天体撮影には機材が必要

S3 Proはもちろん、その前のS2 Proも天体撮影で多く使われてきた。高感度でのノイズが少ない特性が天体撮影に向いているためだ。では新しいS5 Proはどうなのだろう? 興味深いが、天体撮影は専用の機材が必要になるため、当方ではちょっと撮影できない。東京の空も星を眺めるには適さないだろう。そこでアマチュア天文写真家の中口勝功氏に協力をお願いした。

中口氏は山梨県・清里でペンション「スケッチブック」を営んでいるが、庭に直径4メートルの天体観測ドームを作ってしまうほどの天体好き。マニアの間では有名な方である。中口氏はS3 ProやEOS 20Daを始め、多くのカメラで撮影しているが、今回はS5 ProとS3 Proを使用した。被写体はM45:プレアデス星団と、M42:オリオン大星雲(散光星雲)だ。

機材はタカハシ製作所のイプシロン160とNJP赤道義。作例にデータを付記していないが、ISO400は360秒、ISO1600は90秒の露光時間。フィルムシミュレーションモードはスタンダード、他は標準状態のままとしている。

遥かな星までシャープに写る

結果は、画像を見ていただけば一目瞭然だろう。S3 Proよりもはるかに多くの暗い星を写し取っている。像も非常にシャープでクリアである。天体撮影の適正はずいぶん進化しているようだ。しかし中口氏は、それでも不満があるようだ。「空の星以外の部分が明るくなるのが気になります。空はもっと黒く締まってほしい。それと明るい星が(真円でなく)四角く写るのがちょっと……」とのこと。

カメラが一生懸命に光を集めているのだろうか、確かに本来真っ暗なはずの空が少し明るくなっている。しかしこれはレタッチでレベルを少し切り詰めればフォローできなくもない。四角く写る件は、筆者レベルではそれほど気にならなかった。毎日星を見ている中口氏との違いかもしれない。ちなみに掲載した生画像のExifデータを見るとPhotoshopで補正したような形跡があるが、これはソフトを使ってCFから画像を取り出したためで、レタッチは一切行なっていない。

撮像感度もISO400からISO1600までいくつか試していただいたが、やはり感度を上げるとなにやら模様のようなノイズが発生し、解像力も落ちてくる。コントラストも低くなるようだ。できるだけ感度を下げたほうがキレイな像が得られるが、その代わりに撮影時間が長くなる。これは天体撮影にとってつらい部分でもある。悩みどころだろう。

「今回はあまり時間が取れなかったので標準状態のままで撮影しましたが、設定を工夫すればもっと追い込めると思います。それと、ボディはS3 Proよりはるかに使いやすくなっていますね」とのこと。今後、天体撮影の現場でS5 Proは確実に増えていくだろう。

【M45】S5 Pro/ISO 400
オリジナル画像はこちら

【M45】S5 Pro/ISO 1600
オリジナル画像はこちら

【M45】S3 Pro/ISO 400
オリジナル画像はこちら

【M45】S3 Pro/ISO 1600
オリジナル画像はこちら

【M42】S5 Pro/ISO 400
オリジナル画像はこちら

【M42】S5 Pro/ISO 1600
オリジナル画像はこちら

【M42】S3 Pro/ISO 400
オリジナル画像はこちら

【M42】S3 Pro/ISO 1600
オリジナル画像はこちら