2013年頃から各地で観光列車が誕生し、今年もその勢いが止まらない。平成筑豊鉄道は1月13日から「ひとつ星」を運行開始し、好評と報じられた。若桜鉄道では、3月4日の「昭和」デビューに備え、1月4日からツアー販売を開始した。登場準備中の列車は他にもあり、既存の観光列車も競争力を高めて対策を始めた。

  • 平成筑豊鉄道の観光列車「里山列車紀行 ひとつ星」は「へいちく浪漫号」(500形501号)を使用する

西日本新聞電子版の1月14日付記事「『ひとつ星』発車 平筑鉄道田川伊田発着の54キロ 『沿線の風景、おもてなし味わって』」によると、観光列車「里山列車紀行 ひとつ星」は1月13日にデビューし、好スタートを切ったそうだ。毎週土曜日の運行で、第1期は1月13日から3月3日分まで。すべて予約で満席だという。4月以降のツアーは1月下旬から募集するとのこと。

「里山列車紀行 ひとつ星」はレトロ調イベント車両「へいちく浪漫号」を使用し、観光列車として定期的に運行される。「へいちく浪漫号」の500形は一般車両の400形をもとに2008年に新造された車両で、当初から外装はレトロ調、車内はミニテーブル付きの転換クロスシート。貸切運行の場合は約2倍のサイズのテーブルを取り付けられる。テレビモニターなどAV機器を備え、3500局搭載のカラオケ、ビンゴゲームもできるという。平成筑豊鉄道では「へいちく浪漫号」を約3時間、6万円の料金で貸切運行している。

「ひとつ星」のツアーは3時間半の行程だ。田川伊田駅に11時に集合し、まずは田川線で油須原駅へ。21分間停車した後、折り返して田川伊田駅を通り過ぎ、伊田線に入って直方駅で23分間停車する。直方駅から再び折り返し、金田駅で11分間停車し、田川伊田駅に14時30分に到着。解散となる。車内では地酒が飲み放題。フレンチシェフによる地元食材を使った弁当が出る。停車駅や車内で特産品の試食販売を行う。

運行形態はJTB九州の北九州支店が企画催行する形で、田川地区8市町村の自治体や商工団体でつくる田川広域観光協会などが協力する。日本旅行が道南いさりび鉄道で実施する「ながまれ海峡号」に似た運行形態となる。新たなな車両改造は不要だったこともあるのか、料金は大人5,980円、小人4,980円と低めに抑えられている。お得度の高い観光列車といえる。

列車名に採用された「ひとつ星」は、パンフレットによると「北極星」だという。「かつて道しるべとなった北極星のように、沿線の人々にこれからの地域観光のあり方、方向性を示す存在になる」という願いが込められているそうだ。JR九州の「ななつ星 in 九州」に対抗して……というわけではないだろうけれど、多少はあやかっているかもしれない。沿線に強力な観光名所は多くないものの、地酒と料理と低価格は魅力。庶民的観光列車として、これからも頑張ってほしい。

若桜鉄道は3月4日、観光車両「昭和」を導入する。観光列車専用車両というわけではなく、既存の気動車WT3000形の車体を更新し、グレードアップする。WT3000形は1987年にWT2500形として製造され、2002年からエンジンや台車など走行系機器を交換し、パワーアップを図って現形式となった。

今回は客室部分をリフォームする。デザイナーは「ななつ星 in 九州」などでおなじみの水戸岡鋭治氏。お得意の木材とファブリックを使ったくつろぎの空間となる。座席はセミクロスシートとなるけれども、ロングシート部分はソファになり、一部は緩やかな曲線でL字状になる。空いているときだけ、お行儀が悪いけど寝そべってみたくなる。

「昭和」は通常、一般車両として運行し、毎月第1・3日曜は個人旅行向け観光列車として、第2・4日曜は団体旅行向けに貸切運用を行うという。個人旅行向け観光列車の第1弾「若桜鉄道『昭和』の旅」は1月4日から募集を開始している。3月4日に運行され、企画と催行は鳥取市観光コンベンション協会、料金は大人・こども同額で9,980円となる。

このツアーは「プランA」「プランB」を選択できる。「プランA」は鳥取駅を8時にバスで出発し、若桜駅から終点の郡家駅まで「昭和」に乗車。バスで移動し、水戸岡鋭治氏の記念公演、大江ノ郷ビレッジ(昼食)、やずミニSL博物館、鳥取砂丘を巡り、15時に鳥取駅に戻る。「プランB」は鳥取駅を10時に出発し、若桜宿のまちあるきを楽しみ、大江ノ郷ビレッジで昼食の後は「プランA」と同じルートをたどる。17時に鳥取砂丘コナン空港で解散する。

「昭和」に続き、残り2両のWT3000形も順次リフォームする予定。このツアーの紹介ペーシによると、「昭和」と並んで「若桜(わかさ)」「八頭(やず)」の文字がある。これが2両目と3両目の愛称になるのだろうか。

若桜鉄道は圧縮空気を使ったSLの展示運転や気動車の体験運転を実施している。将来はSL列車の運行をめざしている。「昭和」は"鉄分"の薄い人も楽しめるはず。末永く愛される列車になってほしい。

2018年は他にも観光列車の動きがある。長良川鉄道が観光列車「ながら」用に3両目の車両「川風」を4月に導入する。JR西日本は7月から、山陰エリアでキハ47形を改造した観光列車「あめつち」を運行する。あいの風とやま鉄道は413系を改造した観光列車を計画中だ。2019年度に向けては、西日本鉄道が食事付き観光列車を準備中。2020年度までにJR西日本が117系電車改造の「新たな長距離列車」を導入する。

一方、肥薩おれんじ鉄道の観光列車「おれんじ食堂」は今年3月のダイヤ改正で料理を見直し、料金を下げる。筆者も昨年秋に乗った「伊予灘ものがたり」(JR四国)では、アテンダントが相席者にメッセージを読む「伝言板サービス」が追加され、新しいグッズも登場した。リピーターを飽きさせないため、料理も時期をみてリニューアルしているそうだ。観光列車が全国に誕生し、競争が始まっている。既存の観光列車も再訪すると新しい発見があるかもしれない。日本の観光列車の黄金期はまだまだ続きそうだ。