ソーシャルソリューションカンパニーとして、国内外で事業を展開する株式会社パソナグループは、グループ内の従業員を対象とする DX 推進人材育成プログラム「リスキリング・イニシアティブ」を 2021 年に初めて実施しました。参加者は 6 カ月間で DX の基礎を学ぶとともに、社内の課題を解決する実践的なアプリ開発に取り組みました。このプログラムでは DX 実践のツールとして、データの収集から解析・予測、アプリ開発までをローコーディングで実現する Power Platform が採用されています。プログラム実施の結果、現場のニーズに即してボトムアップの視点で課題を解決しようというモチベーションが芽生え、今後の DX 加速に向けても効果的なインパクトがあったようです。
技術職と協働してデジタル活用を牽引できる人材育成を目指す
パソナグループは、「社会の問題点を解決する」を企業理念に掲げ、「人を活かす」ことをミッションにしています。同社は、働きたいと願う誰もが、才能・能力を最大限に発揮し、それぞれのライフスタイルにあわせた働き方で活躍することができるよう、多様な社会インフラを構築し、雇用創造を行ってきました。
一方、2019 年末頃に発生した新型コロナウイルス感染症の影響などによって、世の中の状況は刻一刻と変化しており、先が見通しづらい「VUCA」の時代と言われています。同社は、今後もグループの使命を果たしていくためにも、その変化に迅速に対応しながら、事業を継続させていく必要があると考え、その一つの施策が「DX」であると捉えています。
同社では、グループ全体の DX を加速させていくため、2024 年 5 月までに約 3,000 名の『DX人材』輩出を目指すグループ横断の DX 人材育成プログラム「パソナ・デジタル・アカデミー」を開始しています。プログラムごとのレベルに合わせて対象を分けながら、社員のデジタルスキルの獲得に加え、業務のデジタル化、生産性向上を実現し、まず一人ひとりのスキル・強みを最大限発揮できる働き方を推進したいと考えています。そして、自社だけでなく、デジタルと既存・新規のビジネスを組み合わせ、DX を推進することで、エキスパートスタッフ(派遣登録社員)や、顧客に新しいソリューションと価値を提供することを目指しています。
同社が描く DX 推進の姿を、グループDX統括本部 デジタル戦略部の酒井 恵 氏はこう説明します。
「エンジニアなど技術系職種の社員と協働しながら、グループの課題を正しく理解し、 適切な解決施策を考え、実行できる人材を 『DX人材』と位置づけています。この研修では、IT やデジタルに関する知識や、技術的なスキルを習得することはもちろんのこと、課題の把握・解決に向けた『知的探究心』や、『挑戦する姿勢』も身につけてほしいと考えています」(酒井 氏)。
「リスキリング・イニシアティブ」は、DX人材育成プログラムの一環として、これまで従業員一人ひとりが培ってきた強みを活かしながら、新たな職業能力を再開発し、デジタルを活用した施策のリーダーとしてイニシアティブを発揮できる人材育成を目的としています。職種・職位、年次、文系・理系等はいっさい問わず、DX 時代を見据え新しいスキルを身につけたいと考える社員を募りました。2021 年 1~6 月の第 1 期は、グループを横断して多様な部門から所属長の推薦を受けた 130 人の応募があり、そこから 40 人を選抜したといいます。
成果物としてのアプリ開発ツールに Power Platform を採用
6 カ月の期間のうち、前半 3 カ月は Microsoft Teams によるオンライン研修でデザインプロセス、プロジェクトマネジメント、ビジネスアナリシス、そして DX の基礎を学びます。月 2~3 日の平日 18~21 時に加えて、月 1 回土曜日も利用し、外部講師を招いて DX 推進のベースとなる思考方法やビジネス、テクノロジーのスキルを習得。後半 3 カ月は 4 人 1 組のチームで課題解決のテーマを設定し、アプリ開発をはじめとした DX の実践的な体験をしていきます。その過程で参加者との共創を深めることを目的に、ハッカソンと開発合宿なども実施。最終的には役員への成果発表会を行うというのが一連のプログラムです。
「参加者には新しいサービスを想定したアプリ開発に取り組んでもらうことで、最終的に顧客に提供するソリューションの選択肢の幅を広げていこうというのが計画の骨子です。開発されたアプリについては、PoC の結果次第でサービス化に向けた投資も実施します」と酒井 氏。修了した参加者には認定のデジタルバッジが授与されます。
この「リスキリング・イニシアティブ」において、DX を学び、実践するサポートツールとして採用されたのがマイクロソフトの Power Platform でした。Power Platform はローコードでの業務アプリ開発が可能な Power Apps、ワークフローを手軽に自動化できる Power Automate、データ解析を簡単に行える Power BI、チャットボットをノーコードで作成できる Power Virtual Agents で構成されたプラットフォームです。採用の理由として、酒井 氏はこう話します。
「ローコードでアプリを開発できるところがやはり最大のポイントです。このプログラムに参加する社員は基本的に文系出身の営業部門が多いため、デジタルの知識があまりない社員でもイメージしたアプリを手軽に作成できそうだという点にメリットを感じました。また、当社では Microsoft 365 環境が充実しており、加えてマイクロソフトのサポートがしっかりしている点にも安心感がありました」(酒井 氏)。
