労務担当者は「孤独」だとよくいわれます。従業員の給与計算や開示前の人事情報を扱うため、同じ社内であっても仕事の話ができなかったり、相談相手がいなかったりするからです。

だからこそ、同じ労務経験者と話すことで共感できるところも多くあるのではないでしょうか。

ということで、今回は人事労務担当者向けにクラウドサービスを展開するマネーフォワードで、運用や導入支援を担当するカスタマーサクセス部メンバーによる座談会を実施。実は、マネーフォワードのカスタマーサクセス部は、人事労務経験者が多く在籍しています。本座談会では、孤独感や大変だった業務など、経験者だからこそ分かる人事労務の “あるある”を語っていただきました。

  • 集合写真①
座談会メンバー

株式会社マネーフォワード HRソリューション本部 カスタマーサクセス部 ミドルタッチグループ 野田 瑞穂さん

株式会社マネーフォワード HRソリューション本部 カスタマーサクセス部 ミドルタッチグループ 林 真由美さん

株式会社マネーフォワード HRソリューション本部 カスタマーサクセス部 コンテンツグループ 東 亜沙美さん

株式会社マネーフォワード HRソリューション本部 カスタマーサクセス部 ハイタッチグループ 林 優里さん

勤怠管理に年末調整……。何が一番つらい仕事だった?

──まず、皆さんの現在のお仕事と、これまでの人事労務キャリアについて教えていただけますか。

野田さん:カスタマーサクセス部 ミドルタッチグループで社員数50~200名のお客様を対象にマネーフォワード クラウドの導入支援を担当しています。マネーフォワードに入社する前は、医療介護に特化した2,000名規模の人材IT企業で人事労務を担当していました。メインは人事で、労務についても4~5人くらいのチームをマネジメントしていました。



東さん:カスタマーサクセス部 コンテンツグループに所属しています。導入支援を行っているグループをサポートするための資料やコンテンツを作成したり、ユーザー様向けのeラーニングの運用も行ったりしています。前職は外資系の製薬会社で、300名規模と800名規模のグループ2社の人事労務を5年ほど担当していました。それほどチームの人数も多くなかったので、人事労務以外に関する業務もいろいろと回ってきていました。



林(真)さん:カスタマーサクセス部 ミドルタッチグループに所属しています。前職では1,000名規模の金属メーカーで人事労務を6~7年ほど経験しました。勤怠管理や社会保険の手続き、給与計算などが主な業務でした。



林(優)さん:カスタマーサクセス部 ハイタッチグループで、社員201名以上の企業を対象に導入支援を行っています。これまでに2社経験しており、1社目は食品会社の人事総務部で600名くらいの工場の労務を担当しました。2社目は外資系IT企業で、新卒採用や教育を担当していました。



──今回は人事労務を経験してきた皆さんに、ぜひ“労務担当者あるある”なお話を聞かせていただければと思います。労務を担当していて大変だと思ったことはあるでしょうか。

野田さん: やっぱり人事評価や給与のようなセンシティブな情報を扱うので、ミスをしてはいけないというプレッシャーがすごかったですね。



全員: あるある!



東さん: 私がいた会社は給与計算を外部に委託していたんです。じゃあ私たちはラクになるのかというと、まったくそんなことはなくて。外部から戻ってきた数字が合っていなければ、それは労務担当である私たちの責任なんですよね。だから、ものすごく細かいチェックリストを作って、戻ってきた結果を全部チェックする作業を毎月やっていました。とにかく「間違えちゃいけない」というプレッシャーはすごかったです。



林(真)さん: 私は個人的に勤怠管理が苦痛でしたね。



全員: わかる!



