インテグレーテッド・ソリューション・プロバイダとして、臨床検査にかかわるすべての分野へ向けたソリューションを展開する、株式会社エイアンドティー。「医療の質の向上と、医療コストの削減に貢献する」という使命のもと事業を展開する同社は、医療業界へ向けたソリューション提供の継続性を向上すべく、2016 年に IT 基盤の刷新を実施しました。
限られた人的リソースでシステムの安定稼動を支えるためには、各システムの障害リスクを迅速に優先順位付けし対応することが求められます。ハイブリット クラウドを採った新たな IT 基盤では、Microsoft Operations Management Suite によって、その障害リスクの見える化を実現。事業継続を支えるための「安定したシステム稼動」に大きく貢献しています。
プロファイル
臨床検査情報システムや検体検査自動化システム、検体検査装置、臨床検査試薬など、臨床検査にかかわるソリューションを展開する株式会社エイアンドティー。同社は、医療向けの「インテグレーテッド・ソリューション・プロバイダ」として、医療に役立つしくみづくりや検査室改善のコンサルティングを行っています。
導入の背景とねらい
限られた人的リソースでシステムの安定稼動を支えるべく、IT 基盤の刷新を検討
臨床検査にかかわる C・A・C・L (Chemicals、Analyzers、Computers、LabLogistics) すべての分野を対象とした医療向けソリューションを展開する、株式会社エイアンドティー (以下、A&T)。「医療の質の向上と、医療コストの削減に貢献する」という使命のもと事業を展開する同社は、ハードウェアとソフトウェアの両面から、検査現場にある課題の解消を支援しています。
医療費の増大が社会問題となっている昨今、A&T が掲げる使命は非常に大きな意義を持つといえるでしょう。その遂行を継続すべく、同社は 2016 年に、IT 基盤の大幅な刷新を実施しました。
これまで同社は、仮想化サーバーで構築した IT 基盤をオンプレミス環境で運用していました。株式会社エイアンドティー 経営管理本部 ITマネジメントグループ リーダー 千葉 信行 氏は、同基盤を刷新した背景について、次のように説明します。
「ICT の発展は、従業員の業務効率やビジネス スピードに大きな好影響をもたらしました。しかし一方で、業務のほとんどがシステムに依存するという状況も引き起こしています。システム障害におけるビジネス リスクは増大の一途をたどっており、安定に稼動させねばならないというプレッシャーも増すばかりでした。本来であれば監視用のシステムを設け、正常値と稼働状況のリアルタイム比較やエラー予測のもと安定稼動を維持する必要がありますが、当社ではわずか 5 名のシステム部門で 500 名規模のクライアント サーバー環境を管理せねばならず、これまでの IT 基盤ではリソース上で限界があったのです。結果として、『何か問題が発生したら対応する』という後手対応の体制にならざるを得ず、それが事業の継続性を阻害するリスクとなっていました」(千葉 氏)。
同社のシステム部門では、インフラ、基幹系システム、顧客向けシステム、セキュリティの 4 つの領域を各担当者に振り分ける形でシステム管理を行っています。システムの安定稼動には、たとえば基幹系システム領域であれば DB をはじめとする各システムの稼動状況や性能、アベイラビリティなどの常時把握が必要です。また、セキュリティ領域であれば、脅威の発生源や攻撃数、脅威レベルの傾向などの把握が必要であり、これらの情報が常時見える化されたしくみのもと、各領域の担当者が先手の対応を講じることが求められます。
千葉 氏は、こうした稼動状況の見える化と、それに基づいた先手の対応の重要性について、次のように説明します。
「当然ながら、障害が発生した後の対応には膨大な工数を必要とします。よく『先手の対応やその検討は、システム部門の業務増になる』という話を耳にしますが、障害発生の絶対数が抑制できる点を考慮すれば、むしろ運用工数の最適化に寄与するといえるでしょう。こうした新たな運用フローの組み込みは、システム構成自体に大きくメスを入れる必要があり、高いモチベーションが必要となります。しかし当社では、先んじた対策が、結果的には先に触れたリソース最適化とビジネスの安定供給につながると考え、IT 基盤の根本的な見直しを検討することにしたのです」(千葉 氏)。
システム概要と導入の経緯、構築
信頼ある情報に基づくリスク レベルの見える化が、先手を打ったシステム管理に有効だった
2015 年 6 月より A&T が実施した IT 基盤の見直しは、主に 2 つの視点から推し進められました。1 つは、これまでデータセンターにあった物理環境からのシステム移行です。仮想化サーバーで構築した従来の IT 基盤では、同一ハードウェア上に複数システムが稼動しており、システム障害におけるビジネス リスクがどうしても大きくなります。また、ハードウェアの管理に多くの工数を要する従来環境のままでは、先手の対応へ向けたリソース確保も難しかったのです。
