コンピューターの歩みはテキストエディターのそれと同じです。テキストファイルの作成や編集に欠かせないテキストエディターは、現行のOSであるWindows 7のメモ帳やMac OS XのTextEditのように標準搭載されていることからも、その重要性を理解できるでしょう。今回の「世界のテキストエディターから」は、チェコ産の「PSPad」を紹介します。


メモ帳の代替えエディター「Notepad2」

LinuxテキストエディターのWindows版「Gedit」

文書+プログラム=「Notepad++」

愛され進化し続けている「Vim」

国産テキストエディター「TepaEditor」

130種類以上のプログラム言語、150種類以上のプラグイン対応「jEdit」

四半世紀の歴史と高い完成度を誇る「MIFES 9」

番外編 テキストエディターの配色を考察してみる

文書作成のだけために存在する「WZ Writing Editor」

コンパクトで気軽に試せる「GNU nano」

完成度の高さとユニークな機能が魅力な「gPad」」

プラグインによる拡張で自分好みに仕上げられる「AkelPad」

強力なテキストエディター「GNU Emacs」

ユーザーコミュニティの手で成長し続ける「xyzzy」

KDEの優秀なテキストエディター「Kate」

番外編:「一太郎2012 承」のエディタフェーズを検証する」

Metro風デザインが目新しい「MetroTextual」

プラハの息吹を感じるテキストエディター

日本から約九千キロメートル離れたチェコ共和国。中欧(ちゅうおう)に位置する同国が工業立国としての伝統をつちかい、IT産業にも積極的にコミットしていることをご存じでしょうか。そんなチェコ共和国から生まれたテキストエディターが、Jan Fiala(ジャン・フィアラ)氏作の「PSPad」です。

多くのテキストエディターと同じく、プログラミング環境を意識した設計になっており、各種言語のサポートや強調表示、プラグインシステムによる機能拡張など、機能面は他のテキストエディターと比較しても引けを取りません。2001年から開発が始まり、海外を中心にオンラインソフトウェアの配布サイトで多くの賞を受けています。

最新版は2011年11月にリリースされたバージョン4.5.6ですが、現在もフォーラムを中心に意見交換が行われ、今年五月には各種バグフィックスや新機能を備えたバージョン4.5.7をベータ版としてリリース。PSPadは既に安定期に入ったテキストエディターですので、頻繁な更新を求める必要はありませんが、現在でもバグ修正や機能追加などの手が加わっているという点を踏まえれば、紹介に値するテキストエディターであることを理解できるでしょう。

ここでPSPadの特徴をいくつかピックアップしてみましょう。公式ページに掲載されている機能を見ますと、最初に"プロジェクト作業"が掲げられています。これは複数のソースコードを同時に管理しなければならないソフトウェア開発者向けの機能。一般的なIDE(Integrated Development Environment:統合開発環境)では欠かせない機能ですが、IDEではなくテキストエディター上で開発を行うユーザーには有益ではないでしょうか(図01)。

図01 PSPadのプロジェクト機能。プロジェクトウィンドウの他にもFTP用ウィンドウが示すとおり、FTPクライアント機能も備えています(画面は公式サイトより)

先の画面をご覧になるとわかるように、PSPadはタブ付きのMDI(Multiple Document Interface:マルチプル・ドキュメント・インターフェース)を採用しています。ウィンドウ内に表示できるウィンドウが一枚に限る方法はSDI(Single Document Interface)と呼び、最近はこちらが主流になっています。そのためMDI形式に古さを感じるかも知れませんが、複数のファイルを同時編集し、テキスト比較やバイナリー編集など異なる作業を行う場合はMDI形式の方が有利でしょう。

この他にもインスタントマクロ機能やWebブラウザーのコンポーネントを使用したHTMLプレビュー機能、外部プログラムの呼び出し機能など、テキストエディターとして必要と思われる"ありとあらゆる"機能を備えています。PSPadの開発状況を目にしてきた訳ではありませんが、ユーザーニーズに応える形で各機能を備えていったのでしょう。

そのため、PSPadの機能をフル活用するのは難しいかも知れませんが、安定性と多機能性を兼ね備えたPSPadに触れないのは少々もったいない話です。今回も日本語文書作成環境を目指しつつ、PSPadの導入やカスタマイズを試してみましょう。