労働人口の減少で人手不足が深刻化するなか、どのように人材を活用していくかが課題になっています。その課題に対して「人材サービスで人と企業そして社会の発展に貢献する」ことを目指しているのがヒューマンリソシアです。同社は、今後のビジネス展開や DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを見据え、オンプレミスの VMware 環境で稼働していた基幹システムをクラウドの VMware 環境へと移行させました。VMware 環境のクラウド移行にあたって採用したのがAzure VMware Solution(AVS)です。クラウド移行にはさまざまな選択肢があるなかでなぜ AVS を選択し、どのような効果を得ているのか、ヒューマンリソシアとパートナーとして支援したユニアデックスの担当者に話を伺いました。

「人材サービスで人と企業、そして社会の発展に貢献する」ことを目指し、DX の取り組みを推進

1985 年に創業し「為世為人」を綱領に掲げるヒューマングループの中核企業として、人材派遣・人材紹介・業務受託と 30 年以上にわたって総合人材サービスを提供してきたヒューマンリソシア。労働市場がめまぐるしく変化し、社会のニーズもその時々で大きく変化するなか、「人材サービスで人と企業、そして社会の発展に貢献する」ことを使命に総合人材カンパニーとして新たなサービスを生み出し続けています。ヒューマンリソシアの事業動向について、事業戦略推進本部 DX推進室 マネージャー 板倉 正 氏はこう話します。

  • ヒューマンリソシア株式会社 事業戦略推進本部 DX推進室 マネージャー 板倉 正 氏

    ヒューマンリソシア株式会社 事業戦略推進本部 DX推進室 マネージャー 板倉 正 氏

「労働人口の減少を受けて人手不足が深刻化しています。IT 業界でも人材不足が厳しくなるなか、弊社では、先端技術を身につけたエンジニアの派遣にも力を入れています。例えば、海外で先端技術を学習したエンジニアを国内に招き入れ、人手不足や先端技術の活用に悩む企業をサポートできる体制を整えつつあります。コロナ禍の入国制限が解除されるなか、採用・派遣が本格化している状況です。また、RPA や AI OCR、クラウドサービスといった業務改善にかかわるソリューションの提供も行っていますが、それらのニーズも拡大しています」(板倉 氏)。

板倉 氏はこれまでデジタルマーケティング領域で主に社外向けのデジタル施策を担当してきました。ただ、よりビジネスにインパクトのある施策を実施するには、デジタルマーケティングだけではなく、IT インフラを含めた改革が必要になってきたといいます。また、企業の人材採用が本格化することを受け、派遣事業を管理する基幹システムをアップデートしていく作業も重要になってきたと指摘します。

「派遣業務を中心に企業を支援するさまざまな仕組みをお客様にすばやく効率良く提供していくためには、基幹システムや社内の業務システムを、デジタル技術を活用して変革していくことが重要です。そこでこの数年の間は、社内の業務やシステムを対象にDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを加速させてきました。その一環として取り組んだのが、オンプレミスで稼働していたさまざまなシステムのクラウド移行です。パートナーであるユニアデックスのサポートを受け、オンプレミスで稼働していたVMwareベースのシステムをMicrosoft Azure(以下、Azure)へと移行させたのです」(板倉 氏)。

社内システムのクラウド移行で採用されたのが、VMware ベースのエンタープライズ ワークロードをAzure に再デプロイして拡張するためのサービスである Azure VMware Solution(以下、AVS)でした。

VMware ベースの基幹システムを Azure VMware Solution へ移行

AVS は、オンプレミスで稼働している VMware 仮想マシンやシステム構成を Azure 上にほぼそのままのかたちで移行できるサービスです。業務を停止せずにシステムを移行したり、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウド環境を構成してシステムを適材適所で利用したりすることも可能です。

ユニアデックスのサービスプロバイダ営業本部 塩崎 泰史 氏は、AVS を採用したクラウド移行のメリットについて、こう説明します。

  • ユニアデックス株式会社 サービスプロバイダ営業本部 サービスプロバイダ第四営業統括部 営業一部 第二グループ 塩崎 泰史 氏

    ユニアデックス株式会社 サービスプロバイダ営業本部 サービスプロバイダ第四営業統括部 営業一部 第二グループ 塩崎 泰史 氏

「AVS は、Azure のデータセンターから提供されるマイクロソフトのフルマネージドサービスです。VMware vSphere 環境をシームレスに移行できるだけでなく、Azure のサービスを活用した移行計画の立案やスムーズな仮想マシンのマイグレーションを行うことができます。また、ハードウェアや vSphere 実行基盤の保守メンテナンスを Azure 側に任せることができることも特徴です。実際、ユニアデックスが属するグループ会社でも 2021 年に 200 台以上の仮想マシンが稼働する社内向け仮想サーバー提供サービスの実行基盤を AVS に移行しましたが、運用管理の効率化やインフラ維持コストの削減など大きな効果をあげています」(塩崎 氏)。