もう 1 つの視点は、IT 基盤全体の運用状況を、統合的かつ多角的に「見える化」するしくみの構築です。移行先の検討においてはクラウドの採用も視野に入っており、そこではシステムの置き場が複数にまたがることも推測されます。これらを統合的に管理でき、かつ各領域の担当者ごとで必要となる情報を多角的に見える化できるしくみが求められました。
この 2 つの視点のもと、A&T は、同社の IT 構築と運用を支援してきたエクイニクス・ジャパン株式会社 (以下、エクイニクス・ジャパン) とともに、次期 IT 基盤の検討を進行。2015 年 10 月に、Microsoft Azure を採用したハイブリット クラウド環境と、Microsoft Operations Management Suite (以下、OMS) による統合管理環境の構築を決定しました。
同ソリューションを採用した理由について、エクイニクス・ジャパン株式会社 営業本部 セールスエンジニアリング部 テクニカルマネジャー 橋本 利一 氏は、次のように説明します。
「限られた人的リソースを最大限活かすうえで、ハードウェア面の管理工数が削減できるパブリック クラウドの採用は必須だと考えました。しかし、システムの中にはどうしてもオンプレミスで運用を続けなければならないものが存在するため、すべてをクラウドへ移行することは困難だったのです。マイクロソフトが提供する OMS は、クラウド、オンプレミスの両環境を統合的に管理でき、優れた UI のもとでの高度な見える化が実現できます。さらに、OMS が備える Azure Site Recovery とハイブリッド クラウド ストレージである StorSimple を利用することで、オンプレミスに残すシステムの DR 対策も可能です。管理性の高いハイブリッド クラウド環境を目指すうえで、OMS と Azure の組み合わせは最適だと考えました」(橋本 氏)。
続けて千葉 氏は、検討過程で行われたシステム検証で感じた OMS への印象について、次のように振り返ります。
「システム管理においては、各システムの障害リスクを『いかに速やかに優先順位付けできるか』が重要になります。単に各システムの稼動状況が数値化されるだけでは、管理者自身がその数値の意味することを読み解き、対応策やその順序を検討せねばなりません。そこでは時間的なロスが生まれるでしょう。OMS ではポータル画面上から各システムの稼動状況が一覧でき、リスクのレベルについてもシステムごとに異なった観点からグラフィカルに表示されます。たとえばセキュリティであれば、マイクロソフト サイバー セキュリティ センターに蓄積された情報に基づいて、攻撃の危険度やその発生源が見える化できるのです。同様に、DB であれば性能や可用性が、ネットワークであればパケット ロスやレイテンシなどが、信頼ある情報に基づくリスクのレベルと併せて即時に把握できます。OMS は、管理上の意思決定を迅速化し、先手を打ったシステム管理を実践するうえで非常に有効だと感じ、採用を決定しました」(千葉 氏)。
A&T は、2016 年 1 月から 6 月にかけて、一部のファイル サーバーを除く全システムを対象として Azure 上でのシステム構築とデータ移行を実施。同年 7 月より、クラウドとオンプレミスの統合管理を実現した新たな IT 基盤の運用を開始しました。
新たな IT 基盤上では、Azure Virtual Machine をベースに 60 インスタンス以上のシステムが稼動している。IT 基盤の稼働状況はオンプレミス上のファイル サーバーも含めて、OMS によって統合的、かつ多角的に見える化され、管理されている |
導入ソフトウェアとサービス
Microsoft Azure
Microsoft Operations Management Suite
Power BI
導入メリット
Microsoft Azure を採ったハイブリッド クラウド環境を構築したことで、ハードウェアの管理工数が大きく削減できた
そこに割り当てていたリソースを Microsoft Operations Management Suite のもと有効活用し、システム稼動の安定性を大幅に向上
障害リスクのレベルを含む稼働状況の見える化によって、先手の対応を打ち出せるようになり、システム管理の工数が最適化できるようになった
見える化が生む気付きにより、システム管理の高次元化が期待できる
導入の効果
人的リソースの最適化により、システムの安定稼動を実現。見える化が生む気付きにより、システム管理の高次元化へも期待
ハイブリッド クラウドを採った新たな IT 基盤ではまず、ハードウェアの管理工数が大きく削減されました。千葉 氏は、これまでそこに割り当てていたリソースを OMS のもと有効活用することで、システム稼動の安定性が大幅に向上できたと笑顔で語ります。
「稼働状況はリスクのレベルとともに見える化されるため、インフラ、基幹系システム、顧客向けシステム、セキュリティ各領域の担当者は、それぞれが把握すべきシステムの稼働状況を 1 つの画面上で容易に管理できます。また、収集済みのログ データを活用することで、稼働状況をリアルタイムで監視するだけでなく、過去と比較した課題の検討も可能です。IT 基盤を刷新するまで、この規模のシステムをわずか 5 名で安定稼動し続けるのは難しいと考えていました。今まさにそれが実現できているのは、導入の大きな効果だと考えています」(千葉 氏)。
