日立システムズは、幅広い規模・業種にわたる業務システムの構築に加え、データセンター、ネットワークやセキュリティの運用・監視センター、コンタクトセンター、全国約300カ所のサービス拠点といった多彩なサービスインフラを生かしたシステム運用・監視・保守を強みとするITサービス企業だ。そんな同社で石榑(いしぐれ)太一氏は、ブロックチェーンを通じて、経営課題や社会課題の解決に挑んでいる。入社後、金融機関向けシステムの設計・開発経験を経て、「ブロックチェーンのスペシャリスト」に至るまでのストーリーを紹介しよう。
石榑太一氏
金融事業グループ 金融DX事業部 第一本部 プラットフォームサービス部 第二グループ
2012年入社。金融機関向けシステム、サービスのシステムエンジニアとして、地方銀行、信用金庫、信用組合の為替業務システムの導入に携わる。2015年からは「Finnova為替イメージ処理システム BPOサービス」の立ち上げに尽力し、2022年11月現在16行が導入するサービスへと育てる。2019年からは日立製作所に出向し、ブロックチェーンを活用したサービス、ソリューションの研究開発に従事。オープンソースのブロックチェーンプラットフォーム「Hyperledger Foundation」に開発したサンプルコードの寄贈に関わるなど、ブロックチェーンの普及に向けて大きく貢献する。2021年日立システムズに帰任後も、ブロックチェーンの研究開発に取り組んでいる。
ブロックチェーンの社会実装を推進する石榑氏の取り組み
「ブロックチェーンを世の中に普及させて、経営課題や社会課題を解決したい」
そう語る石榑太一氏は、日立システムズの優れたブロックチェーン技術者の一人として、ブロックチェーンを活用したソリューションの開発や、企業との協創プロジェクトを推進している。彼が現在に至るまでのキャリアストーリーを紹介しよう。
はじめに、ブロックチェーンについて簡単に説明したい。ブロックチェーンは、仮想通貨「ビットコイン」の運用を支える技術として活用がスタートした。ブロックチェーンは、特定の管理者を介さず、オープンに公正な取引を行うことができ、障害に強く、改ざんが極めて難しい、などの特長を持つ。これらの特長を生かして、ブロックチェーンを仮想通貨以外の用途に活用する動きが進んでいる。
背景には、社会におけるデジタルシフトの目覚ましい進展がある。企業や組織がたくさん保有するようになったさまざまなデータを、オープンかつ公正に相互補完することで、新たな価値の創出や社会課題の解決が実現できるのではないか。そうした期待から、さまざまな分野でブロックチェーンの活用が進められている。
日立グループも、社会の仕組みを大きく変える技術としてブロックチェーンに注目し、研究開発を進めてきた。自治体、製造、流通、金融、不動産、情報サービスなど、さまざまな企業との協創により、ブロックチェーンの社会実装に向けた実証実験を積極的に行っている。
この取り組みを推進する技術者の一人が石榑氏である。彼は2012年に日立システムズに入社すると、金融機関向けシステムのシステムエンジニアとして、主に地方銀行、信用金庫、信用組合といったクライアント向けに、為替業務を効率化するシステムの開発に従事してきた。
この時に成し遂げた大きな成果の一つに、「Finnova 為替イメージ処理システム BPOサービス」の立ち上げがある。石榑氏はBPOサービスの立ち上げプロジェクトのメンバーとして、顧客ニーズのヒアリング、サービス内容の策定、業務フローの構築などに奔走した。システムエンジニアとして、これまでに培ってきたスキルをフルに発揮して立ち上げたBPOサービスは、人手不足に悩む金融機関のビジネスニーズをうまく捉え、2022年11月現在、16行が導入するサービスへと大きく成長している。
そんな石榑氏が、現在のキャリアにつながるターニングポイントを迎えたのは入社7年目の時だ。これまでの実績、スキルが高く評価され、日立製作所が推進する、ブロックチェーンを活用したサービス、ソリューションの開発メンバーに抜擢された。上司からの「そろそろ新しいことをやってみないか?」の一言に、石榑氏のモチベーションは大いに喚起された。
日立製作所は、Linux Foundationが主宰する、エンタープライズグレードのブロックチェーン技術のためのオープンなグローバルエコシステムである「Hyperledger Foundation」に設立当初からプレミアメンバーとして参加している。この「Hyperledger Foundation」のエンタープライズ向けのブロックチェーン基盤「Hyperledger Fabric」を、ビジネスに活用するために必要な整備を行うのが石榑氏に期待された役割だった。
日立製作所に出向すると、彼は早速ブロックチェーン漬けの毎日を過ごすことになった。「Hyperledger Fabric」のソースコードをくまなく解析し、英語でやり取りされるコミュニティの過去ログを読み漁り、自身でも開発作業を行いながら「Hyperledger Fabric」の理解に努めた。少しずつ自分の思い通りに動いていくアプリケーションの開発は「とにかく楽しかった」と石榑氏は振り返る。
