基本的な発想は、USB 2.0の480Mbpsをフルに使っても、既に一部の用途では遅いので、これを高速化したいということだそうだ。勿論、殆どの用途で現在のUSB 2.0は十分な速度が出るが、一般に新しい規格が制定されても、それが普通に使えるようになるまで数年掛かること、また製品そのものの開発が(TAT短縮などと言われつつも)数年単位のものがまだ珍しくない事を考えると、様々な用途で不足が感じられてから標準化を始めるのでは手遅れであり、その意味ではもう次の規格を考えるべき時期に来ているとは言える(PHoto09)。ただ、そのサンプルがこれかい(Photo10)という気はしなくもない。もっともこの数字、実際はもっと掛かる。手持ちのUSBメモリにGBオーダーのデータをコピーしてみれば判る事で、勿論その幾ばくかはFlash Memoryそのものが高速でない事にも起因するが、USBプロトコルそのものの内包するオーバーヘッドも馬鹿に出来ない。特にPollingに関しては、転送速度のみならずCPUパワーも必要とする場合が多く、これに対しての一定の解決案もUSB 3.0では提示されている。

Photo09:問題は、この"Emerging applications"って何だ? という話なのだが。

Photo10:当然「こんな帯域が出るStorageないじゃん」とは突っ込みを入れたところ、Ravencraft氏は"High Speed Flashならば可能性はある。重要なのは、USBがボトルネックにならないことだ"との返事。まぁ、正論ではある。

その話はちょっと後回しにして、SuperSpeed USBのマーケティングターゲットをPhoto11に示す。

Photo11:2012年とか13年になると、もう少し様々な用途が出てくる可能性はあるが、現状はStorage Classがメインターゲットである。しかし、3.5inchのHDDですら最高速で100MB/sec程度、高速NAND Flashで40~50MB/secといったところ。まぁNANDの場合はインターリーブすることで、500MB/sec位まではいきそうではある(特にSSDなど、この方式を取りやすいとは思う)が。

見ると判るとおり、2010年前後における主要なSuperSpeed USBのターゲットはストレージである。それも、メディアプレイヤーとかPDA、SSD/USB Flash Diskといった、USB Storage Classの接続がメインである。これに関して、

  1. その他のI/Oデバイスは想定していないのか?
  2. eSATAと競合しないか?

という疑問が出てくる。(1)に関しては、Ravencraft氏ははっきり「USB 3.0はConsumer MarketにFocusする」とした。要するに汎用I/Oといっても、PCIとかPCI Expressを置き換えるつもりはない、という事だ。もっとも、例えばサウンドは以前はPCIで接続されていたのが、今ではUSB接続が大半を占める。こうしたものは引き続きUSBで繋げられる事になるし、現在のUSB 2.0では性能とかレイテンシの観点で不適当として引き続きPCI(やPCI Express)を使う、業務用クオリティの製品もUSB 3.0世代ではUSB接続に切り替わる可能性は高そうだ。

問題は(2)である。コストの観点からeSATAはUSB 2.0と競合しないとRavencraft氏は説明するが、ことPCの世界ではeSATAがかなり広く普及の兆候をしめしているし、最近のハードディスクレコーダの一部はSATAでの接続になりつつあるから、eSATAへの対応のコストは(ソフトの対応はまた別に必要にしても)それほどかからない。「現状、例えばUSBとATAの間にはBridge Chipが介在する。USB 3.0世代ではこれが不要になる(つまりUSB 3.0のI/Fを持つATA Storage Deviceが出現する)可能性は?」と確認したが、やはりそういう予定は無いそうで、ケーブルをそのまま接続できるeSATAの方が潜在的に低コストになりうる可能性はまだ残っている。勿論eSATAの場合、ケーブルはまだ割高だし、USB Hubに相当するPort Replicatorはかなり高価だから、こうしたところまで見ればRavencraft氏の主張も判らなく無いが、このあたりはKnut Grimsrud氏の見解など聞いてみたいところである。

今後のロードマップであるが、今はPromoters Groupを結成して標準化活動に取り掛かったばかり(Photo12)という状況である。

Photo12:ちなみにPromoters GroupとはPhoto01にも出てきたHP、Intel、Microsoft、NEC、NXP、TIの6社となっている。