このほか、決められた時間以外の自学用ツールとして Microsoft Learn も活用。研修開始前のオリエンテーションでは、日本マイクロソフトの業務執行役員でエバンジェリストの西脇 資哲 氏が DX に取り組むにあたってのマインドなどについて講演を行い、参加者のモチベーションアップに役立てたといいます。
「自分でもアプリが作れる」という大きな気づきを得る
パソナグループが本社機能の一部移転を進める兵庫県・淡路島で勤務する株式会社パソナグループ マーケティングチーム チーム長の古谷 優介 氏は、同社が淡路島で展開する観光施設の集客・マーケティングを担当しています。古谷 氏は、「現在の業務とデジタル活用に強い親和性があると感じ、すぐに応募した」といいます。
また、株式会社パソナ パソナ・川崎で支店長を務める営業部門の静谷 直樹 氏は、現場で営業を担当する立場として「DX」はフックワードであり、より深く学ばなければと感じていました。「人材派遣というサービス自体はリアルシチュエーションを大切にするもので、パソナとしてもフェイス・トゥ・フェイスが強みですが、ウィズコロナ時代の営業活動でどうすれば新しい価値を提供できるかちょうど模索しているタイミングだったため、何かヒントを得られればとの思いで応募しました」と語ります。
また、株式会社パソナグループ 経営企画部でコーポレートガバナンス・コードへの対応や取締役会・経営会議等の運営を担う江良 遼介 氏は、グループの経営方針と DX が今後も密接に結びついていくと考え、DX を学べる「逃せないチャンス」と捉えて参加を決めました。
3 人揃って、プログラムに参加した感想の第一声は「参加して良かった」でした。古谷 氏は「研修は長期間に及びましたが、学びが多く、まったく苦に感じませんでした。研修で学んだ内容が翌日の業務ですぐに活かせるなど、実用的なスキルを身につけることができました。たとえば Power Automate でメール受信を契機とした業務フローの自動化を試し、自分にも簡単にできるんだと気づけたことは大きな成果でした。また、個人的には、普段関わりの少ないメンバーと研修を通じて、交流を深められたことも良かった点でした」と振り返ります。
古谷 氏はかねがね、淡路島で働く従業員が利用する社用バスの利便性向上を実現したいと考えていました。「バス自体はもちろん便利なのですが、時刻表が更新されたときや、バス遅延などが起きた際の情報共有の方法に改善の余地があると感じていました」。そこで今回はこの課題をアプリで解決することを提案しました。
ボトムアップ視点での課題解決に向け DX 推進のはずみに
静谷 氏も「座学と実践が組み合わされ、非常に学びの多い研修でした。グループ会社を含め立場が異なるメンバーと DX という一つのテーマで取り組み、一緒に課題を解決していったので、必然的に横串の連携がとれていくことも体感できました」と語ります。静谷 氏はチーム内に IT 部門所属の社員がいたこともあり、異動時などに行う PC 返却手続きを簡略化するアプリを開発しました。
「必ずしも人がやらなくてもいい仕事をデジタルでどう簡略化するかをずっと考えてきたため、手触り感とリアリティのあるアプリを開発したいとチーム内で話し合い、開発だけでなくその先の運用までを考えてテーマを選びました」と静谷 氏。今回の研修で「様々な手続きをデジタル化できるのではと考えるきっかけになりました」と話します。
そして江良 氏は、社員のコミュニティ活性化に向けてグルメ情報共有アプリを開発しました。「新入社員や若手社員のコミュニケーション不足解消に寄与するため、職場近くのランチやデザート情報を投稿できるアプリを作り、そこから交流が生まれればというイメージで取り組みました」。その他に追加したい機能もあったそうですが、「今回の研修を通じて、機能よりも直感的にわかりやすく、触ってみたくなるアプリを作ることの大切さを学びました。その観点では非常に満足のいくアプリを開発できました」と振り返ります。
Power Apps を使った開発について江良 氏は「PowerPoint のような感覚でデザインを作れるところはわかりやすかったです。ローコードとはいえ実際にコードを入力する作業はあるので、何度かつまずく場面もありましたが、その分アプリを作り上げる流れを理解できたと思います」と評価します。
静谷 氏は、マイクロソフトからヒントやアドバイスが適宜提供されたことで、苦労はしながらも最終的にアプリを形作ることができたと話します。マイクロソフトのサポートについては「前半のオンライン研修では、ゲーム感覚で楽しく学べる機会を作ってくれた」「参加者全員一人残さず理解できるよう初歩的な操作や設定に関して親身に対応してくれた」「Microsoft Learn もわかりやすく学べた」などと評価する声が 3 人から聞かれました。
「リスキリング・イニシアティブ」は、7 月から第 2 期に入っています。酒井 氏は「古谷や静谷のチームが提案したアプリは、実装化が進むなど、具体的な成果も少しずつ出てきています。DX の方法論を学べる機会を、これからも各部門・各会社に広げていければと思います」と評価しました。
今後に向けて、古谷 氏は「現場のニーズを解決するアプリは、トップダウンだけでなく、ボトムアップの視点でも生み出せます。アプリを自分自身で開発できることは、これまでになかったイノベーションにつながる。ボトムアップの DX を推進するうえで、Power Platform が果たす役割の大きさも実感しました」と語ります。
最後に、古谷 氏、静谷 氏、江良 氏の 3 人とも、現場でのさらなる業務効率化や新たな価値創出に向け、研修を受けたメンバーが DX の周知と推進役、いわばエバンジェリストになることの意義を聞かせてくれました。マイクロソフトもパソナグループの DX 推進に向け、さらなるサポートを進めていきます。
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