コロナ禍によって浸透したテレワークは働き方に新しい可能性を提示した一方で、オフィスワークの重要性を再確認する機会にもなった。オフィス回帰への揺り戻しも起こりつつある中で、企業はこれからの働き方を模索している。

このような状況の中、NTTデータは2023年5月10~12日に開催された「第11回 働き方改革EXPO 春」に「BizXaaS Office」シリーズ、オフィスソリューション「ICT Work Site」などを出展した。本稿では、同社のファシリティマネジメント事業部 上田康一氏、デジタルビジネスソリューション事業部 遠藤由則氏に出展意図と反響について伺ってみたい。

企業が模索するアフターコロナの働き方

「コロナが明け出社が戻りつつあるなかで、企業はさまざまな課題を抱えています。社員のエンゲージメントを下げることなく、生産性を高める働き方を目指す上で、どのような落とし所があるのか各社が模索している状況です。今回の出展は、その選択肢を提示することを目的としています」(遠藤氏)

デジタルビジネスソリューション事業部の遠藤由則氏は、働き方改革EXPOへの出展意図についてこのように説明した上で、環境整備の重要性を強調する。

「従来は企業側が画一的な価値観を提示し、それに合わせられる人が生き残れました。しかし人材獲得競争が激化するいまは、従業員が第一であり、これまでのようなやり方では立ち行きません。異なる価値観を持つ個人がそれぞれ能力を最大限に引き出せるよう、環境を整備していく必要があるでしょう」(遠藤氏)

従業員の生産性をどうやって引き出すのか。労働環境の舵取りは企業の大きな課題と言えるだろう。だがそれと同時にコミュニケーション、マネジメント課題を何らかの形で解決していかなければならない。

いま企業に求められているのはテクノロジーの導入のみならず、制度やカルチャーにまで踏み込んだ変化と言えそうだ。もちろん、その中身はバリエーションがあって然るべきであり、働き方も必要な技術も企業ごとに異なる。

ファシリティマネジメント事業部の上田康一氏は、今回の出展のコンセプトが「Work Re:Invention™ (= 働くことの再定義)」であると前置きしたうえで、次のように続ける

「今回はリアルとデジタルの融合をサブテーマとしています。そして、その中の1つがオフィス提供ソリューションです。未来の働き方のひとつの解として、分散化されたワークプレイス、従業員をデジタルでつなぎ合わせる提案を行いました」(上田氏)

テレワークの課題解消を目指すBXOの新プロダクト

デジタルビジネスソリューション事業部は、働き方改革とセキュリティ対策の両立を支援するクラウドサービス「BizXaaS Office®(以下、BXO)」シリーズにおいて、新サービス「BXO Hybrid Workspace for Employee Experience(BHWE)」の提供を2023年4月より開始している。

働き方改革EXPOでは、このBHWEを実現する要素を「BXO Cross Reality(XR)」「BXO Personal Assistant(PA)」「BXO Well-being」という3つのカテゴリーに分け、プロダクトが展示された。いずれもテレワークの課題を補い、リアル空間に集うオフィスワークを代替するためのプロダクトだ。

BXO XRでは、メタバース空間でのコミュニケーションを実現するVRソリューションを紹介。VR技術を用いたバーチャルオフィスでの共働を目指しており、物理的に離れているという課題の解消を図るプロダクトだ。実際に装着し体験してみると、チャットをベースとした従来のリモートワークに比べ相手の実在感が強く、ネットワークを介しながらも同じ空間を共有している実感を得られた。

  • VR空間でコミュニケーション

バーチャルオフィスは海辺や足湯、シミュレーションゲームのような空間などユニークな環境が複数用意されており、VR空間自体がコミュニケーションのきっかけになるような工夫も感じられる。また、登録した顔写真データをアバターに投影し、発話に応じて表情が変わるといった技術も活用されており、バーチャル空間での自然なコミュニケーションを実現している。

今回の展示の中でも特に注目を集めたのは、このBXO XRのようだ。

「BXO XRの展示には多くの人が足を止めてくれました。もちろん、VRはまだゲーム感覚で、日常使いできるレベルには達していないと判断する方も多いです。日常的にヘッドセットを装着して仕事をする姿はなかなか想像がつかないのでしょう。ですが、『将来的にはこういう世界になっていくのかな?』というイメージをみなさんに持っていただけたようです。それが3年後なのか10年後なのか。想定はバラバラだと思いますが、未来の働き方を提案するという目的は果たせたのではないかと思います」(遠藤氏)

BXO PAでは、社内のヒューマンリソース、ドキュメント・データ、システムやアプリの稼働状況を可視化・管理するプロダクト「knowler」を展示。こちらはユーザーの意図を読み取り、人材や資料といったあらゆる情報を探し出してくれるソリューションだ。クラウドサービスや社内システムと連携して情報を収集でき、AIよる分類や意味づけも可能。効率的な情報収集により、生産性の向上を図ることができそうだ。

