企業がDXの取り組みを推進している背景には、労働人口の減少や事業環境の変化といった「社会」の変容、デジタル「技術」の進歩、そして「行政」面では経済産業省によるデジタルガバナンス・コードやDX銘柄の運用といった施策が事情としてある。
多くの企業がDXの必要性を認識している中、いかにして体制を整えていくのかは大きな課題だ。DX組織のあり方にはさまざまなパターンがあるが、これは企業の課題やカルチャーによって変わってくるところだろう。
ただしIPAの調査によれば、「DX専門組織+情報部門」という体制が最も高い水準の成果を生み出せているという※。
なぜなら、企業の情報部門(IT組織)の業務は多岐にわたる。ITの整備と安定稼働、経営戦略と同期したIT戦略の策定と実行、ITリスクのコントロール……。従来のIT組織ではリソース的にDX推進の役割まで抱えきれない、というのが実情だろう。また、どうしても事業部門とは組織的に距離があるため、IT組織だけで事業変革を伴うDXを背負うのは重荷といえる。
やはりDX専門の組織を設置し、企業の変革を進めるのが理想的な姿といえるのではないだろうか。
「選択と集中」が人手不足解消のカギ
いざDX専門組織を立ち上げて、それを拡大していく際にも気を付けるべきポイントがある。そもそもDXにおいては、ボトムアップで具体的な施策を行って企業内に浸透させるアプローチがあるが、企業自体のビジネスモデルを変革するのであれば、経営層からのトップダウンが求められる。そのため多くの企業では、DX専門組織を経営層の直下に配置するケースが多いようだ。
そうした組織づくりの中で、「DX専門組織を立ち上げても、人材が確保できない」という課題にぶつかる企業は珍しくない。そこで現存するリソースで何ができるかを検討することになるが、そのポイントは「選択と集中」である。
企業の事業に直結する部分、たとえばバリューチェーンの主領域、販売やサービスの領域に関しては内製化を進め、自社の人員リソースを集中する。技術領域に関してはベンダーから側面支援を受ければよい。つまり自社では事業の変革に関わる上流をしっかりと押さえ、下流はITアウトソーシングやベンダーの設計・開発をうまく活用するというわけだ。
いかがだろうか。ぜひ本稿をDX推進のヒントとして活用していただければ幸いである。