TSMC 16FF+は順調なものの、Fabのキャパシティに不安

SoFIAのような一部の例外を除き、Intelは自社製品を原則として自社で製造している一方、AMDとNVIDIAは製造をファウンダリに頼っており、それぞれ以下のようになっている。

  • NVIDIA GPU、AMD GPU : TSMC 16FF+
  • AMD CPU、AMD GPU : Samsung&GF 14LPP

ここでAMD GPUが両方のファウンダリに載っているのは別にミスではない。その話は後述する。

さて、これらのプロセスについては、2015年末にARM TechCon 2015のレポートで一通り紹介は行っているが、もう少し製品に寄った形で簡単に説明しておきたい。

まずTSMCの16FF+について。BroadcomのVulcanに絡めた形でのレポートはお届けしたが、16FF+に関しては基本的に順調といって良い。

Apple以外のEarly Adopter向けに対してもαサンプルの出荷が終わっており、各社はこれをベースに評価、あるいはβサンプルの製造といったステージにある。もちろんNVIDIAやAMDも、もう初期の評価がある程度出ている段階ではある。

性能的にどうか? という話は別にしてプロセスの話をすると、順調に評価が進んで「問題なし」とされれば、早くて2016年3月くらいには量産に移ることが可能で、そのスケジュールで進んだ場合、最初のロットは6月前にメーカーに届くことになるだろう。

問題はFabのCapacityである。TSMCの場合、16nmはいまのところGIGAFABの14と15のみの製造となる。2016年からGIGAFAB 12の一部も16nmに転換するらしいのだが、28nmの立ち上がり時期ほどではないにしても、16FF+のニーズは非常に大きく、これを完全に満たすのは当初は難しい。

恐らく2016年末ごろまでにはある程度収まるとは思うが、NVIDIAやAMDの本格的な量産出荷が始まる(製品発表は3月のGDCや4月のGTC、6月のCOMPUTEXあたりと目される)6~7月ごろはかなり生産数が限られ、ある程度入手性が改善されるのは2016年の第3四半期末~第4四半期というあたりではないかと思う。

x86に不慣れなSamsung、歩留まりに問題があるGLOBALFOUNDRIES

続いてはSamsung&GLOBALFOUNDRIES陣営であるが、14LPEはAppleのA9をSamsungが量産出荷しており、また14LPPに関しては同社のExynos 8 Octa 8890が最初の製品となる模様だ。QualcommもこのSamsungの14LPPを利用すると見られている。また、GLOBALFOUNDRIESはAMD製品をTapeoutしたのはすでにレポートした通りである。

さて、こちらが抱える問題は何か。まずはSamsungだが、同社のFabにおける歩留まりは気持ちよい程低い(ラフに言えばTSMCとかの半分のオーダー)。ただ、これは14nm以前からずっと変わっていない。しかもSamsungは、歩留まりを改善するのではなく倍量のウェハを突っ込む(!)ということでこれをカバーしているので、歩留まりそのものは問題とはいえない。

では何が問題なのかといえば、同社はARMコアとMali GPUには経験が長いし、かつてはFPGAなども手がけていたが、x86やAMD GPUを製造した経験がないということだ。

そのためプロセスそのものはGLOBALFOUNDRIESと一緒(というか、GLOBALFOUNDRIESが合わせた)と言いつつも、ライブラリとか最適化技法などに関しては、逆にGLOBALFOUNDRIESからいろいろ持ってこないと間に合わない事態になっており、これで大分苦戦しているようだ。

一方のGLOBALFOUNDRIESにおける問題は? というと、彼らはCPUやGPUの設計には慣れており、最適化の方法論なども持ち合わせているのだが、肝心の歩留まりがSamsungに輪をかけて低いという問題がある。正確な数字は分からないのだが、「桁が違う」という話を耳にしたことがある。そもそも、なんでAMDがGLOBALFOUNDRIESだけでなくSamsungのFabを使うかといえば、GLOBALFOUNDRIESだけではAMDが必要としている数量を到底まかなえないからだ。

理論上は「GLOBALFOUNDRIESで最適化を詰めた上でSamsungで生産すればOK」のはずだが、そこまで話はうまくいかない。IntelですらCopy Exactlyをちゃんと運用するのに年単位での時間が掛かっているし、別の会社のFab同士が一発でそこまで連携を取れると思う方がおかしい。そんな訳で、現状はどちらのFabを使っても問題山積みという感じになっている。

ARM TechCon 2015ではFab 1(旧AMDのFab36/Fab38)とFab 8(NYに建設した最新工場)の両方で製造された14nm(LPEかLPPかは不明)のWaferを展示して見せた(Photo14~16)が、実際に製品(特にCPU)が流れるのは、Samsungの方でどこまで最適化が進むかにかかっており、GLOBALFOUNDRIESの方は2016年末までに戦力になればいいのだが……という状況である。

Photo14:Fab 1製の300mm Wafer

Photo15:Fab 8製の300mm Wafer

Photo16:Fab 1の方のアップ。「これ何?」「Wafer」「それは見りゃ分かるよ(笑)この回路はCortex-A?」「うんにゃ。単なるテストチップでいろんな回路を集めてるだけで動かない」「向こうのFab 8のもそう?」「そう」