ヒューマンリソシアが AVS を採用した大きな理由も、こうした大規模なシステム移行の実績やマネージドサービスによる安定的なシステム運用にあったといいます。

「移行の直接的なきっかけは 2017 年から稼働しているサーバーハードウェアのリプレースでした。Windows Server や Oracle Database を活用していましたが、ディスク容量の不足や CPU の割り当てが柔軟にできないことや、ハードウェア専任の運用担当者の設置が難しいこと、ネットワークも含めたインフラ維持コストが負担になっていたことが課題でした。そこで、既存のシステム資産を維持しながら、リソースの調達で高い柔軟性と拡張性を確保し、人材不足や運用コストに対応できることを要件に、VMware 環境のハードウェア増強や主要パブリッククラウドの VMware 環境を検討したのです。最終的にベストな選択肢となったのが、マイクロソフトのマネージドサービスとして提供され、豊富な実務経験を持つユニアデックスのサポートが受けられる AVS でした」(板倉 氏)。

ユニアデックス支援のもと、AVS への移行作業をわずか 2 カ月で完遂

AVS に移行した VMware 環境は、2 ノードで約 20 台の仮想マシンが稼働する環境です。派遣事業を行うための基幹システムとして、顧客管理、案件管理、スタッフ管理、契約管理、請求管理、給与管理などのサービスが稼働しています。サービスの中核データベースとして Oracle Database を採用しており、Oracle Database 自体はすでに Oracle Cloud 上へと移行済みという状況でした。仮想マシンのディスク容量は大きいもので 1 台で 2 TB に達していて、今後の運用を踏まえると 10 TB 程度は確保しておく必要があったといいます。

「法改正や商習慣の変化により、電子化された契約書などシステムで保存するべき情報が増え、システム上で確保するディスク容量も増えていました。AVS は、インスタンスサイズやディスク容量が当社の環境にマッチしていましたし、ネットワークサービス VMware NSX-T のファイアウォール機能や、閉域網サービス Azure ExpressRoute(以下、ExpressRoute)の安定性・安全性、障害時の自動フェイルオーバーの仕組みなど、少人数でシステムを運用している当社にとって心強い機能が提供されていました」(板倉 氏)。

移行プロジェクトはユニアデックスと共同で行い、技術面でサポートが必要な場合はヴイエムウェアやマイクソロフトが支援するという体制で進められました。AVS へのシステム移行のポイントについて、ユニアデックス クラウドビジネス本部の中浦 猛 氏はこう解説します。

  • ユニアデックス株式会社 クラウドビジネス本部 クラウドビジネス統括部 マルチプラットフォーム部 四課 中浦 猛 氏

    ユニアデックス株式会社 クラウドビジネス本部 クラウドビジネス統括部 マルチプラットフォーム部 四課 中浦 猛 氏

「ほかのサービスと比べて AVS が優れている点の 1 つに ExpressRoute の設定がシンプルでわかりやすい点が挙げられます。細かく設定をカスタマイズすることはできないのですが、逆にそのことがわかりやすく、移行にともなうトラブルを減らすことにつながっています。非常にスムーズに安全で安定したハイブリッドクラウド構成を構築することができます」(中浦 氏)。

実際、システム移行作業は 2022 年 4 月からスタートして、約 2 カ月後の 6 月半ばにはすべての作業を終えています。オンプレミスでのシステムアップグレードは計画ベースで半年かかるという見積もりもあり、この場合は約 3 分の 1 に短縮できたことになります。また、移行作業は、クラウド側での VMware 環境の構築、ネットワーク設定、システムイメージの移行、データの移行などとステップを踏んで進行しましたが、工数ベースでみると実際にかかった期間は実質 1 カ月程度だったといいます。

VMware NSX-T や VMware HCX に対する豊富な知見とノウハウを活用

AVS へのシステムやデータの移行では、ユニアデックスが培ってきた経験や AVS に備わる移行ツールが大きく役立ちました。仮想マシンやシステム構成を変えずに移行できることが AVS のメリットですが、実際には稼働環境のバージョンの違いやアプリケーションの互換性の問題、ビジネスへの影響度の問題などからさまざまな工夫やノウハウが必要になります。

「例えば、当社の環境では、直接仮想マシンを移行する V2V が使えないことがわかり、いつくかの移行方法を組み合わせる必要がありました。仮想マシンの移行方法には、OVF への変換、バックアップツールを使った移行、VMware HCX を使った移行などがあり、それぞれをどういうタイミングでどう利用するかユニアデックスが持つ知見を活用いただきました。特に、本番環境の移行の途中から採用した VMware HCX による移行は非常にスムーズで、HCX を使うことで移行作業を急ピッチで進めることができました」(板倉 氏)。

