さて、マーケティング的な説明が終わったところで、もう少しTechnicalな話に切り替えたい。USB 3.0では、

  • USB 2.0までとの互換性を維持
  • USB 2.0に比べて10倍「以上」の高速化
  • 今後5年以上の間の進歩に耐える

の3つを主なテーマとしている。ここで難しいのは最初の2つをどう共存するか、だ。USB 3.0ではこれを、

  1. USB 2.0とUSB 3.0で別々の信号線を使う様にした。これにより、USB 2.0を越える信号を取り扱えるようになった。
  2. USB 3.0の信号にはPCI Express Gen2のx1 Laneの物理層(Electrical層とLink層)をそのまま流用した。ただし流用したのはここまでで、Transaction層は全く独自となる。
  3. ソフトウェア面では、USB 2.0までのソフトウェアスタックをそのままUSB 3.0でも「なるべく」採用する。これにより、USB 2.0→USB 3.0への移行に要する手間をなるべく抑える。

といった方策でまかなうことにした。ここで、冒頭のOpticalとCopperの話に戻る。PCI Express Gen2であれば、無理にOpticalにする必要はない。実際、PCI Express CableはGen2相当の5GHzの信号をCopper Cableで引っ張る事が可能になっており、それほど難易度は高くない。とはいえ、コストを抑えるためにPCI Express Cableよりも細い電線を使う関係で、配線長などは抑える必要があるだろうが。

では、何故Opticalを取り込んだか、についてRavencraft氏は「それは将来へのHeadroomだ」とする。つまり当初は5GHzで足りるかもしれないが、より帯域を増やそうとした場合に、例えば信号線をx2にする余地は無い。だからといってGen3の8GHzの信号を使うのもまだ技術的な困難さが明確ではない。PCI-SIGにしても、まだGen3世代のCableについては何も確たる事が言えない状態であり、現時点で候補とするには危険である。その点Opticalであれば、2010年以降というタイムラインではそれほど無理が無い。

今回もIDFのDay 0で40GbpsのSilicon Photo Detectorが(実験室レベルではあるが)アナウンスされるなど、低コストでのOpticalに一応の道筋が出来ている。現時点でもOptical CableはFiberChannelとかバックボーンむけSONETなどで普通に使われているから、あとはいかにコストを下げるかだけの問題である(おそらく最大の難関は、receptacleの精度であろう)。

こうした事を察してか、氏は"恐らくUSB 3.0では3種類のデバイスが存在することになる。つまりCopperのみ、Opticalのみ、両方搭載するものだ"と述べた。氏のシナリオに従えば、当初はCopperのみのデバイスが多く登場し、後にCopperとOpticalの両対応製品が登場。次第にOpticalのマーケットが広がって、最終的にはOpticalのみの製品が出てくるという形だろう。この時には、おそらく速度も5Gbpsの上(それが10Gbpsなのか8Gbpsなのか、それともまた違うものなのかはまだ不明だ)になって行くのではないか、としている。

ちなみに話をCopperに戻すが、Link層もPCI Expressから流用することにより、8b/10b符号はUSB 3.0でも利用されることになった。ということは、実効転送速度は5Gbpsではなく4Gbpsという計算になる。このあたりを厳密に言えば、USB 2.0の10倍では無い事になるが、もともと10倍という数字はMarketting Issueだから、それほど気にする必要はないのかもしれない。なお、このあたりがOpticalでどうなるかは現在不明だ。