Wireless USB 1.1

USB 3.0に比べるとやや陰が薄いが、こちらもちょっと意欲的な規格である。まずMarket Position的に言えば、現状はほんの数社が製品を出しているにとどまっている。USBではBeklinとかD-Link・IOGearなど、日本だとPlanexなどが代表的なベンダーだが、共通するのは何れもWirelessにそれなりの経験を持つベンダーのみだし、製品の数もそう多く無い。やはりWirelessに特有な処理(アンテナの取り扱いやノイズ対策)にそれなりにノウハウが必要で、これまでUSB 1.1/2.0対応をリリースしてきたベンダーがすぐに乗り換えられるほど簡単ではない、というあたりの事情は伺われるが、それにしても立ち上がりが遅いのは気になるところだ。

もっとも、USB-IF(USB Implementers Forum, Inc.)は、今後は急速に伸びて行き、2011年には5億個に達する(Photo21)というIn-Statのデータを元に、今後のマーケットが確実にあることを力説したほか、既にLenovoとDellがWireless USB搭載製品をリリースした(Photo22)事などをアピールした。またTechnical Showcaseではすくなくとも3社が、PHY/MAC一体型のWireless USBコントローラをアナウンスしたが、逆にRealTek/AlereonといったPHYのみをリリースするベンダーやNEC Electronics Americaの様にMACのみをリリースするベンダーは、マーケットが立ち上がる前に低コストの競争相手が大量に出てきてしまったとも言えるわけで、マーケットが広がって嬉しいような、早くも価格競争になりそうで悲しいような、複雑なポジションに置かれたと考えて良いだろう。ただ、例えばNEC Electronics AmericaはPCI I/Fを持ったMACを今回展示する(Photo23)など差別化の余地はまだ残されており、このあたりが多少今後の展開に影響を与えそうだ。

Photo21:以前も2008年に5000万個のマーケットシェアがあるとしていたが、そこから急速ににマーケットの伸びが期待できるとしている。これを牽引するのはMobile Phonesということだが、さてここまで本当に伸びるかどうか?

Photo22:これはLenovoのThinkPad T61pの設定画面。一番下にWireless USBの項目がある事が判る。Wireless PANの括りになっているのが面白い。ちなみにDellはInspiron 1720にWireless USBを搭載した。

Photo23:既存の製品は何れもUSBでの接続なので、EndpointにはともかくUSB Hubの性能がさっぱり出ず、結果実効スループットが上がらないという問題を抱えていた。これをPCI接続とすることで、より実効スループットを高められるというのがこちらのウリ。