DXに取り組む企業にとって、データ活用によるイノベーションの推進は極めて重要度の高いミッションといえる。2024年5月27~28日にわたって開催されたオンラインセミナー「TECH+フォーラム データサイエンス 2024 May データ駆動型経営と変革の本質」では、データ駆動型経営を実践している企業や専門家が集結。データ活用の先進的な取り組みについて解説された。本稿では、株式会社シーイーシー 営業本部 首都圏営業部 エンタープライズセクション 濱 帆乃香 氏による講演「自社の未来を『データ活用』で切り拓く‐全社横断型のデータ集約・活用事例を解説‐」についてレポートする。

  • (写真)濱帆乃香氏

    株式会社シーイーシー 営業本部 首都圏営業部 エンタープライズセクション 濱 帆乃香 氏

業務の“デジタル化”は進めど、ビジネスモデルの“変革”は進まず──日本企業におけるDXの現状

1968年に創業し、独立系システムインテグレーターとしてICT産業の発展に寄与してきた株式会社シーイーシー。日本マイクロソフト株式会社と強力なパートナーシップを結び、Microsoft AzureやMicrosoft 365、Dynamics 365、Power Platformといったクラウドサービスを活用して、企業のDX実現を支援してきた。本セッションに登壇した同社 首都圏営業部の濱氏は日本企業におけるデータ活用の現状についてこう語る。

「調査機関によると、データ活用で全社的に十分な成果を得ている日本企業の割合は、2022年度で2.2%、2023年度で3%とのことです。データ活用の重要性が高まっているなかで、なぜ3%に留まっているのか、なぜ1年経っても微増しかしていない状況なのかについて、深掘りしていきたいと思います」(濱氏)

その根底には、日本企業のDXの取り組み領域が深く関わっていると濱氏。業務のデジタル化・最適化については積極的に取り組まれている一方、「トランスフォーメーション」、いわゆる業務変革においては、進展が見られない企業が多いと分析する。

「データを活用した“変革”、すなわちデータ駆動型経営の実現に向けた取り組みの進展が遅れる理由は複数あります。まずは変革を推進する人材が不足していることや変革を推進する組織の不在、さらにはデータ活用のゴールが明確に設定されていないことや、経営層のITへの見識不足などもあげられます。総じて現状の組織体制が課題となり、データ活用が進みにくい状況にあると考えています」(濱氏)

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それでは「デジタル」と「トランスフォーメーション」の両輪が加速し、データ活用が促進された場合、企業はどのようなメリットを享受できるのか。濱氏は次のように説明する。

「経験や勘に頼り、コストや効率性を重視した経営判断から、個人・部門・企業単体・グループ会社の枠を超えた横断型のデータ活用、すなわちデータに基づいた経営判断へと移行できると、ビジネスモデルは大きく変わります。企業はロイヤルカスタマーの獲得や顧客満足度の向上を実現でき、さらに市場も競争力が強化されて活性化するなど、売り手と買い手、そして社会の“三方良し”の状況が生まれます」(濱氏)

データ活用に不可欠なデータ収集・蓄積/分析フェーズで重視すべきポイントとは

セッション中盤では、企業がデータ活用に取り組んでいくうえでの障壁となる部分について話が展開された。データを活用するには、当然ながらデータを蓄積する必要があり、そのためにはデータを収集する仕組みを用意しなくてはならないと濱氏。「モビリティデータや決済/購入データなど、システム側で自動的に収集してくれるものから、自身で情報を入力する必要がある営業データやバックオフィスデータなど、収集すべきデータは多岐にわたります。データ収集のフェーズでは、人的作業が必要な部分の操作性やシステム間の連携などが重要になります」と話した。また、部門ごとで独立したシステムが乱立し、システム間の連携が分断されていることがデータ収集における“壁”と説明する。

さらに濱氏は、次のフェーズとなるデータの蓄積/分析では、収集したデータを多角的かつ新鮮な状態で動的に可視化するためのデータ活用基盤を構築する必要があると語り、データセキュリティを考慮して進めることが大切だと話を続ける。

「データの蓄積/分析フェーズでは、機密情報を含んだ大量のデータを扱うことになり、外部からのサイバー攻撃に対して堅牢な仕組みを構築しなければなりません。さらに社内でのデータ活用においても、人事部しか閲覧できないデータや、機密プロジェクトのデータなど、特定の部署、ないしはメンバー以外に見られては困るデータも多いため、細かなアクセス制限を設定できる仕組みも不可欠となります」(濱氏)