石榑氏も参画した推進チームの尽力により、「Hyperledger Fabric」に関する知識、ノウハウは、開発標準としてまとめられた。開発環境、開発プロセス、設計書テンプレートなどの整備が進み、ブロックチェーンを活用したサービスやシステムの開発プロジェクトを効率的に推進できるようになった。
次に石榑氏が取り組んだのは、トークンフレームワークの設計・開発だ。トークンとは、ブロックチェーンを用いて、ある発行主体が取引相手に交付するデジタル通貨、デジタル債券、ポイントといった資産の所有権や、その利用権のデータのことを言う。
近年、地域振興のために、その地域でしか使えない地域限定デジタル通貨や、ファンビジネスにおいて、ファンのロイヤリティを高めるためのファンコミュニティ限定デジタル通貨を発行する事例が増えている。石榑氏が開発に取り組んだトークンフレームワークとは、「Hyperledger Fabric」において、このようなトークンを簡単に発行できるよう、必要な機能をライブラリー化したものだ。 設計・開発にあたって石榑氏は、フレームワークが実際の業務にすぐに適用できるよう、通貨、債券、所有権管理など、トークンの種類に応じて複数のライブラリーをフレームワークに用意した。これにより、開発期間やコストを抑えながら、ニーズに合ったトークンを柔軟にリリースできる体制が整った。
完成したサンプルコードは、オープンソースソフトウェアの思想に則り、「Hyperledger Foundation」のコミュニティに寄贈され、誰でも無償で使用することができる。このことが話題となり、日立製作所はブロックチェーンに関する新たな引き合いを多数獲得することができた。石榑氏をはじめとする開発メンバーの尽力により、日立製作所のブロックチェーンに関する技術力、知見は確実に深まっていった。
ブロックチェーンが実現する未来について、石榑氏はこう話す。
「例えば、引っ越しを想像してみてください。引っ越しをすると、自治体への転出・転入届け、電気やガスの使用停止・使用開始の手続き、クレジットカードや保険の住所変更など、わずらわしい手続きがたくさん発生します。もし仮に、ブロックチェーンを用いて、自治体や電気会社、ガス会社など、関係する企業・組織間のデータを連携させることができれば、すべての手続きを一回で済ませることも可能です。このように、ブロックチェーンは世の中の仕組みを大きく変える可能性を秘めています」
ブロックチェーンが今後社会に広がっていくためには、この引っ越しの事例のようなユースケースの開発がカギと石榑氏は話す。しかし、異なる業界をつなぎ、新たな価値をもたらすユースケースを開発するには、ブロックチェーン技術に精通しているのはもちろんのこと、社会全体を俯瞰する視点を持ち、さまざまな業界のドメインナレッジにも通じている必要がある。
難易度の高い仕事ではあるが、日立システムズは、幅広い顧客基盤を持ち、さまざまな業種・業界に特有の経営課題や、社会課題をキャッチできる立場にある。さらに、日立システムズはさまざまな分野に精通した技術者を擁しており、データセンターや300カ所を超えるサービス拠点などのインフラも充実している。ブロックチェーンのユースケースを開発するには絶好の環境と言える。この恵まれた環境を生かして、石榑氏はユースケースの開発に全力で取り組んでいく。
プライベートでは一児の父でもある石榑氏。仕事は基本的に在宅勤務であるため、幼い子どもの面倒も見やすく、仕事に集中できている。ブロックチェーンによって実現する、創造的で豊かな未来が、子どもたちの世代にも多くの恩恵をもたらすことを夢見ながら、石榑氏はこれからも挑戦を続けていく。
石榑氏のミッションとは
■日立システムズ独自のブロックチェーン関連サービスの立ち上げ
日立システムズでは現在、独自のブロックチェーン関連サービスの提供に向けて、顧客ニーズの把握や研究開発に取り組んでいる。石榑氏は、ブロックチェーンに精通した技術者の一人として、これからも研究開発を続け、ブロックチェーン関連サービスの早期立ち上げに貢献していく。
■社外に向けたブロックチェーンの普及啓発活動
石榑氏は、日立システムズの優れたブロックチェーン技術者の一人として、日立製作所が主催するイベント「Hitachi Social Innovation Forum」において、社外向け展示発表のパネラーとして参加した経験を持つ。この経験を生かし、今後も自身のナレッジを積極的に社外に発信することで、ブロックチェーンの普及啓発活動に取り組んでいく。
■後進ブロックチェーン技術者の育成
現在日立システムズでは、石榑氏以外にもブロックチェーンに精通した技術者を社内に育成しようとする動きが進んでいる。石榑氏は、自身がこれまでに培ってきたブロックチェーンに関する技術、ノウハウを積極的に後進技術者に共有することで、ブロックチェーン技術者の育成にも取り組んでいく。
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※本内容は2022年3月時点の情報です。本コンテンツに記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。
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