教育現場でのChatGPT利用は、まずは授業以外の校務から

教育現場における生成AIの活用について、2023年7月に文部科学省から「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」が提示された。

ChatGPTを代表とする生成AIは発展途上にあるものの、急速に利用が拡大している。そのため、いまの子どもたちが社会に出る頃には、当たり前に使われている世の中になっているだろう。そうした将来を見据え、生成AIの仕組みや課題の理解や、段階的に活用していく方法、活用例などについて示したガイドラインだ。

このガイドラインでは、授業での活用以前に、教員自身が生成AIに対する理解を深めることが重要だと示されている。そのための第一ステップが、授業以外の校務に利用することだ。

教員の日常業務を効率化するChatGPT

教員の業務でどう使えるかを見て行こう。

まず1つ目は、リサーチだ。生成AIの性質上、ハルシネーションと呼ばれる、事実に基づかない情報を生成してしまう可能性があるのが課題だが、事実でなく意見として捉えるべきものだと理解しておくと良い。

2つ目は、リサーチを踏まえた企画立案だ。授業や行事の内容についてアイデアを出させたり、アイデアを元にしたスケジュールや提案書の作成といった使い方ができるだろう。

3つ目は文章作成だ。たとえば、保護者向け、児童・生徒向けに発行する連絡網やお知らせの文章作成に利用できるだろう。基本的な条件を与えて骨子だけを作らせることも、具体的な文章を作らせることも可能だ。既存の文章を元に要約することも得意なため、上手に活用すれば業務効率化になるだろう。

4つ目は、翻訳だ。外国籍の保護者向けに案内を英文で作らなければならない場合も昨今は増えているが、これもChatGPTに任せられる。もちろん英語以外の言語にも対応している。

教材・テスト問題づくりのたたき台に活躍

生成AIに対するある程度の理解が進んだら、次は授業での活用だ。最初のステップとしては、やはり教員の負担軽減から入ることをオススメしたい。

ChatGPTを始めとする生成AIは、ハルシネーションの問題以外にも、指定した条件を完全には満たしていないものが生成されたり、整合性のないものが含まれてしまったりする場合はどうしてもあるため、人による最終的な確認と手直しは必須だ。つまり、たたき台を作らせるアシスタントとして考えるのがいいだろう。

具体的な使い方としてわかりやすいものは、テスト問題の作成だ。たとえば算数のテスト問題の場合、「2桁同士の掛け算の問題を30個作って」と指示すれば、問題を瞬時に作成できる。指示を変更したり、最初の出力よりも難しいもの、簡単なもの、と変化をつけながら追加作業させることも簡単だ。教員は、指示通りのものができているか、同じ問題が繰り返し表示されていないか、計算結果は合っているか、などを確認し、出力結果から希望に合ったものを必要数だけ抜き出す作業をすればいいため、手間が大きく軽減される。

分かりやすい説明文やたとえ話の作成にも活用できる

さらに、児童・生徒への説明を助けてもらうのも有効だ。概要の説明する、たとえ話を作るといったこともChatGPTならすぐにやってくれる。

「○○について小学生がわかるように説明して欲しい」と基本的な説明文を作らせ、細かい部分は自分で修正することができる。「もっと分かりやすくしてほしい」と追加指示することで生徒のレベルに合わせた文に調整していける。自分だけでは出てこないような切り口やアイデアを得ることもできるため、最初の説明で理解できなかった生徒に対してもっと分かりやすく説明する方法はないかと考える時間も減らすことができるだろう。

また生徒により分かりやすく説明するために、たとえ話を使うこともあるが、教員自身で考えるとなると負担は大きい。しかし、ChatGPTに作らせた文章を添削するだけならば負担は大きく軽減できる。

こうした利用方法であれば、個人情報をはじめとする機密情報を入力する必要はない。ChatGPTを安心して試せる使い方のため、ぜひ積極的に利用して欲しい。

授業内での活用は段階的かつルールを定めて

授業や家庭学習で生徒自身に使わせるには、準備が必要だ。生成AIの仕組みやハルシネーションに代表される課題、著作権侵害の可能性や個人情報入力についてなど、まず理解すべきことがあるからだ。

将来的な生成AIの普及を踏まえて段階的に進めるにしても、生徒達への影響を考えるとなかなか手が出せないところもあるだろう。文部科学省のガイドラインにも具体例は載っているが、今回は海外事例と大学院での事例を紹介しておこう。

海外の小学校での事例としては、同じテーマで人間が書いた文章とAIが書いた文章を並べて印刷し、どちらがAIの文章かを見分けるという授業が行われた。実際に生成AIを利用しているのは教員だが、この授業を通してAIが作る文章とはどういう特徴があるのか、人間が書いたものとどう違うのかなどを学べる仕組みだ。

ある大学院の事例では、適切な活用方法を教えた上で積極利用させるものだ。利用する上でのポリシーを定め、質問のためのプロンプトを教える。ハルシネーションについて説明し、回答を鵜呑みにしないことや生成結果に間違いがある可能性はあること、それを確認し、修正するのは利用者の役目であることを伝えている。また、生成AIを利用すべき場と自身で考えるべき場をきちんと考えて分けること、利用時にはどのように質問してどう回答があったのか、どこに利用したのかをきちんと示すことなどを指示した上で、論文作成等への利用を推奨した。

義務教育や高校での利用の場合にも、この考え方は応用できるだろう。教育段階に応じて使い方を示し、限定的に使わせるなどして生成AIの仕組みや課題について理解を深めつつ、利用経験を詰めるようにしたい。

まずは業務効率化からサテライトオフィスがサポート

将来的に生成AIがさまざまな仕事で活用される動きはすでに始まっている。生成AIを活用するスキルは、生徒達の将来には必要なものと言える。しかし、実際に授業で利用したり、家庭で生徒自身に利用させたりする場面では、不安を持つ人も多いだろう。

活用初期段階である今、業務効率化に利用しつつまずは教員自身が理解を深めるのがおすすめだ。子供達への影響は抑えたままトライできる校務での利用は、ぜひ積極的に行って欲しい。自ら活用することで理解を深め、段階的に授業への直接的な利用へと進めて行く形が理想的だ。

サテライトオフィスでは、学校向けサービス「Google Workspace for Education」の導入支援等を手掛けてきたが、現在生成AIのビジネス活用にも注力しており、教育現場でのIT活用と生成AI活用の双方にノウハウを持っている。導入や活用についての手助けが必要な場合には、ぜひご連絡いただきたい。

監修:原口 豊(はらぐち・ゆたか)

大手証券会社システム部に在籍後、1998年、サテライトオフィス(旧ベイテックシステムズ)を設立。2008年、いち早くクラウドコンピューティングの可能性に注目し、サービスの提供を開始。Google Workspace(旧称:G Suite)の導入やアドオンの提供で、これまで実績6万社以上。「サテライトオフィス」ブランドでクラウドサービスの普及に尽力している。

サテライトオフィス

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さまざまなビジネスモデルに最適なソリューションパッケージを開発し、ユーザー目線に立った戦略の企画・提案を行っています。業界トップクラスの導入実績を持つGoogle WorkspaceやMicrosoft 365、LINE WORKS、ChatGPT など、AI関連ならびにクラウドコンピューティングに関わるビジネスの可能性を追求しています。

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