コンピューターの歩みはテキストエディターのそれと同じです。テキストファイルの作成や編集に欠かせないテキストエディターは、現行のOSであるWindows 7のメモ帳やMac OS XのTextEditのように標準搭載されていることからも、その重要性を理解できるでしょう。今回の「世界のテキストエディターから」は、Windows OS上で動作する世界各国のテキストエディターとして、プラグインによる機能拡張が面白い「AkelPad」を紹介します。

カスタマイズに優れるテキストエディター「AkelPad」

「AkelPad」

本稿も数えて十二回目。改めてテキストエディターとは何ぞや、ということを考えてみましょう。単文や簡単な文字を入力するのであれば、OSに付属するメモ帳で十分ですが、ちょっとした文書を書く場合、折り返し機能を備えていないテキストエディターでは不十分。その一方で簡単なマクロやスクリプトを書く場合、タブコードの文字数を変更したいケースやタブコードの代わりに半角空白を挿入するケースにも対応できません。

このようにテキストエディターとは、自身が望む機能が備わっていることが重要であり、そのニーズ自体もユーザーによって大きく異なります。筆者のように目が疲れるので配色の変更機能が必須と考えるユーザーや、特定の言語体系を持つマクロ機能が欠かせないというユーザーから、多機能すぎるテキストエディターは逆に使いづらいと考えるユーザーまで千差万別。

このような背景を踏まえますと、万人が使いやすいと感じるテキストエディターは多機能であると同時にシンプルでなければなりません。つまり、カスタマイズ性が重要なのです。そこで今回は、数あるテキストエディターのなかでも小気味よく動作し、プラグインによる拡張性が魅力的な「AkelPad」を取り上げましょう。

同テキストエディターはAlexey Kuznetsov氏が2003年頃に開発をスタートさせ、2004年4月には現時点で確認できる最初のバージョンがリリースされました。2006年頃から始まったバージョン3.xからは、Aleksander Shengalts氏が開発を引き継ぎ、現在に至っています。(図01)。

図01 現在でも公式サイトからダウンロードできるバージョン1.06。メッセージ周りはすべてロシア語です

公式サイトに書かれているAkelPadの特徴をまとめますと、シングルウィンドウ(SDI)/マルチウィンドウ(MDI)に加えて、PMDI(pseudo multi-window modes:擬似マルチウィンドウモード)という三つの表示形式を備えています。前者二つは一般的ですが、PMDIはあまり聞き慣れない名称ではないでしょう。実際に試すと簡単にわかる話ですが、PMDIとはタブ機能です。現在多くのテキストエディターが備えるタブ機能ですが、表記を変更した方がわかりやすいと感じるのは筆者だけでしょうか。

また、AkelPadはUnicodeのフルサポートやマルチレベルのアンドゥ機能、文字検索や文字置換といった一般的な機能を備えつつも、軽快な動作を実現しています。後述するプラグインが様々な機能を担っている点も大きいですが、AkelPadが「Windowsのメモ帳が欠けている機能を補う」というコンセプトで開発されているからでしょう。

AkelPadは英語/ロシア語を前提としていますが、言語モジュールをサポートすることで、簡単に多言語化に対応。もちろん日本語も使用可能です。今回はこのAkelPadを取り上げ、同ソフトウェアの使い方やカスタマイズポイントなどを探っていきましょう。

AkelPadの導入と日本語設定

AkelPad公式サイトのダウンロードページでは、各バージョンのダウンロードリンクが用意されています。最新版を利用してください。日本語化に必要なのはセットアッププログラムを用いて導入する「Installer」。本来な圧縮ファイル形式で配布されている「Archive」を選択したいところですが、言語ファイルが同こんされていませんので、前者を選択してください。また、64ビット版Windows OSをお使いの方は、「X64」と書かれたリンクから「AkelPad-x.x.x-x64-setup.exe(xはバージョン番号)」を入手しましょう(図02~05)。

図02 ダウンロードページにアクセスし、最新版の「Installer」をクリックします

図03 Sourceforgeのダウンロードページが開きます。通知バーの<実行>ボタンをクリックしましょう

図04 通知バーによる警告メッセージが発せられた場合は<操作>ボタンをクリックします

図05 ダイアログを展開し、<実行>と書かれたリンクをクリックします

これでセットアッププログラムが起動します。最初に三つの選択肢を提示されますが、通常は「Standard install」を選択してください。これは、文字どおり標準的なアプリケーションの導入と同じくProgram Filesフォルダーに専用のフォルダーを展開するというもの。二つ目の「Editor for Total Commander」は、海外でメジャーなファイル管理ツールのアドオンとして追加するための機能です。三つ目の「Windows notepad replacement」は既存のメモ帳を置き換えてAkelPadを導入するというもの。今後AkelPadをメインのテキストエディターとして使う場合は有益ですが、関連付けの変更などが行われるため、筆者はお勧めしません(図06~09)。

図06 セットアッププログラムが起動しました。<Standard install>が選択された状態で<Next>ボタンをクリックします

図07 展開先となるフォルダーやショートカットファイルの作成先を操作してから<Install>ボタンをクリックします

図08 ファイルの展開を終えたら<Finish>ボタンをクリックします

図09 これでAkelPadが起動しました。ご覧のようにメモ帳風のシンプルなテキストエディターです

これでAkelPadが起動しましたので、さっそく言語を日本語に変更しましょう。前述のとおりAkelPadには日本語モジュールが用意されていますので、操作は簡単です。<View>メニューに並ぶ<Language>から<Japanese>を選択し、AkelPadを再起動してください。これだけの操作でメッセージ周りが日本語に切り替わります(図10~12)。

図10 <View>メニュー→<Language>→<Japanese>とクリックします

図11 再起動をうながすメッセージが表示されたら、<OK>ボタンをクリックし、AkelPadを一度終了させます

図12 AkelPadを起動するとメニュー周りが日本語表記に切り替わります