしたりと、上手に使いこなせばゲームの進行がかなり楽になる

この4つの能力は、マウスボタン3(ホイールボタン)を押下げることで、1度に1つだけ選択できる。"Speed"以外の能力は、スーツ内のエネルギーゲージを消費することで発動するため、どの局面でどの能力を選択するかによってゲーム展開が大きく変わってくる。敵の前哨基地を"Cloak"でスルーしたり、"Strength"のジャンプ強化を利用して、難所を迂回したりすることもできる。

とはいえ、このスーツのエネルギーはゼロになっても10秒も経てばフルチャージになるため、ケチらず使うのがコツ。ただし、"Armor"のようにダメージを食らった瞬間にごっそり減るものもあるので、ある程度考えて立ち回らないとハチの巣にされるのがオチだ。

すでに島は北朝鮮の兵士の支配下におかれている。検問を強行突破せずに、姿を消したりハイジャンプを使って迂回したりするのもアリだ

ゲームの展開は、このNano Suitの能力を上手く使うよう調整されている。マップもやたら広く、目的地AからBへ、複数の移動ルートが用意されていることも多い。スーツの能力を使って迂回するもよし、車やボートを奪ってショートカットするもよし、自分のプレイスタイルにあわせた攻略法が楽しめる。

もう1つ面白いのは、物理演算の積極的な導入だ。死体が自然に段差を転げ落ちるとか、爆発の破片がリアルに飛び散るなんてのは当たり前の処理だが、Crysisでは立ち並ぶ木々にも物理演算を適用しているのが面白い。立ち木に向けてライフルを一斉射すれば幹が砕けてバタンと倒れる。倒れた幹を障害物にして敵の進軍を妨害することもできるし、逆に敵に木をなぎ倒されて自分の隠れ場所がモロバレになることだってある。地形が壊れるという意味ではまだ中途半端だが、技術の進歩を感じさせるフィーチャーだ。

放置されているドラム缶は敵を倒すのにも使える。ドラム缶の前に立ち[F]キーを押して掴みあげ……

再び[F]キーでポイッと投げる。スーツのStrengthを使えば飛距離アップだ

敵の潜む兵舎に直撃! 上手く下敷きにすれば発砲せずに敵を制圧できる

同じCrytekからリリースされているFarCryの単なるパワーアップ版という感じを強く受けるかもしれないが、Nano Suitパワーの選択による"攻略の幅広さ"が追加されているほか、マップの広さを活かした攻略の自由度も上がっている。さらに、敵AIもより"人間らしく"なっており、FarCryのように目が合った瞬間にゴルゴばりのスーパースナイピングを決められてしまうような理不尽さは消えている。グラフィックとシステムの両面で完成度を高めた秀作となる可能性を秘めている。一日も早く日本語版を手にし、Crysisワールドの全てを堪能したいものだ!

車やボートなどの乗り物類も用意されている。上手く乗員だけ倒せば奪い取れるが、うっかりタイヤを撃ってしまうと……

デモ版は、陸地のど真ん中に打ちあげられた謎のパトロール船で終わる。南国なのに周囲が凍りついたその理由は……? ちなみに、ゲーム中のカットシーンは、ムービーではなくリアルタイムレンダリングだ