現代のIT課題を解消する手立てとして、システム構築・運用の「自動化」は、その最たる手段といえるだろう。しかし、ここ数年来脚光を浴びる自動化ソリューションを導入しただけでは、自動化による「省力化」「効率化」といった“真の恩恵”を受けることができていない企業が多くあることもよく耳にするところ……。

本連載の第1回目となる今回は、日本電気株式会社(NEC)サービス&プラットフォームSI事業部のプロジェクトマネージャー 吉田 功一氏とともに、システム構築・運用の「自動化」による“真の恩恵”を受けるための考え方や視点の持ち方について、いま自動化がもてはやされるに至ったIT業界の変遷を背景に考察した。

DXの実現に向けて注目度が増す“自動化”

今後2025年にかけて、労働人口減少に伴う人的リソース不足や既存システムのブラックボックス化などにより、企業の情報システムが十分にビジネスをサポートできなくなるという「2025年の崖」問題が叫ばれている。その解決策として経済産業省では、ブラックボックスを解消するとともに既存システムを活用した本格的なDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することで、日本企業が“デジタル企業”へと変革することを提唱している。

企業がDXを実現するためのポイントとなるのが、システム構築・運用の自動化だ。これから人的リソースが急速に不足していくなかで、作業そのものを自動化することにより現場の負荷を軽減するというのは、あらゆる企業にとって急務であるからだ。

日本電気株式会社 サービス&プラットフォームSI事業部 プロジェクトマネージャー 吉田 功一氏

日本電気株式会社 サービス&プラットフォームSI事業部 プロジェクトマネージャー 吉田 功一氏

NEC サービス&プラットフォームSI事業部のプロジェクトマネージャー、吉田 功一氏は次のようにコメントする。「システム管理の世界では4、5年ほど前から『自動化』がキーワードとして取り上げられていました。まず自動化の前身として、使い切れないシステムリソースを数多く抱えることによりシステムの運用負荷が増大し続け、“ならばシステムリソースを仮想化してしまおう”という発想から『仮想化』の大きなブームが巻き起こりました。そしてひとたびシステムリソースを仮想化してみたところ、システム構築・運用に関わる作業がソフトウェア的に扱えることに気づくことになり、 “せっかく仮想化したのならシステム構築・運用に関する作業も自動化してしまおう”と、いつしかシステムリソースの無駄使いを解消するための仮想化ブームは、システム構築・運用の負荷を軽減するための自動化ブームへと流れを変えたのです」

これに加えて最近では、DXやクラウドネイティブの気運が高まり、貴重なエンジニアの人的リソースを、よりビジネスに直結した領域に集中し、それ以外の作業はコンピュータに肩代わりさせる動きも加速しているという。

「ITとビジネスの一体化が進んでいる証ともいえるでしょう。当初はシステム構築・運用の負荷を軽減することを目的とした、いわば “マイナスをゼロにする守りの自動化”だったのが、現在では、ITがスピーディーなサービス展開に追いつき、ビジネスの優位性を支えるという“ゼロをプラスにする攻めの自動化”へと、攻めのIT戦略の見地から自動化が取り入れられるようになっているのです。」(吉田氏)

  • 攻めの自動化

    仮想化から守りの自動化、そして攻めの自動化へ

仮想化が普及したことで、これまでコンフィグ記述やCUI作業を生業としてきたインフラエンジニアに求められるスキルも変化している。システムリソースが仮想化されるということは、インフラをソフトウェア的に扱えるようになるということでもある。そうなると、アプリケーションエンジニアはインフラ設定も行うようになる。逆に従来のインフラエンジニアにも、ソフトウェア的に扱うためのプログラミングスキルなどが必要となってくるのである。

「つまり、プログラミングスキルを備えたインフラエンジニアが求められる時代になったということです」(吉田氏)

空白の数年間でIT業界の技術トレンドが様変わり

吉田氏は、2000年代中頃にはIT業界に身を置いていたが、2009年から2013年にかけては当時のスマートフォン普及による爆発的な通信需要の伸びを支えるために、多くの仲間たちと共に絶え間ないシステム増強に奔走していた。そのため2013年頃に再びIT業界の技術トレンドに目を向ける余裕ができた頃には、自身が知っていた頃からの大きな変化に驚いたという。

「ほとんど浦島太郎状態でした(笑)。私が知っていた2000年代の企業ITの世界というのは、IT部門が自社のサービスとITとを繋ぐ役割を担っていて、そこからベンダーに依頼してシステムをつくってもらう、というスタイルがスタンダードでした。またOSS(オープンソースソフトウェア)といえば、せいぜいApacheぐらいしか受け入れられていませんでした。それが2013年頃に改めてIT業界の技術トレンドに目を向けてみると、仮想化技術やOSSが当たり前のように使われており、システムリソースも仮想化されてIaaSで提供される時代へと様変わりしていたのです」

ただし、「自動化」に関してはまだツールとしては存在していたものの、さほど関心を寄せられてはいなかった。それが2010年代後半にAnsibleなどの自動化ソフトウェアが台頭するにつれて、次第に注目を浴びるようになる。以降、単純に個々の作業を置き換えるだけの自動化から、自動化そのものをサービス化して連携し組織全体で活用する自動化に進化させることが、企業ITの世界における最重要トピックのひとつとなったのである。

「当初の自動化というのは、如何にして10時間かかっていたリリース作業を数分にまで短縮するかといった話ばかりでした。自分はSIerとして絶え間ないシステム増強を繰り返していましたので、プロジェクトの現場では10時間かかっているリリース作業よりも、要件をシステムに落とし込んでいくプロセスがアナログで非効率であることの方が課題であり、優先的に自動化すべき対象と考えていました」(吉田氏)

つまり問題は、システム構築・運用にまつわる情報やそれを扱う組織がサイロ化されてしまっていて、一元管理できていないことにあるのだという。「たとえば、あるサーバーの情報にしても、一箇所に書いておけば追加情報をそこに足していけばいいのです。当たり前のようですが、その当たり前ができているケースは稀で、どこでも“情報伝達ゲーム”が繰り広げられるのが現実です」と、吉田氏は話す。

  • システム構築・運用にまつわる情報やそれを扱う組織がサイロ化

    リリース作業が効率化される「狭義の自動化」

  • システム情報を一元管理

    情報の一元管理がもたらす「広義の自動化」

自動化にまつわる課題を解決するソリューション

このような自動化を取り巻く課題を解決すべくNECがOSS公開しているソフトウェアが「Exastro」である。「Exastro」は、システムライフサイクル(設計・開発・設定・運用)をデジタル化・自動化・省力化することを目的としたオープンソースのソフトウェアスイートであり、中でも「Exastro IT Automation」はシステム情報の一元管理に特化したソリューションを実現している。

「システム情報の一元管理さえできていれば、それを自動化ソフトウェアに連携して作業を自動化することは容易いのです。実際、『Exastro』を採用いただいているお客様からは『みなで情報を書き込み合って一元管理しておけば、要件をシステムに落とし込んでいくプロセスが楽になる』という喜びの声が寄せられています」と、吉田氏は強調する。

では、具体的に「Exastro」にはどのような機能があり、どう活用することでシステム構築・運用の自動化による真の恩恵を受けることができるのだろうか──? それは次回以降に詳しく紹介していきたい。また、同時に読者の方々の自動化に関する疑問や悩みにも回答していくので、ぜひ下記アンケートにご協力いただければと思う。

  • 日本電気株式会社 サービス&プラットフォームSI事業部 プロジェクトマネージャー 吉田 功一氏

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