インテル、ビットワレット、マイクロソフトの3社が取り組む「スマートデジタルライフ推進プロジェクト」は3日、プロジェクトのこの1年間の成果を紹介する記者説明会を開催した。あわせてインテルから新たな施策として、シニア層に使いやすいPCおよびオンラインサービスに関する技術要件が発表された。
同プロジェクトは、ICカード技術「FeliCa」の利用を促進し、PCなどの情報端末上で決済や認証を行う際の安全性・利便性を向上させることで、ショッピングを初めとするさまざまなオンラインサービスを従来より幅広い層に使ってもらおうというもの。3社により2006年6月に活動を開始した。プロジェクト開始時から1年間で、電子マネー「Edy」に対応したオンラインサービスを2倍に、FeliCa対応端末の出荷数を3倍に、FeliCaオンライン決済を2倍に、それぞれ増加させることが具体的な目標として掲げられていた。
インテル代表取締役共同社長 吉田和正氏 |
説明会冒頭でインテル代表取締役共同社長の吉田和正氏は、対応端末の出荷こそ現時点で約2.5倍と目標を若干下回ったものの、対応サービス2倍は2006年12月という早期に、オンライン決済2倍は2007年5月に目標達成しており、また今年は首都圏私鉄の「PASMO」、セブン-イレブンの「nanaco」、イオングループの「WAON」など新しい電子マネーサービスが相次いで開始され、電子マネーの普及スピードは「私たちが考えていた以上」という認識を示した。対応端末についても、大手ノートPCメーカーの東芝が新機種でFeliCaポートを搭載するなど広がりを見せており、2007年度中には目標達成がほぼ確実だとした。
そのうえで、これまでPCに縁遠かったシニア層が安全かつ簡単にオンラインサービスを使うためには、FeliCaを使用した決済・認証の仕組みに加えて、使い慣れないキーボードやマウスといったユーザーインタフェースの壁を取り払うことが重要とし、同社で策定したシニア向けPCおよびオンラインサービスの技術要件を発表した。
同要件は、スマートデジタルライフ推進プロジェクトが、2006年12月から2007年3月まで埼玉・川口市の中高年世帯を対象に行った実証実験の結果などを元に策定されたもので、主な内容は以下の通り。
PC本体に関する要件
- CPU: Core 2 Duo
- OS: Windows Vista Home PremiumまたはUltimate
- Webブラウザ: Internet Explorer 7または同等の機能を持つブラウザ
- ディスプレイ: 9インチ以上、タッチパネル対応
- 初期状態復帰ボタン搭載
- バッテリー駆動対応
- 記憶装置: SSD(フラッシュメモリなど)
- メモリ: 1GB以上
- 重量: 1.5kg以下
- FeliCaポート搭載
- 有線/無線LAN搭載
- ドッキングステーション
- USB 2.0、ウェブカメラ、マイクロフォン内蔵
サービスポータル/コンテンツ/サービスに関する要件
- クリックボタン
- 大きさ: たて 30 ピクセル、横 100 ピクセル以上
- 形: 長方形、輪郭がわかりやすい形
- 色: ユニバーサル・デザインを考慮したデザイン、配色
- 配置: 各ボタンの周囲に短手方向の長さの 1/4 以上の余白
- 文章: 大きな文字で読み易く、理解し易い
- スクロール: 水平方向のスクロールはなし
- ユーザー情報の登録・管理: 個人情報の入力は一度のみ、その後は簡単な操作のみで
- 安全にサービスが受けられる
- 先頭および前ページに戻るボタンを付加
これらの要件を考慮した製品として、PBJからタッチパネル搭載のタブレット型PCが9月下旬に発売される予定であるほか、オンラインサービスでは、シニア向けSNSやイベント運営を行うコミュニティサイト「小僧.com」、健康を意識した食品の通信販売サイト「Oisix(おいしっくす)」、国内テニスの情報や試合動画の配信を行う「JTA テニス!オンライン」が今後順次サービスを開始する。
今回の技術要件は、こうであることが望ましいという推奨要素であり、今回発表された製品・サービスも一部要件で満たしていない部分はあるが、タッチパネルに対応したユーザーインタフェースや、FeliCaポートを利用した認証・決済、大型で輪郭がわかりやすい長方形のリンクボタンなど、特に重要な点は確保されている。吉田社長は、シニア層の使いやすさを目指した製品やサービスはこれまでも存在したが、操作性を前面に出しながら、オンラインで何かを購入したり契約したりといった、サービスを積極的に使うことを強く意識した作り込みが行われているのが特徴と説明する。
ビットワレット代表取締役社長 眞鍋マリオ氏 |
ビットワレット代表取締役社長の眞鍋マリオ氏は、Edyカードの発行枚数が6月時点で3,100万枚(うち携帯電話が約600万台)に達し、月間利用件数も同1,700万件と、普及・利用で順調な推移を見せていることをアピール。オンライン決済は1年で2倍という目標を達成したが、さらに拡大が必要なほか、リアルとサイバーを組み合わせた取り組みを今後強化したいとし、6月から「Edyスマイルクーポン」「Edyハッピー優待」を実施している。
Edyスマイルクーポンは、Web上でEdy番号を入力するとクーポンが手に入り、そのEdyを実際の店舗に持参して決済すると、後日Edyギフトとして支払額の一部が還元されるというもの。Edyハッピー優待は、Edy決済の利用で一部が還元されるという点では共通だが、事前に店舗ごとのクーポンを取得しなくても、Edy番号・住所・氏名などの登録をしておけば、対象店舗でのEdy決済が自動的に優待対象となるもの。現金にはできない、電子マネーならではの利用促進施策であるとしている。
マイクロソフト執行役専務 眞柄泰利氏 |
マイクロソフト執行役専務でデジタルライフスタイル推進担当の眞柄泰利氏は、同社製品のディスカウントプログラム「シニア割」や、ユーザー向けのIT活用能力検定試験「マイクロソフト ICT検定」などシニア向けの施策や、Windows VistaにおけるFeliCaポートのサポートにも積極的に取り組んだことを紹介。同社やインテル、ビットワレットといった有力ベンダーが一枚岩となって市場を広げようとする取り組みはまだ始まったばかりとし、「FeliCaの可能性には大きく期待しており、今後の3社における取り組みに注目いただきたい」と話した。