林(真)さん: 複数の子会社も含めて勤怠管理を私が担当していたのですが、私が集計した勤怠データが最終的な給与にも直結するので、本当に正しいのかをチェックしないといけないんです。しかも異動が月に50人前後いることもあるので、間違えないように神経をすり減らしていました。



林(優)さん: 私も勤怠管理が大変でした。前の会社では勤怠を紙で管理していたこともあって、1ヶ月分の勤怠をタイムカードと突き合わせながら赤ペンでチェックしていくんです。それを600名分やらないといけなくて。



林(真)さん: それは大変ですね……!ただ、勤怠管理はすごく好きで、天職だって言う人もいるんですよね。



──林(優)さんの前の会社では勤怠管理はデジタル化されていなかったのですね。

林(優)さん: デジタル化が簡単ではない会社もまだ多いんです。たとえば私が勤めていた食品工場は駅から離れたところにあるので、パートさんたちはバスで来るんです。すると、大勢が急いで着替えて検温などのチェックをして一気に出勤することになります。このとき時間を間違えて入力したりするとその場で修正するのが大変だったりして、紙のタイムカードの方がむしろスムーズなんです。



東さん: 時間との戦いですね。そういう職場だと紙のメリットがまだ大きくて変えにくい部分はありますよね。私もマネーフォワードに入社してから、あらためて前職を振り返って、「なんて紙が多かったんだ!」って思いましたから。



野田さん: 紙で保管することを義務付けている法律もまだ多いですからね。



東さん: そうなんです!労働基準監督署に提出する書類をPDFで保管していたら、紙で保管してくださいっていわれて、何百人分もの書類を印刷したことがあります。



──ちなみにどの業務が一番大変だったのでしょうか。やはり勤怠管理?

東さん: うーん……年末調整かも。



全員: ああ~!



林(真)さん:たしかに年調は大変!



野田さん: あとは評価も!



全員: わかる!



東さん: 昇給の時期になるとプレッシャーで眠れなくなっていました。



野田さん: 調整する箇所が多すぎて最後の最後まで決まらなかったりして、評価業務は本当に大変でしたね。



  • 座談会の様子①_写真

「同じ会社なのに味方ではない」労務担当者が感じる孤独とは

──労務担当は「孤独」だといわれます。皆さんが孤独を感じたエピソードを教えてください。

野田さん: ミスしても指摘してくれる人がいない、という労務担当者は多いんじゃないかと思います。私もそうでした。センシティブな情報だけに他の人に相談するわけにもいかず、自分自身が真摯に向き合うしかないんです。厳密にやるときりがない中で、どこまでストイックにできるかというところは、終わりが見えず孤独できつい部分だったと思います。



東さん: 労務の仕事はミスしないことが当たり前と思われていて、ミスしなくても褒められることがないというのはつらい部分ですよね。しかも、私たちがミスしなくても、従業員がミスしているケースもありますから。たとえば残業をつけないようにわざと勤怠を間違えて提出する人もいます。そういう意味では、労務担当者って同じ会社なのに従業員が必ずしも味方ではないという寂しさはあるのかも。同僚というか、ある意味社員がお客様に近い存在なのかもしれません。前職でも上司に「あまり社員を丁寧に扱いすぎてはいけない」と言われたんですよね。



林(真)さん: わかります!会社の飲み会に行っても、同じ会社の社員なのに一歩引いている部分はありますよね。業務の内容的に同僚にも話せないことばかりなので、仕事の話が始まると参加できなくなってしまうんです。



林(優)さん: たしかに不用意に話せないですよね。1社目の食品工場のときは、パートやアルバイトの方が多かったのですが、皆さん色々な事情やバックグラウンドを持っているので、なおさら気をつけていました。自分たちにとっての当たり前が通用しないこともありますし。



東さん: あと、私は休職者のマネジメントやフォロー、産業医面談の対応なんかもしていたのですが、どうしても暗い話が多くなって、自分も気持ちが落ち込んでしまうことがよくありました。けっこう、引っ張られるタイプなんですよね……。



野田さん: それはつらいですね……。労務担当者は会社と従業員の間に立つ役割なので、どうしても両者の関係性が悪くなったときに矢面に立つことになりますからね。



つらい業務を乗り越えるためのストレス発散法

──ここまで人事労務担当としての苦労や孤独についてお聞きしてきましたが、そうしたストレスを皆さんがどのようにして乗り越えていたのかについても教えてください。

林(真)さん: 私はプライベートに仕事を絶対に持ち帰らないようにしていました。仕事が終わったらもう気持ちを切り替えて、プライベートのことを考えるようにしていましたね。



