東京都池袋に学舎を設ける豊島岡女子学園高等学校 (以下、豊島岡) は、毎年多くの難関大学合格者を輩出する、全国有数の名門校です。優れた進学実績から、ともすると、豊島岡の教育を知識偏重とイメージする方がいるかもしれません。ですが、それは大きな誤解です。同校の教育は、創立から一貫して "才能を伸ばす教育" を掲げています。知識だけでなく、自らで高い志を抱く力、そしてこれを実現する力も育んでいるのです。

特色ある教育を持つ豊島岡では、2018 年に文部科学省から SSH (スーパーサイエンスハイスクール) の指定を受けたことをきっかけに、ある試みがスタートしました。普通授業に対して全面的に課題探究のプログラムを取り入れることで、"才能を伸ばす教育" にいっそうの弾みをつけようとしているのです。

新しい試みは、教育の主体たる教職員の意識統一なしには成功しません。より実りある教育を生徒に提供する。このために豊島岡では、2018 年、Surface Pro と Office 365 を利用して業務環境を刷新。Surface というブランドが教職員に変化を促し、Office 365 によるコラボレーションを通じてこの変化に統一性を持たせることに成功しています。

生徒の才能を開花させるために

豊島岡は、120 年以上の歴史を持つ由緒ある名門高です。豊島岡の朝は、毎日 8 時 15 分に必ず行われる、5 分間の「運針」から始まります。全生徒が、各自用意した 1m の白布へひたむきに糸を通し続ける。この「運針」を通じ、豊島岡の生徒は、集中力や物事を積み重ねる継続力を養うのです。

豊島岡女子学園高等学校 教務部長の十九浦 理孝 氏は、「未来は予測が困難です。そんな中でも卒業生が自分らしく活躍していけるよう、本校では知識をつけるだけでなく "才能を伸ばす教育" を実践しています。」と述べ、「運針」もこの一環なのだと語ります。

授業に目を向けてみると、豊島岡の授業は講義形式だけでなく、課題探究のプログラムを積極的に取り入れていることが分かります。

「自らが志を抱き、それを実現していく。この過程で才能は開花していくものだと思います。志は、世の中の物事を体系的に理解し、自分の問題と捉えてこそ生まれるものです。私たちは志を持ち、自らの手で未来を創る力を『志力』と呼んでいますが、本校が課題探究のプログラムを取り入れる理由は、生徒の『志力』をより高めることにありました」(十九浦 氏)。

  • 探究型授業の様子。豊島岡の生徒は自ら課題を設定し、情報機器を活用して情報を集め、周り の生徒と共同しながら課題の解決を目指していく
  • こちらは科学の実験レポートを英語で書くという「科学英語」の様子。物事を体系的に理解す る能力を育むために、こういった科目横断型の授業も数多く行われている

豊島岡の "才能を伸ばす教育" は、2018 年より一層の発展を遂げています。同校では、文部科学省から SSH の指定を受けたことを契機とし、理科、数学等の普通授業に対しても、課題探究のプログラムを取り入れはじめました。

豊島岡女子学園高等学校 SSH推進委員会 主任の根岸 靖 氏は、これを進める上で、教職員の意識統一と業務環境の刷新が不可欠だったと語ります。

「これまでも教科によっては課題探究の要素を取り入れた授業が行われていましたが、SSH の認定を得たことを受け、正式なプログラムとして普通授業に課題探究の要素を取り入れていくことに決めました。SSH の文脈に沿ったプログラムが各授業で実践される。そのためには、先生方の意識を統一していく必要があります。また、新しい試みは先生方に少なくない負担をかけます。そのため先生方が生徒と向き合う時間を確保できるよう、今ある業務を可能な限り効率化することも考えなければなりませんでした」(根岸 氏)。

Surface というブランドが、教職員に変化を促す

豊島岡において、2018 年は、教育だけでなく業務環境も大きく変化した年になりました。同校では、教職員が校務で利用する業務 PC をマイクロソフトの Surface Pro に統一。さらに、Office 365 の各種機能を全面的に用いることで、業務を大幅に効率化させたのです。

