オートがいちばん気持ちよく思えるが……

スーパーCCDハニカムSRの子持ち画素による広いダイナミックレンジ。これを活かしたのがS5 Proの「D-RANGE」機能だ。標準では被写体に合わせてダイナミックレンジを100~400%の間で自動的に調整する「AUTO」になっているが、これを撮影者の好みに合わせ、100(STD)/130/170/230(W1)/300/400(W2)%に固定できる。

基本的には被写体のコントラストが高い場合はダイナミックレンジを広く、コントラストが低い場合は狭くすればいい。おもしろいのは、ダイナミックレンジは広ければいいというわけではないこと。やみくもにダイナミックレンジを広くすると抜けの悪い、ネムい写真になってしまう。ハイライト(線状の白飛び部分)もきれいに入らない。

ダイナミックレンジの狭い100%(STD)では、高輝度用のR画素は使わず、S画素のみで画像を生成する。明らかに白飛びは早めに発生するが、画像処理は短時間で終了する。少しでも速さを稼ぎたい場合は、これもありかもしれない。R画素を使用する他のモードでは、白飛びを起しても比較的自然な繋がりとなる。

そんなわけでD-RANGEを使いこなすには、どこまで抜けを良くするか? どこまで白飛びさせるか? という感性が必要になる。暗部側の明るさはほとんど変わらないので、露出補正とは別物だ。恥ずかしながら、筆者のレベルでは、自動で設定してくれる「AUTO」がもっともきれいに感じた。D-RANGEは「自然のまま写し取る」のではなく、「表現」のための機能だろう。

複数機能の同時使用はできない

絵づくりを設定する機能として、フィルムシミュレーション、D-RANGEのほかにも「COLOR」(色の濃さ)、「TONE」(コントラスト)、「SHARPNESS」(シャープネス)などがある。これらは他機でも用意されている機能なので特に紹介しないが、気になるのはフィルムシミュレーションが「スタンダード」の場合のみこれらが使用できること。たとえばダイナミックレンジを400%固定にして、フィルムシミュレーションを「F1」に、という設定はできないことになる。

逆に考えれば、フィルムシミュレーションはそれだけ写し取った画像の全情報を必要とし、追い込んでいるということだろう。ダイナミックレンジはもちろん、色の濃さなどもユーザーの好みを入れれば絵が崩れてしまうのかもしれない。ここまで潔癖な絵づくりをするカメラはほかにないと思う。

「D-RANGE」はダイナミックレンジのこと。自動的に変わるオートのほか、任意のダイナミックレンジに設定できる

ダイナミックレンジ:オート
オートでは、白飛び寸前のギリギリのところまでレンジを使用する
AF-S DX 18-135mm F3.5-5.6G
L+Fine(JPEG)
135mm(203mm相当)
マニュアル(F8、1/100秒)
ISO 100
WB:マニュアル
フィルムシミュレーション:スタンダード

ダイナミックレンジ:100%(STD)
100%ではネコの日の当った部分が完全に白飛びを起してしまった
AF-S DX 18-135mm F3.5-5.6G
L+Fine(JPEG)
135mm(203mm相当)
マニュアル(F8、1/100秒)
ISO 100
WB:マニュアル
フィルムシミュレーション:スタンダード

ダイナミックレンジ:230%(W1)
230%ではちょうどいいぐらいに収まった。この状態ではオートも同じ程度のはず
AF-S DX 18-135mm F3.5-5.6G
L+Fine(JPEG)
135mm(203mm相当)
マニュアル(F8、1/100秒)
ISO 100
WB:マニュアル
フィルムシミュレーション:スタンダード

ダイナミックレンジ:400%(W2)
400%まで広げると、白飛びはしないが抜けの悪い画像になった
AF-S DX 18-135mm F3.5-5.6G
L+Fine(JPEG)
135mm(203mm相当)
マニュアル(F8、1/100秒)
ISO 100
WB:マニュアル
フィルムシミュレーション:スタンダード

ダイナミックレンジ:オート
こちらは全体に暗めの被写体でレンジを変えて撮影した。これはオート
AF-S DX 18-135mm F3.5-5.6G
L+Fine(JPEG)
135mm(203mm相当)
マニュアル(F8、1/125秒)
ISO 100
WB:マニュアル
フィルムシミュレーション:スタンダード

ダイナミックレンジ:100%(STD)
100%では暗部が少し明るくなった。R画素なしでバランスを取るためだろうか
AF-S DX 18-135mm F3.5-5.6G
L+Fine(JPEG)
135mm(203mm相当)
マニュアル(F8、1/125秒)
ISO 100
WB:マニュアル
フィルムシミュレーション:スタンダード

ダイナミックレンジ:230%(W1)
230%では暗部の持ち上げはわずかだが、コントラストもわずかに低い
AF-S DX 18-135mm F3.5-5.6G
L+Fine(JPEG)
135mm(203mm相当)
マニュアル(F8、1/125秒)
ISO 100
WB:マニュアル
フィルムシミュレーション:スタンダード

ダイナミックレンジ:400%(W2)
400%ではさらにコントラストが低くなった
AF-S DX 18-135mm F3.5-5.6G
L+Fine(JPEG)
135mm(203mm相当)
マニュアル(F8、1/125秒)
ISO 100
WB:マニュアル
フィルムシミュレーション:スタンダード