林(優)さん: 私は車通勤をしていて、通勤路の途中には何もないんです。なので、運転しながら思い切り叫んだりしていました(笑)。他には、何か資格を取ることで自信につながるかもと思い勉強をしたりしていましたね。経理とか衛生管理者とかExcelの教室とか。



東さん: たしかに仕事以外のことをやっている方が気分転換になりますよね。私も社労士の学校に通っていたことがありました。学校に行かなきゃいけないとなると、仕事もがんばって終わらせるし、メリハリも出ますよね。



野田さん: 私は……激務過ぎてプライベートの時間がとれず、それを当たり前と思っていたこともあって、ひたすら耐え忍んでいました……。強いて言えば読書はけっこうしていたと思います。頭のスイッチを切り替えることがやっぱり大事なんだと思います。



  • 座談会の様子②_写真

人事労務は大変だけど、キャリアを広げるフックになる仕事

――労務担当だった頃のエピソードをいろいろとお聞きしてきましたが、現在は皆さんカスタマーサクセスとして企業の労務担当者を支援する立場かと思います。これまでの労務経験を経て、今の仕事で心がけていることはありますか。

野田さん: 人事労務経験があるからこそ、客観的にどんな選択がベストなのかをお伝えしやすい立場だと思っています。それによって、お客様の会社の労務業務が少しでもよくなったらという想いで仕事をしています。



東さん: 私は現在コンテンツグループなのでお客様と接する機会は少ないのですが、コンテンツを作る際には今まで実務をやっていたからこそわかることを盛り込んで制作するようにしています。たとえば操作手順の説明にしても、単なる説明ではなく労務担当者の実務に沿ったわかりやすい説明ができると思います。自分自身の経験を落とし込んだコンテンツ制作を心がけていますね。



林(真)さん: 私が担当するお客様は、50名~200名規模の企業が中心ということもあり、いろいろな業務を全部まとめて担当している方が多いんです。だから、マネーフォワード クラウドを導入しても、なかなか時間をとれなくて設定も進まないもどかしさを抱えている方も多くて。私もその気持がよくわかるからこそ、お客様の気持ちに寄り添って伴走できるように意識しています。



林(優)さん: 私が担当するお客様は、201名以上の企業規模が中心のため、逆に担当がしっかり分業されていることも多くて、会社ごとにやり方もぜんぜん違ったりします。そんな中でこちら側が“わかってます感”を出しても逆効果なこともあるので、まずお客様の事情を探りつつ提案することを心がけています。



最後に、労務経験者・労務担当者を支援する立場として、人事労務担当者にメッセージやアドバイスをお願いします。

野田さん: 人事労務の仕事ってけっこう矮小化して見られがちです。でもそうではなくて、組織や経営、事業にインパクトを与えられるポジションだと思っています。目の前の仕事にしっかり真摯に向き合うことで見えてくる世界もありますし、その意味では将来的にキャリアの幅を広げるフックにしやすい仕事だと思います。そこはぜひ自信を持っていただきたいです。



東さん: 私自身、転職して気づいたのですが、人事労務の経験ってどの業種、どの会社に行っても役立つものなんですよね。人事労務で培ったスキルはきっとこれからのキャリアに生きてくるはずです。



林(真)さん: 人事労務の仕事をしていて、漠然と「このままでいいのかな」という不安を感じることもあると思います。でも、野田さんや東さんが言ったように、この経験や知識はその後どういうキャリアを選んだとしても価値があるものなんです。また、経営層と近い関係で仕事ができることも、他の職種にはないメリットだと思います。もちろん、しんどいときもありますが、前向きに捉えていってほしいと思います。



林(優)さん: これまでのやり方を変えるのは大変なことだと思います。ただ、人事労務のお仕事が少しでも効率化できれば、もっと大事な本来の業務に力を注げるようになるはずです。私たちはそのためのご支援を少しでもできればと思っています。



[PR]提供:マネーフォワード