2003年、まずSAPが率先して中国での中小企業市場戦略を打ち出した。しかし、SAPにとり、同市場への適応は容易なことではなかった。中国中小企業のニーズの最大の特徴は多様性であり、カスタマイズへの要求が強いことだ。中小企業のニーズに応えるためには、なによりもこうした企業が市場で置かれている状況や各社の応用ニーズを深く理解し把握することが必要だった。

もちろん製品技術、ルート、サービスシステムの設計といった面でも各社の個別ニーズに応える必要があった。こうした企業ユーザーのERP製品に対するニーズ特性が、ミドル・ローエンドERP市場の競争配置をハイエンド業界ERP市場のそれとは随分異なるものにしている。中小企業市場において、中国国内メーカーが一定の優勢を保てる理由が、まさにここにあった。

ところで、中国企業のERP応用歴は三段階に分けることができる。

1985年から1998年までがERP応用の第一段階で、製造企業における管理、供給、販売、保管のためのMRPソフトウェア及び財務管理モジュールがこの段階において広く応用された。1998年から2005年までがERP応用の第二段階で、サプライチェーン管理、顧客管理及び人的資源管理モジュールがこの時期において徐々に応用されるようになる。2006年以降、中国企業のERP応用は第三段階に入った。

2008年までに、中国のERP市場規模は7.20億米ドルまで成長すると予測されている。2003年の4.18億米ドルと比べると、複合年平均成長率は11.5%にも達し、成長スピードは世界中ほとんどの国を越えるものになると予想されている。ちなみに2003年から2008年までの間、シンガポール、日本、米国のERP市場成長率はそれぞれ7.3%、5.6%、3.7%であった。しかし、このような市場の目覚しい成長とは裏腹に、ERP支出のIT支出全体における割合は、まだまだ先進国平均よりは遥かに低いというのが現状だ。