豊島岡女子学園高等学校 教務部 ICT委員会 主任の栗本 剛史 氏と十九浦 氏は、業務 PC を Surface Pro へ統一した狙いについてこう説明します。

「授業を含む全ての業務をこれ 1 台で完結できる、そんな環境にしたいと考えました。Surface Pro は持ち運びが容易で、事務業務に耐えるだけの作業性も有しています。教育用途として十分な機能を有していたのです。また、Surface Pro だからこそ期待したこともありました」(栗本 氏)。

「先生方の中に "やらされ感" があっては教育が本質的に変わることはありません。生徒だけでなく、先生方も高い志を持って授業を変えていってほしいと考えました。Surface というブランドは、"革新" や "変化" というブランド イメージを持っています。このブランド イメージが先生方の意識にも変化をもたらすのではないか、Surface Pro に統一すれば全員が同じ方向に向いてくれるのではないかと期待したのです」(十九浦 氏)。

Microsoft Teams と Microsoft Flow が、教職員の集合知を生み出す

既述の通り、Surface Pro と Office 365 の導入によって、教職員の業務は大幅に効率化されました。日々のコミュニケーションを例に、具体的な姿を見てみましょう。

同校では現在、学年や教科ごとにMicrosoft Teams (以下、Teams) 上でチャネルを設けています。さらに、SharePoint Online 上にある業務内容や SSH プログラムの進捗情報を Microsoft Flow (以下、Flow) で連携することにより、週次で Teams の各チャネルに進捗情報を自動通知しています。チャネルの参加者は Teams を見るだけで、自分はこの 1 週間で何をしなければならないのか、学年や教科全体ではどんなタスクがあるのかがすぐに把握できるのです。

  • Microsoft Flow では、単純作業を自動化する仕組みを容易に作ることができる。実際に、豊島岡で は SharePoint Online 上にある情報を Teams に通知する仕組みをわずか数時間で作成している

この仕組みは、特に定例会議の場において劇的な効果を生んでいます。豊島岡では、学校の運営について議論する運営会議、学年主任会議、教科主任会議、職員会議など、複数の会議が開かれています。また、これとは別に全ての先生を対象にした朝礼もあります。

豊島岡女子学園高等学校 数学科 副主任の桑原 夢春 氏は、従来、こうした場は、大半の時間が報告で占められていたと説明。それがどのように変わったのか、次のように述べます。

「会議に参加する各メンバーがどんなタスクを抱えているのか。これを Teams 上の自動通知によってメンバーの集合知にすることができます。例えば朝礼の場合、これまでは 5 分ほどかけて報告や説明を行っていましたが、今では報告する情報が集合知になっていますから、ものの数十秒で済むようになっています。簡単な議題ならば、会議をすることなく Teams 内で完結することも可能です。あらゆる会議体においてこういった効率化が進められていますから、その効果は絶大だと考えます」(桑原 氏)。

  • 豊島岡女子学園高等学校 教務部長 十九浦 理孝 氏、SSH推進委員会 主任 根岸 靖 氏
  • 豊島岡女子学園高等学校  教務部 ICT委員会 主任 栗本 剛史氏、数学科 副主任 桑原 夢春氏
  • Teams ではドキュメントもアップロード可能なため、資料内容に目を通し た状態から会議をスタートできる。効率化だけでなく朝礼・会議の密度を深める面でも効果が 得られている

Surface Pro や Office 365 は、こうしたコミュニケーションの領域以外でも有効に活用されています。豊島岡では、独自の業務アプリが作成できる Power Apps を利用。勤怠管理といったこれまで紙ベースで行ってきた業務の電子化も進めています。

「Power Apps では、Excel のマクロを作る感覚で簡単に業務アプリが作成できます。勤怠管理アプリで言えば、たった 1 日でこれを完成させることができました」(栗本 氏)。

「Power Apps や Flow を利用すれば簡単に業務を電子化・自動化できます。Office 365 は、パッケージ製品ながらかゆいところに手が届くフレキシブルな機能が自分たちで簡単に実装できるという、極めて高い自由度を有していると思います」(十九浦 氏)。

"学校全体でみると、物理的な会議の場は減りました。さらに、資料は事前に配信されるため 1 回の会議にかける時間も減りました。会議以外の業務負荷も削減されていますから、先生方はその分だけ生徒と向き合うことに時間を費やすことができます。これは、Surface Pro と Office 365 による大きな成果だと言えるでしょう。"

