一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会(以下、当協会)の顧問理事の寺田学です。私は試験の問題策定とコミュニティ連携を行う立場です。 2022年7月15日までの1か月間、Python3エンジニア認定基礎試験、データ分析試験の上位試験にあたるPython3エンジニア認定実践試験のベータ試験を実施しました。 今回はこのベータ試験を通して見えてきたことや実践試験についてお話ししたいと思います。

Python3エンジニア認定実践試験とは?

一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 顧問理事 寺田学氏

著者:寺田学
一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 顧問理事

初心者向けに提供してきたPython3エンジニア認定基礎試験およびPython3エンジニア認定データ分析試験に対して、この実践試験はPythonの開発現場での実践的な知識を問う内容になっています。 実際の現場で使われているような知識や、自分で調べられる力を持っているか、標準・サードパーティ製のライブラリの存在やその使い方を含めて知っているか、開発の考え方を理解しているかといった、Pythonエンジニアとして開発現場で活躍できる能力があるかどうかが重要となる試験です。

主教材は技術評論社から発刊された「Python実践レシピ(当協会監修)」で、実務にあたる方ならこのぐらいのことは知っておいてほしいという前提でまとめられており、初心者にとっては難しい内容になっています。 実践レベルの人であれば、調べながら、もしくはスラスラ読めると思いますが、実務に応用できるかは自分でコードを書いてみないとわからない部分があるので、そういった意味で勉強は比較的大変かもしれません。

実践試験の詳細や出題範囲などの詳細な情報は以下のページをご確認ください。
- Python次期試験「Python 3 エンジニア認定実践試験」のベータ試験を全国開催~全国ベータ試験を5月11日より受付開始。合格者は全員本認定~

ベータ試験の実施を通して感じた合格者の学習精度の高さ

先日公開された当協会の代表理事である吉政によるコラムにもありますが、5月のベータ試験の合格率は55.6%でした。これは、一般的な上位試験に比べ比較的合格率が高いと言えます。 試験の提供側からすると、本実践試験は主教材となる書籍のページ数の多さに加え、問題の難易度も高く設定していることから、合格するにはテキストを読んで記憶するだけでは難しく、それなりの経験と学習が必要だと想定していました。

実際に今回のベータ試験を受け、合格された方々がどのような経験を持ち、どう学習されてきたかの詳細を当協会側は把握しておりませんが、主教材の本の分厚さを考えると大変だったのではないかと思います。そのため、この結果を見て感じたのは、受験者の方々の多くは適切に勉強をされ、内容を理解された上で臨まれたのだろうということです。

Python3エンジニア実践試験合格に向けた学習のヒント

主教材自体は500ページを超える分厚さですが、もちろん試験範囲ではない箇所もあるので、まずは試験範囲から学習を進めてください。(とはいえ、試験範囲外のところでも便利に使える情報がありますので、ぜひ折を見て読んでみてくださいね。)

最初の方はPythonのパッケージ管理や環境構築にまつわる部分のため、すでにPythonを使っている人なら難しい内容ではありません。コーディング規約や言語仕様に至っては基礎試験+αというレベルなのでそう難解ではないと思います。 問題となるのは大体4章のクラスの部分です。これについては実際にクラスを使って書いたことがある方であれば理解はできると思いますが、初心者向けとは言えません。 ちなみにクラスやオブジェクト指向に関しては後日、コラムを書く予定でいますので、公開されたらぜひ学習の参考にしてみてください。

主教材の後半に入ってくると、ライブラリの話が中心になります。私自身使ったことがないようなものも含まれているほどなので、試験に関係なく参考になる情報だと思います。 試験にはBlackというフォーマッターなどは多少入っているものの、サードパーティ製ライブラリは含まれておらず、基本的に標準ライブラリなど追加インストールなしで学習できるものになっています。 理由としては、サードパーティ製パッケージを使うケースは基本的に特別なことをしたいときに限られるからです。たとえばHTMLを解析するライブラリが存在しますが、こうした特殊なものを必要としない人は多くいますので、そういった特殊要素は排除し、標準を理解してもらう方向で作成しました。

正直なところ、本や教育のみの学習では合格は難しいかと思いますので、実際に本にあるようなライブラリを使ってみるなど、とにかく手を動かしてみることをおすすめします。 苦手だなと感じた部分があれば対話モードをうまく使い、実際にやってみるとどうなるのかをぜひ確認してみてください。手を動かさずに主教材のみで網羅するように学習するというのは時間、体力、精神力面からみてもあまりおすすめはできません。

学習のヒントについては以前、マイナビコラムでもお話しています。ぜひそちらの記事も参考にしてください。
- Python試験に実践者向けの上位レベル試験を追加、試験のポイントは?

さいごに

ベータ試験では想定していたより合格率が高かったものの、当協会としては簡単な試験にしたつもりはなく、本を読むだけでは理解できないレベルを必要とする試験になったと考えています。ベータ試験の結果を通してみても、現時点で問題の差し替えの必要性は感じておらず、今後も容易に合格できるものではないと考えていただければと思います。 とはいえ、問題自体は基本的に間違いやすい引数やひっかけ、マニアックな内容が含まれる設問はなく、本質的に理解してほしいという内容を問題にしており、普段、Pythonを活用している人であればある程度はイメージできるようなものになっています。 実際に経験していないことを記憶して試験で回答するのはなかなかハードルが高いので、ぜひ実際にコードを書いて確かめながら学習をすすめていってください。

中には主教材を読んで、まだまだだと様子を見て試験の受験を遅らせている方もいると思います。 勉強のために勉強するような無理を重ねることはしないでほしいですが、あまり先延ばしにしてもなかなか結果を出すことが難しい場合もありますので、期日を決めて、現時点での自身の理解度を図るために試験を利用するというのも一つの手です。 もちろん、腕試し的に本だけを読んで試験を受けるという選択もありますが、なんにせよ区切りをつけて学習をするというのは重要です。

ただ、忘れないでいただきたいのは、これまでに合格された方々は十分に勉強して理解しているからこそ、合格できたのだということです。 まずは動くものを作ることを大切にし、より良くする、より効率の良いものにする、Pythonらしく書くという経験をあせらず積んでいきましょう。

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