コンピューターの歩みはテキストエディターのそれと同じです。テキストファイルの作成や編集に欠かせないテキストエディターは、現行のOSであるWindows 7のメモ帳やMac OS XのTextEditのように標準搭載されていることからも、その重要性を理解できるでしょう。「世界のテキストエディターから」では、Windows OS上で動作する世界各国のテキストエディターを不定期に紹介していきます。

国産テキストエディター「TepaEditor」

今回の対象国は我々が住む日本。国産のテキストエディターを数え上げると、秀丸、TeraPad、EmEditor……と古くから多くのソフトフェアが公開されてきました。また、ここにパッケージ製品を加えると、枚挙にいとまがありません。そもそもメジャーなテキストエディターは、解説文や紹介記事が数多く存在しますが、今回は小林哉氏が作り上げた国産テキストエディター「TepaEditor」を取り上げましょう。

同テキストエディターは、様々なアイディアをふんだんに取り込みつつも、快適な編集環境とテキストエディターに欠かせないシンプルさを備えたソフトウェアです。一般的な編集機能はもちろんのこと、任意の文字列を画像に変換する「TtoGコンバーター」や、TepaEditor内から外部アプリケーションを呼び出す「ツールランチャー」など、ユニークな機能も兼ね備えています。

また、TepaEditorには、JavaやPerlといった言語に合わせた編集を容易にする「編集モード」という機能が備わっています。本稿をご覧になっている方はもとより、各種テキストエディターに詳しい方であれば、同機能を備えるのが最近の流行りであることはご存じのことでしょう。TepaEditorの編集モードも各テキストエディターのサポート言語に似ており、特定文字の強調表示や禁則処理、字下げといった各種設定を使用言語によって切り替えるというものです。詳しくは後述しましょう。

国産テキストエディターということで、今回は事前に行う準備や導入後の日本語関連設定は必要ありません。そこで、TepaEditorの機能を俯瞰(ふかん)しつつ、編集モードやユニークな機能の活用方法を解説します。

基本のカスタマイズ-配色設定

公式サイトのダウンロードページには、インストーラー付きパッケージと、ZIP形式で圧縮されたパッケージの二種類が用意されています。インストール/アンインストールの管理や他環境への移行する際の煩雑さを踏まえると後者を選択しがちですが、ZIP形式パッケージには編集モードを定義するファイルが含まれていません。

そのため、ZIP形式パッケージ+使用する編集モードファイルを個別にダウンロードする必要があります。今回は手順を簡単にするため、インストーラー付きパッケージを選択しましょう。セットアップを終えると、デスクトップやプログラムメニューにショートカットファイルが作成されます。図01に示すとおり、シンプルな配色と各機能を呼び出すためのツールバー、現在の状態を示す二行のステータスバーが見て取れるのではないでしょうか(図01)。

図01 TepaEditorのメイン画面。SDI(Single Document Interface)を採用し、上部はツールバー、下部にはステータスバーが並びます

図02 <ツール>メニューから<編集モードを設定>をクリックします

まずはいつもどおり配色設定から行いましょう。TepaEditorではシステム全体の設定を行う<共通設定>と、各編集モードの設定を行う<編集モード設定>の二カ所にわかれており、配色に関する設定項目は後者に用意されています。<ツール>メニューからたどって開くと起動する編集モード設定ダイアログの<配色>から各パーツの色味を変更しましょう(図02~03)。

図03 ツリーペインで<配色>を選択すれば、配色の変更が可能になります

図03では、ご覧のとおり設定箇所は多く、配色も個別選択のみと手間がかかってしまいます。そこで、公式サイトに用意されたコントリビュート編集モードである「テキスト」を導入しましょう。編集モードは拡張子「.em2」を持ったファイルで定義されており、TepaEditorを導入したフォルダーに編集モードファイルを展開することで、ツールバーのドロップダウンリストから編集モードが選択可能になります(図04~05)。

図04 公式サイトに用意された編集モード「テキスト」を、TepaEditorを導入したフォルダーに展開します

図05 TepaEditorを再起動すれば、異なる編集モードが使用可能になります

この仕組みはVimにおけるカラースキームファイルに似ていますが、編集モードファイルには配色だけでなく、図03で示したダイアログ上の設定項目であるインデントやタブ設定なども内包されているため、このファイル一つとプログラム本体があれば、お気に入りの使用環境を持ち運ぶことが可能になります。

ただし、この編集モードは、執筆文書の内容や使用するプログラミング言語によって切り替えることを前提に実装された機能らしく、特定の編集モードを既定値として登録する機能が用意されていません。

そこでポイントとなるのが、編集モードは一つのファイルとして管理されている点。先ほど展開した編集モードファイル「テキスト」のなかから、好みの配色を持つファイルを「デフォルト.em2」としてコピーすれば、起動時から好みの配色となりました。そもそもTepaEditorの設定はすべてテキストファイルで管理されていますので、ちょっとしたファイル操作で足りない設定を補うことが可能です(図06~10)。

図06 編集モードファイルの中身はテキストファイル。定義内容を把握すれば、直接編集することも可能です

図07 TepaEditorを導入したフォルダーを開き、「デフォルト.em2」を「デフォルト.em2.orig」などにリネームします。確認をうながすダイアログが現れたら<はい>ボタンをクリックしてください

図08 次に元となる編集モードファイルを選択して[Ctrl]+[C]キー→[Ctrl]+[V]キーと押して同ファイルをコピーします

図09 コピーしたファイルの名前を「デフォルト.em2」に変更します

図10 この状態でTepaEditorを起動すれば、お好みの編集モードが既定値となります

この操作を行ってから、タブやインデントといった基本的な設定を行いましょう。