産経ニュース電子版は1月24日、「しなの鉄道が初の新型車両 旧国鉄115系を置き換え」と題し、しなの鉄道115系の引退を報じた。記事によると、2019年秋から新型車両を新造し、8年間で52両を導入する計画だという。総予算は約100億円で、国や自治体からの補助金を活用したい考えとのこと。

  • しなの鉄道の115系。新型車両導入にともなう置換えが報道された

しなの鉄道は1997年、北陸新幹線の並行在来線となった旧JR信越本線軽井沢~篠ノ井間を引き受けて発足した。車両もJR東日本から引き継ぎ、169系(3両編成)を4本、115系(3両編成)を16本譲受した。169系は2013年に引退し、代わって2両編成の115系が7本追加で譲渡された。同じ年に3両編成の115系のうち1本が廃車となった。

現在、しなの鉄道には115系の3両編成が15本、2両編成が7本という陣容となっている。このうち、3両編成の1本が観光列車「ろくもん」として改造されている。「ろくもん」を除くと56両となり、新造車両が52両となれば4両の減少となる。新造車両のベースとなる車両はJR東日本のE129系2両編成が候補に挙がっており、52両なら2両編成を26本製造できる計算になる。現行のしなの鉄道115系は計22本だから、編成数は足りる。おそらく列車の運行本数は変わらず、3両編成だった列車を2両編成に短縮、あるいは2両編成をつないで4両編成に増やすなどして、乗客数の変化に対応するとみられる。

つまり、しなの鉄道の115系は8年後の全廃が予想される。同社の公式サイトでは発表されていないけれども、115系の最後の製造から35年も経っているため、廃車は時間の問題だった。なによりリバイバル塗装の導入が、引退間近であることを予感させた。

しなの鉄道の115系は一部を除き、同社のオリジナルカラーで運用されている。そんな中、2017年4月に「初代長野色」が施された。これは国鉄分割民営化後、JR東日本の長野地域の色として使われた色だ。同年5月には湘南色(オレンジ色・緑色)、7月には横須賀色(青色・クリーム色)が施された。湘南色の115系は高崎線、上越線、東北本線などで使われた。横須賀色の115系は中央本線の普通列車などで活躍した。

しなの鉄道では、JR東日本発足時に施された「コカ・コーラ」レッドカラーも2月に復活予定だ。塗装費用をクラウドファンディングで集め、ファンとともに盛り上がった。

これらのリバイバルカラー塗装は2017年夏期の信州ディスティネーションキャンペーンと開業20周年の記念事業と発表されているけれども、引退へのはなむけという予感がした。なぜなら、最後の全般検査のタイミングでリバイバルすることが多いからだ。

鉄道車両も自動車などと同じで「車検」がある。電車の場合、1週間以内に行われる仕業検査、3カ月をめどに行われる交番検査、4年ごとの重要部検査、8年ごとの全般検査がある。自動車に例えるなら、仕業検査が運行前点検、交番検査が3カ月点検、重要部検査が1年点検、全般検査が車検に相当するだろう。塗装の変更や修繕は、全般検査の車体修理の一環で行われる場合が多い。

長期にわたって使用される電車は、運用する路線の変更、経営主体の変更、コーポレートカラーの変更やイメージアップなどによって、登場時からの塗装を変更する場合がある。これも全般検査がきっかけで行われるケースが多い。次の全般検査が行われる8年後までに引退しそうな車両に対し、昔を懐かしんでもらおうとイベント的にリバイバル塗装に戻されることがある。鉄道会社の粋な計らいといえる。

しなの鉄道の塗装変更も、キャンペーンと全般検査の時期に重なったかもしれない。新型車両の導入に8年間という数字も、全判検査の周期だとすれば納得できる。現存する115系のうち、全般検査が終わった車両の8年後に、全般検査をしないで引退させて、その代わりに新型車両を投入する算段なのかもしれない。

しなの鉄道の115系置換え報道の前週、1月15日には、JR東日本高崎支社が115系の管内からの引退を発表した。引退予定時期は今年3月だ。こちらは登場当時の塗装のまま運用されていたから、リバイバル塗装にする必要はなかった。いつかは……と思われていたけれど、予告なしに唐突に発表された感がある。一方、新潟支社はかつて新潟地区で採用された「初代新潟色」などに塗装している。ちょっとした遊び心といえる。

  • 岡山地区では昨年5月、湘南色の115系2編成を連結しての特別運行が行われた

JR西日本は岡山・広島地区などで115系が活躍中。多くの車両が黄色1色など地域色になっているけれど、岡山地区では3両編成2本が湘南色のリバイバルカラーで運行されている。ただし、2017年12月27日の日本経済新聞電子版で「新型車両『レッドウイング』 JR西、118両追加 18年度中」と報じており、こちらも115系が淘汰されていく模様。

相次ぐリバイバルカラーの誕生で、国鉄時代に製造された近郊形電車115系の引退ムードが高まっている。他の形式でもリバイバルカラーが現れたら、お別れ乗車の用意をしたほうがいいかもしれない。しなの鉄道は公式サイトで、「懐かしの車体カラー・ラッピング列車」の車両運用行路表を公開している。参考にしよう。