生成AIが仕事において業務効率を向上させたり、発想の手助けをしたりすることは、今や誰もが知るところとなった。しかしセキュリティや従業員のITリテラシーの懸念もあり、生成AI活用には慎重な企業も多い。安全に、かつ誰でも簡単に、業務に生成AIを活用するにはどうすればよいのか。その答えとなるのが、テラスカイが開発した"mitoco AI"だ。詳しい機能や活用方法について、テラスカイの山田誠氏と岩井哲郎氏に話を聞いた。

  • (写真)テラスカイの山田誠氏と岩井哲郎氏

    (左)株式会社テラスカイ 取締役 専務執行役員 製品事業ユニット長 山田誠氏
    (右)株式会社テラスカイ 企画開発本部 AI・LINE開発部長 岩井哲郎氏

実業務で生成AIを使う懸念点

大きな話題を巻き起こしたOpenAIのGPT-4のリリースから、1年が経った。英文の翻訳、類似研究のリサーチ、コードの生成、挿絵の作成など、さまざまな場面で生成AIは活用され始めている。

日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が実施した「デジタル社会における消費者意識調査2024」によれば、生成AIへの「期待」は不安を上回っている。動画が生成できるAIも登場し、誰もが"映画監督"になれる時代も近い。生成AIは、夢の実現を短縮化し、暮らしを豊かにしつつあるといえる。

一方で、企業における生成AI活用には不安が残っている。圧倒的に多いのが、情報漏洩などセキュリティの懸念だ。自社の重要データを生成AIに渡すリスクを考慮し、利用には厳格なルールを制定している企業も多い。

こうした状況において、セキュリティ面の不安を払拭しながら、生成AIとERPの連携を実現したのが、テラスカイの"mitoco AI"だ。「取引先リストを見せて」「地域別の売上高が知りたい」などとチャットに入力したり話しかけたりすれば、すぐにデータを示してくれる。必要な情報を可視化するにあたって、システム部門にレポーティングを依頼したり、ITベンダーに外注したりする必要はない。

セキュアに生成AIを活用できるmitoco AI

2006年に創業したテラスカイは、Salesforceをプラットフォームとするクラウドインテグレーション事業を中心に展開してきた。

同社の提供する"mitoco ERP"は、Salesforce上での顧客管理に加えて、販売管理・財務会計・グループウェア・ワークフロー・経費精算・勤怠管理といった機能を有する、統合型のSaaS ERPだ。Salesforceのプラットフォーム上にあるこうしたデータを基に、mitoco AIは経営層や部門長、現場担当者の質問に対して、すぐさま回答・報告することができる。

なぜ、情報漏洩の心配なく、そんなことが可能なのだろうか?

「生成AIにはデータを一切渡していないからです」と、株式会社テラスカイ 企画開発本部 AI・LINE開発部長 岩井哲郎氏は解説する。

「mitoco AIは、データ基盤としてのSalesforceと、生成AIであるAzure OpenAI Service、そしてサービスの"仲介役"であるオーケストレーターから成り立っています。

たとえば『月次の売上を見せて』と話しかけた場合、まずオーケストレーターが生成AIに、そのレポートを作成するためのSOQL構文(※)を作成させます。そして、その作成された構文をもとにSalesforceが処理を実行し、レポートとして表示するのです。顧客情報・個人情報・財務情報といったデータは生成AIに渡していません」(岩井氏)

※SOQL:Salesforce Object Query Language。Salesforceプラットフォーム上でデータを扱うためのクエリ言語

  • mitoco AI アーキテクチャ/システム構成

つまりmitoco AIは、生成AIに高速で「レポートの作り方」を生成させているのだ。そのため、機密情報を外部組織に渡すことなく自社データを可視化していくことが可能になっている。

しかも、mitoco AIは「取引先リストを見せて」と言うだけで、会社名だけでなく、売上高や業種、電話番号なども"気を利かせて"リストに加えてくれる。多少、言い回しが違っても問題ない。追加で頼みたい場合は「従業員数もお願い」と言うだけですぐに修正版が返ってくる。そして、新たにデータ項目が増えても、既存のレポートをすべて設計し直すような手間はかからない。