OMS では、デバイスを問わずあらゆる場所から稼動状況のモニタリングが可能。インフラ領域であれば OS とシステムのアップデート状況やネットワーク パフォーマンス、プロトコル解析などが基幹系システム領域であれば DB をはじめとした各システムの性能や冗長性、バッチ処理のジョブ状況などが色付けされたリスク状況とともに 1 つの画面上で把握でき、ドリル ダウンしていくことでより詳細な情報も確認できる |
少人数のシステム部門でシステムの安定稼動が担保できるようになった点に加え、今後、より高レベルなシステム管理が目指せるようになったことも、OMS を導入した大きな効果だと、千葉 氏は続けます。
「よりビジュアル化されたデータのもとでシステムを管理すべく、Power BI と連携して OMS を利用しています。このように見える化を重要視している理由は、それが『気付きのきっかけを生む』ことにあります。現在、定例会議は OMS と Power BI の画面をベースに進めていますが、そこでは先の気付きをきっかけに、『Azure Automation を活用してバッチ処理を自動化できないか』といった新たなアイデアが数多く生まれています。先に目的があってそこへの方法を検討するというプロセスも当然重要ですが、見える化から生まれるものの中には、目的ありきでは発生しないようなアイデアもあるのです。これは、システム管理の高次元化を目指すうえで非常に重要だと感じています」(千葉 氏)。
今後の展望
運用工数の最適化、柔軟性の向上など、あらゆる視点から IT 基盤の発展を目指す
IT 基盤の刷新により、事業継続を支える「安定したシステム稼動」を実現した、A&T。千葉 氏が語ったシステム管理の高次元化へ向け、同社はまず、IaaS ベースで稼動している現システムへの PaaS 採用を計画しています。
「運用工数を最適化する余地は、まだまだ残っていると考えています。たとえば認証基盤や DB、Web サーバーといったシステムは、Azure Active Directory、Azure SQL Database といった PaaS へ置き換えることも可能でしょう。そうすることで、仮想マシンの管理工数を削減することが可能です。OMS で現環境の状況を把握し、その結果から PaaS への置き換えが本当に可能かどうかを見定め、こういった取り組みを進めていきたいと考えています」(千葉 氏)。
A&T は現在、デプロイ モデルにクラシック環境 (ASM: Azure Service Management) を利用しています。これを、NIC や IP アドレスも個々の独立したリソースとして扱うことができるリソース マネージャー環境 (ARM: Azure Resource Manager) へ移行することで、システムの柔軟性についてもさらなる向上が期待できます。運用工数の最適化だけでなく、柔軟性を含むあらゆる視点から IT 基盤の発展を目指していくことを、同社は構想しています。
橋本 氏は終わりに、A&T の構想を支援する立場から、OMS へ向けた期待を述べます。
「OMS のポータル上では、管理対象の稼働状況を見える化するためのツールが順次追加されています。既に現在のポータル画面上にあるもので十分に網羅されているように感じるのですが、新たなツールが拡充されるたび、『ああ、この視点も必要だった』と驚いています。これは、運用管理をさらに高いレベルへと押し上げるきっかけになっており、マイクロソフトへは今後もこうした新たな気付きを生むための支援に期待したいです」(橋本 氏)。
インテグレーテッド・ソリューション・プロバイダという立場から、医療サービスの品質向上に貢献し続ける A&T。同社のソリューションは今後、マイクロソフトのプラットフォームのもと、医療現場へ向けてより安定的に供給され続けていきます。
ユーザー コメント
「よりビジュアル化されたデータのもとでシステムを管理すべく、Power BI と連携して OMS を利用しています。このように見える化を重要視している理由は、それが『気付きのきっかけを生む』ことにあります。現在、定例会議は OMS と Power BI の画面をベースに進めていますが、そこでは先の気付きをきっかけに、『Azure Automation を活用してバッチ処理を自動化できないか』といった新たなアイデアが数多く生まれています。先に目的があってそこへの方法を検討するというプロセスも当然重要ですが、見える化から生まれるものの中には、目的ありきでは発生しないようなアイデアもあるのです。これは、システム管理の高次元化を目指すうえで非常に重要だと感じています」
株式会社エイアンドティー
経営管理本部
ITマネジメントグループ
リーダー
千葉 信行 氏
パートナー企業
- エクイニクス・ジャパン株式会社
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