なかでもユニアデックスの持つ知見やノウハウが生きたのが、NSX-T や HCX を使った実際の移行作業です。中浦 氏はこう話します。

「NSX-T や HCX は実機を使った事前検証がしにくいこともあり、期間やコストを正確に見積もることが難しい場合が多いのです。NSX-T は豊富な機能を提供しているため、設計や実装によっては複雑になりやすい面があります。実際、他社に依頼したお客様から『プロジェクトが始まってから、当初の見積り通りに移行が進まず、工期が延びてしまった』という話もよく聞きます。ユニアデックスでは、これまでの大規模移行プロジェクトの経験とマイクロソフト、ヴイエムウェアとの密接なパートナーシップにより、NSX-T や HCX といった AVS の機能を最大限に活用した移行を支援することができます」(中浦 氏)。

移行の実作業を終え、2022 年 7 月下旬には本番環境への切り替えを実施しました。新しい環境が稼働したことにより、AVS への移行メリットを実際に確認できるようになっています。

「AVS への移行により、ディスクの容量不足が解消され、今後増え続けるデータに対してもリソースの拡張でスムーズに対応できるようになりました。また、これまではベンダー管理のため時間のかかっていたネットワーク構成などの変更も自前で対応できるようになり、システム管理の柔軟性が高まりました。また、今回の移行にあわせて監視のあり方も変更し、より少ない人員で効率良く監視できるようにしました」(板倉 氏)。

  • システム概要図

    システム概要図

AVS への移行により、DX に向けてビジネスを支えるシステム基盤を構築

移行による効果で特に大きいのが、限られた運用担当者でこれまでより大きなシステムを管理できるようになったことです。

「クラウド移行後は利用するインスタンスも増えていますが、自動フェイルオーバーや新しい監視の仕組みを使うことで、効率のよいインフラ管理が可能になっています。データベース管理を含めインフラの運用管理を従来の 3 分の 1 の人的リソースでまわすことができています」(板倉 氏)。

これは、インフラ管理の生産性が 3 倍超になったという言い方もできます。また、移行にともなうコスト削減効果も今後もさらに高まってくる見込みです。

「オンプレミス環境と比べ AVS のリソースは 2 倍以上大きくなっていますが、サーバーの維持コストは以前と変わりません。まだまだリソースの余力がある状態ですので、他のクラウド上で稼働しているサーバー群を AVS へ移行することで従来のサーバー維持コストを削減できる見込みです」(板倉 氏)。

AVS 移行による最大の効果としては、DX の実現に向けてビジネスを支えるシステム基盤を構築できたことを挙げます。

「今回移行した基幹システムは今後ユーザー数が 2 倍に増えても問題が起こらないだけのシステムリソースを配置することができました。以前と比べサーバー構築はより早く容易になったので、自社の DX を推進するシステムの開発が楽しみです」(板倉 氏)。

今回のプロジェクトにメンバーとして参加し、技術面から支援した日本マイクロソフト デジタルセールス事業本部 インテリジェントクラウド技術本部 クラウドソリューションアーキテクトの鮫島 忠文 氏は「ユーザー、パートナー、ベンダーそれぞれが当事者意識を持ち、みんなでゴールを目指していくという感覚を共有できたことが成功のポイントだと思っています。『AVS はフルマネージドサービスだからベンダー任せにする』というのではなく、AVS の特徴をうまく引き出しながら活用いただいています」と話します。

また、日本マイクロソフト デジタルセールス事業本部 クラウド導入推進本部 Digital Specialist の澤村 昭彦 氏も「ヒューマンリソシア様はAVS への移行をきっかけとして、DX や働き方改革をさらに推進されようとしています。マイクロソフトとしても、米国の開発エンジニアから日本の各領域の担当者が一体となってサポートしていきます」と続けます。

人材活用が社会課題になるなか、「人材サービスで社会に貢献する」ことを目指すヒューマンリソシアへの社会からの期待はより高まっています。ヒューマンリソシアの取り組みをユニアデックスと日本マイクロソフトが今後も支えていきます。

  • (左から)日本マイクロソフト 澤村 昭彦 氏、鮫島 忠文 氏、ヒューマンリソシア 板倉 正 氏、ユニアデックス 塩崎 泰史 氏、中浦 猛 氏

    (左から)日本マイクロソフト 澤村 昭彦 氏、鮫島 忠文 氏、ヒューマンリソシア 板倉 正 氏、ユニアデックス 塩崎 泰史 氏、中浦 猛 氏

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