-十九浦 理孝 氏 : 教務部長
豊島岡女子学園高等学校

  • Power Apps では直感的に作業するだけで業務アプリが作成可能 (上)。豊島岡の教職員は、 PC だけでなくスマートフォンでも Power Apps で作成されたアプリ上から各種申請を行うこ とができる (下)

教職員がチームになって「志力」を追求するように

Surface Pro と Office 365 の導入によって、豊島岡の業務環境はがらりとその姿を変えました。同環境は、教職員にどのように受け入れられているのでしょうか。数学科の小美野 貴博 氏と、同じく数学 科の 岡崎 和幸 氏、体育科の竹村 藍 氏に話を伺いました。

「同じ機種を利用している。ただそれだけで、自然と、皆が同じ方向を向いているような "チーム感" が生まれているように思います。実際、Teams のチャネル内でのやり取りについては、例え自分に関係ないことであっても "把握しておかないと" となりますから」(小美野 貴博 氏)。

「私は Surface Pro を教育用 PC としても利用しています。Word、Power Point で作成した教材を教室でもそのまま利用できることは、シンプルに便利です。One Drive や Teams にアップすれば、他の先生にも簡単に共有できます。SSH の指定を受けてから確かに業務は増えましたが、ICT を活用することで問題なく対応できています。逆に言えば、この 1 年で Office 365 や Surface Pro は業務上欠かせないものになりましたね」(岡崎 和幸 氏)。

「チャネルにいる全員にとって必要な教材というのは数多くあります。これまでは個々に作っていましたが、今では Power Point Online で一緒に作成したり、生徒の成績分析を Excel Online で分業したりといった風に、共同作業の機会が増えました。体感的なものですが、1 つひとつの業務に要する時間や心象的なプレッシャーは大幅に削減されたと感じます」(竹村 藍 氏)。

  • 豊島岡女子学園高等学校 生徒部長 数学科 小美野 貴博 氏、教務部 情報システム委員会 主任 数学科 岡崎 和幸氏、体育科 竹村 藍氏

教職員のこうした言葉を受けて、十九浦 氏は、「先生方がチームになって『志力』を追求してくれていることを強く感じます。無理を強いるのではなく自然にこうした風土になったことは、大いに評価すべきでしょう。」と語りました。

"環境こそ我々が整備しましたが、導入後は先生方が自ら ICT の活用の幅を広げ ていってくれています。直感的にしたいことができる、説明しなくても広がっていく、こうした点は、Office 365 の大きなポイントだと思います。"

-十九浦 理孝 氏 : 教務部長
豊島岡女子学園高等学校

生徒に向けても Office 365 を展開していく

豊島岡では現在、教職員の業務環境だけでなく、生徒側の環境についても Office 365 を利用していくことが検討されています。根岸 氏は、「課題探究のプログラムでは、生徒と先生方との双方向のコミュニケーションが重要となります。対面だけでなく Office 365 でも生徒と向き合うことができる、そんな環境を用意していきたいと考えています。」と、この点を説明しました。

また、栗本 氏は、生徒にとって自らの学びを振り返る場となるポートフォリオ機能についても Office 365 には期待していると語ります。

「これから、生徒は、SSH の活動をはじめとして、様々な探究活動に取り組んでいきます。その際に、Office365 を利用することで、時間と空間を超えて他者とつながることができるようになっていきます。当然のことながら、広い視野や知識がなければ、深い学びに繋がりません。これらの活動を経ながら生徒はどんどん成長をしていきますから、生徒が自らその成長を把握するために、今後、ポートフォリオは重要なものになっていきます。Office365 はコラボレーションツールを豊富に備えているので、ポートフォリオを今以上に活用し、生徒の成長を加速せることが可能になると考えています」(栗本 氏)。

豊島岡では、創立から一貫して "才能を伸ばす教育" を掲げてきました。創立から 120 年以上が経過した今もこの教育は色褪せず、いっそう輝きを増しつつあります。同校を巣立った人材がこれからの未来を切り拓いていくことに期待が高まります。

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