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このように、データ活用における障壁は高く、その道のりを長く感じる企業も多いと濱氏は語る。また、データの収集・加工・生成・蓄積といったプロセスをスムーズに回すことで、データを活用した事業運営、営業改革、新サービスの創出を実現できると解説。実際にデータ活用の観点で問題提起を行い、解決のためにプロジェクト化してデータ駆動型の経営、営業改革を実現した2つの事例が紹介された。

CASE1 医療機器メーカー

「ヘルスケア機器やサービスの製造・販売をグローバルで展開している医療機器メーカーでは、顧客を軸とした事業改革に着手し、部門間のデータ連携によるビジネスチャンスの拡大や、顧客との接点が多い営業担当者の業務効率化を掲げて取り組みを進めていました。ところが実際の現場では、各部門でシステムが乱立し、データの収集や分析を妨げる課題が山積された状況で、経営層と現場との隔たりは大きくありました。

そこで、全社横断型で全情報を一元管理するための『データドリブン型事業運営プロジェクト』を始動。現場で使ってもらうため、『操作性』『親和性』『定着性』の3つの観点でツール・ベンダーを選定して、分断されていたデータ活用環境を一元化し、データの可視化・自動化を実現しました。これにより営業部門の分析力・提案力が強化されるなど、確かな成果が得られているといいます」(濱氏)

濱氏は、「営業部門の情報整理からスタートし、マーケティングや保守/品質管理部門にも情報整備を拡大するなど、現場が積極的に関わる形でプロジェクトを進めたこと」を本事例のポイントとし、経営層、マネージャー、現場担当者すべてに有益な仕組みが構築できている事例だと説明する。

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CASE2 住宅設備機器メーカー

「給湯器領域で国内トップシェアの住宅設備機器メーカーでは、営業現場に課題を抱えていました。会社として目指すゴールは、営業担当者がデータをもとに行動し、蓄積したデータを活用して管理職がマネジメント、さらには戦略性を強化させるという、まさにデータ駆動型の営業活動だったのですが、実際の現場は完全にその逆。営業担当者の日々の活動情報は表計算ソフトや手帳で管理され、上司への報告、その後のコミュニケーションも個別のメールで済ませるといった状況でした。

そこで営業現場の行動を変えるための『データドリブン型営業改革プロジェクト』が始動。個人個人で所有しているデータの共有・可視化を皮切りに、紙文化の一掃を目指しました。毎日外回りを続けている営業担当者が利用する仕組みということで操作性を重視。利用者がストレスを感じることなくデータの登録、情報収集を促進できるように、メーラーやスケジューラーといったグループウェアとの連携を軸にツール選定を進めたといいます。 その結果、顧客の情報をキーとして、活動・案件・実績情報を紐付け、一元管理する新営業支援システムが構築され、特定部門でのトライアルを経て全国の営業部門に展開。営業行動がデータ駆動型に変わったことで、最終的に前年比1.5~2倍の売上を達成したといいます」(濱氏)

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営業活動におけるデータの収集・蓄積・分析・活用のサイクルをうまく回したことで、結果的に売上の向上を実現したと、濱氏は本事例を評価。「この企業の経営層からは、あらためてデータ駆動型の営業活動の重要性が認識できたという声をいただいています」と話す。

マイクロソフトが提供するクラウドサービスを採用して、システム間のデータ連携を強化

2つの事例を紹介した濱氏は、セッションのまとめとして「データ活用の課題解決における“最適解”」について言及。データの収集、蓄積/分析に関わる社内システムの連携を考慮することで、部門間でのデータ分断やセキュリティ面での懸念、きめ細かいアクセス制限といったデータ活用の壁を超えられると語り、講演を締めくくった。

「データを収集するための社内システムが密接に連携していれば、入力の負荷は大幅に軽減でき、そこから全社統一型の統合データベース上で動的に可視化・分析できるツールも活用することができます。それを実現できるのが、マイクロソフトが提供しているクラウドサービス群になります。すべてのマイクロソフトのクラウド基盤から提供されており、情報が分断されることなくデータを収集可能。セキュアな環境でデータを分析・活用でき、データ駆動型の事業経営、営業改革、さらには既存サービスの高付加価値化や新たなサービスの創出を後押ししてくれます。シーイーシーでは、マイクロソフトのソリューションに弊社独自のノウハウを加えて、お客様の業務改革を全方位で支援できるサービスを用意しています。データ活用に悩んでいるのならば、ぜひ弊社にご相談ください」(濱氏)

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