BXO Well-beingでは、キーボードやマウス、アプリやカメラの使い方から働き方を可視化する「Qasee」と、従業員の発話データからメンタル状態を数値化する「MIMOSYS」を展示。ネットワーク越しのやり取りがメインになるほど「部下の様子・異変を察する」のは難しくなるが、「MIMOSYS」があれば声色から健康状態を数値化できるようになる。従業員の健康管理やメンタルヘルスの早期発見につながる可能性を感じられた。

  • MIMOSYS操作画面

「展示会の反応をみると、やはりこれからのオフィスのあり方を収集しにきた方が多かったと感じます。ここ数年コミュニケーションの課題は続いており、コロナ禍では休職者・退職者も増えたという話も耳にします。多くの方がその解決策を探されているのではないでしょうか」(遠藤氏)

映像だけで人物と位置を特定できるカメラプレゼンスシステム

オフィスソリューション「ICT Work Site®」を提供するファシリティマネジメント事業部は、実証実験中の「カメラプレゼンスシステム」のデモンストレーション展示を行った。これは、“誰”がオフィスの“どこ”にいるのかを画面上で表現するシステムで、オフィス内のコミュニケーション円滑化と生産性向上を目指すものだ。

ビーコンやRFIDタグ、QRコードを利用した同様のシステムはすでに前例がある。こういった既存システムとの大きな違いは、カメラに映った情報から人物と肩書き、位置を特定できるという点。特別なセンシングデバイスは必要なく、カメラに写ってさえいればその人物が誰なのか識別し、画面上に所属部署や役職などのプロフィールを表示させることができる。

「デモを行ったところ、コミュニケーションのきっかけ作りに役立つという反響がありました。相手がどんな人なのか、プロフィールを把握した上で会話を始められますから、心理的なハードルは低くなると思います。まだ人脈を築けていない新入社員や中途社員に有効という声が大きかったです」(上田氏)

また人物の情報だけでなく、施設の利用状況が可視化できるという点でも注目を集めた。

「誰がどの席、どのエリアにいたことの履歴がわかりますので、オフィスのレイアウト変更にも活かせます。今回のデモではクローズアップしていませんでしたが、機能・性能からこういったユースケースを想定される方も多く来場されたみなさんの意識の高さが伺えました」(上田氏)

「カメラプレゼンスシステム」は周辺ツールとの連携も強みのひとつ。技術的には、その人のスケジュール、席や会議室の予約、オンライン会議の予定、さらにバイタルチェックや電力消費状況などの連携も可能だ。

「周辺ツールとの連携には『人や時間、場所のアサインをシステムが自動で設定してくれるようになればいいね』と多数の共感をいただきました。BXO XRと連携すれば存在感を表現できますし、バイタル情報を持てばマネジメントでも活用できるでしょう。二次元マップで場所を表現し、没入感のあるVRでコミュニケーションを行えれば、まさにデジタルとリアルが融合した未来の働き方と言えるでしょう」

リアルとデジタルの融合を目指すNTTデータ

人々はすでにテレワークという働き方を体験し、企業、従業員ともにそのメリットを実感している。世の中全体がオフィスへ100%回帰することはないはずだ。テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワークが求められている中で、NTTデータは新しい時代の働き方の提示を続けている。

「まずはBXO XR、BXO PA、BXO Well-beingという3つのカテゴリーにおいて、サービスラインナップを拡大させ、お客さまの課題解決に貢献していきたいと考えています。単独販売だけでなく、お客さまの働き方も含めてコンサルを行い、NTTデータとして一元的に提供していきます。当社はリアルとデジタルの融合を謳っていますが、まだまだ示しきれていないのも事実です。出社への揺り戻しが進む中で、真のハイブリッドワークの在り方を我々が創造、体現しながら、新しい働き方を実践し、お客さまに提示していきたいと思います」(遠藤氏)

「カメラプレゼンスシステムは、人物を識別する精度をもっと向上させる必要があります。2023年度内のリリースを目指し、さらなる検証を重ねる予定です。今後は、デジタルビジネスソリューション事業部との連携も今以上に密にした上で、他社の既存バーチャルオフィスソリューションとの連携も考えられます。リアルとデジタルの融合が当社の提供するバリューですので、これからも展示会などを通して情報発信を続けていきたいですね」(上田氏)

  • (左)株式会社NTTデータ ソリューション事業本部 ファシリティマネジメント事業部 ワークプレイスイノベータ 上田康一氏
    (右)株式会社NTTデータ ソリューション事業本部 デジタルビジネスソリューション事業部 統括部長 遠藤由則氏

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BizXaaS Office(BXO)は、「働き方改革とセキュリティ対策の両立」を支援するオファリングとして、お客様にとって、働き方の最適解を実現する「デジタルワークスペース」の提供を目指します。
「BizXaaS Office」および「BXO」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
「Work Re:Invention」は日本国内における株式会社NTTデータの商標です。
その他記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。

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