「Salesforceの運用に際しては、各社独自のカスタマイズをされていると思いますが、mitoco AIは事前に扱うデータにチェックを入れるだけで、生成AIがオブジェクト構造を理解し直して、適切な回答をしてくれるようになります。

また、mitoco AIには、単語の意味を登録したり個別にカスタマイズしたりする機能もあります。たとえば『CI』という略称を伝えただけで『クラウドインテグレーション事業部』と判断させたり、『佐藤さん』といえば一番よく連絡する『XX課の佐藤課長』のことだと理解させたりすることが可能です。Salesforceの操作に習熟せずとも、人間に話しかけるように質問するだけで、欲しい情報を閲覧し、深掘りすることができるようになるのです」(岩井氏)

話しかけるだけで、ビジネスに必要な情報が手に入る

Salesforceプラットフォーム上にある自社情報を、セキュリティを担保したまま、24時間いつでも気軽に把握できるサービス、mitoco AI。この画期的なサービスは、「エンジニアが生成AIを試していた結果生まれた」と、株式会社テラスカイ 取締役 専務執行役員 製品事業ユニット長 山田誠氏は笑みを見せる。

「岩井さんをはじめ、日本に20名しかいない(※2024年5月6日時点)最上位資格である"Salesforce認定テクニカルアーキテクト"が5名所属しているほど、Salesforceに長けているのが我々テラスカイです。GPT-4はSalesforceについてどれくらい知っているのか、エンジニアがさまざまな角度から試していたところ、意外なほどデータベース構造を理解していると気づき、『データを渡さずにSOQLを生成させる』というアイデアに至りました。とってもクールな発想だと思います。

まずは自社内で使い始めたのですが、あまりにも便利で、すぐさまmitoco AIとして製品化することにしました。私も日々使っていますが、喋るだけで欲しい情報があっという間に手に入るので、判断がとても迅速になっています」(山田氏)

  • (写真)mitoco AIについて語る山田誠氏

    株式会社テラスカイ 取締役 専務執行役員 製品事業ユニット長 山田誠氏

めまぐるしいスピードで市場が変わりゆく中、すべてのレポートをあらかじめ設計しておくことは難しい。しかし、mitoco AIならば、次々に沸く疑問にすぐ答えてくれる。

「mitoco AIを導入されているお客様は、事業部別の売上進捗を見たり、各営業担当者の行動を把握したりと、経営層やラインマネージャー中心に活用されています。しかしそれだけではなく、営業担当者が『全製造業のうち、首都圏で自社製品を導入していない会社リスト』を作成したり、経理担当者が『取引先未収金一覧』を作成したりと、さまざまな使い方が生まれつつあります。AIに問いを重ねていく方法だからこそ、新たなアイデアが浮かぶのだと思います。もちろん、閲覧できるデータは、Salesforceのアカウント設定されている権限の範囲内です」(山田氏)

ビジネスインテリジェンスの未来形

2024年4月9日にリリースされたmitoco AIは、今後もアップデートを重ねていく予定だ。

「今秋のバージョンからは、文書ファイルの検索に対応します。あらかじめ社内規程や製品マニュアル・契約書類を読み込ませておくことで、『自分の職位の場合、出張で日当はいくらもらえる?』『A社との契約の瑕疵担保期間はどのくらい?』『エラーコードXXXXはどういう対処が必要?』といったことを、mitoco AIが教えてくれるようになります。

また『今月クローズ予定の商談一覧を出して』など、定期的にチェックしたい情報については"お気に入り登録"すれば、いちいち言わずとも決まったタイミングでmitoco AIから報告してくれる、そんな機能も合わせて追加予定です」(岩井氏)

  • (写真)開発経緯を語る岩井哲郎氏

    株式会社テラスカイ 企画開発本部 AI・LINE開発部長 岩井哲郎氏

最後に山田氏は、企業における生成AI活用の未来について、次のように呼びかけた。

「mitoco AIは、カジュアルに話しかけるだけで、誰しもが使えるツールです。いずれは、生成AIを使っていると意識もせず利用できる製品に育てていきたいと考えていきます。企業が持つ膨大な情報は、AIに素早く取り出してもらうことによって、さらに有効活用できるようになることでしょう。今後は、BIツールを介さずとも、AIが直接レポーティングする時代になっていくと思います。そんな未来を、世に先駆けて一緒に作っていきましょう」(山田氏)

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