「MATLAB EXPO 2022 JAPAN」が5月25日に開催される。昨今のDXトレンドを受け、モデルベース開発を中心としたデジタル化の取り組みは幅広い層から注目を集めている。今年のテーマは「適用領域の広がり」。MATLAB、Simulinkユーザーはもちろん、MathWorks製品を使ったことがない人の好奇心やニーズも満たすような内容だ。今年は、グランドニッコー東京 台場の会場とオンラインを使ったハイブリッド開催となる。見どころをMathWorks Japanに聞いた。

DXを受け適用領域が広がるモデルベース開発、MathWorksが考える成功のカギとは

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた企業の取り組みが大きく広がっている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、さまざまなビジネスシーンでデジタル技術の活用が広がった。デジタル化の恩恵を実感したことで、多くの企業がDXを具体的な施策の1つとして推進するようになり、それがDXの広がりを加速させている状況だ。

実際、自動車や自動車部品の製造・シミュレーション(解析)分野で幅広く採用されているモデルベースデザイン (MBD)も、車両制御や部品にとどまらず、自動車が走行する周辺環境や、街そのもののデザインといったより広い領域に適用されるようになっている。MathWorksで長年にわたってMBDを活用したものづくりを支援してきた大塚慶太郎氏はこう語る。

MathWorks Japan
アプリケーションエンジニアリング部
シニアチームリーダー 大塚 慶太郎 氏

「MBDは、仮想空間上のモデルを使って検証・テストを行なうことで、開発速度の向上と品質の向上を実現するアプローチです。例えば、EV(電気自動車)の自動運転開発において、EVの車両やその制御だけではなく、EVが走行する道路や信号、通行人などを合わせてシミュレーションしたり、街全体をスマートシティの取り組みのなかで検証するといった取り組みが進んでいます。自動車業界だけでなく、機械設計や建設・建築、エネルギー、半導体製造、鉄道、農業、医療、航空宇宙など多岐にわたる業界で活用が広がっています」(大塚氏)

また、製造業をはじめ、多くの業界がカーボンニュートラルやサステナビリティに向けた環境規制に対応していくことが求められるようになっている。エンジンやモーターなどを素早く実装するだけでなく、排気ガスや電力効率、騒音といった新たに求められる要件についても、素早く対応していく必要がある。また、日々発展する自動運転やADAS技術との連携、ディープラーニングに代表されるAI(人工知能)や機械学習の活用、ロボットとの協調動作や自律システムの開発なども重要になってきた。

「DX成功のカギは、MBDをはじめデータの活用などさまざまな技術や知見、ノウハウをかけあわせて開発することです。そのためには、先行事例から知見やヒントを得たり、ノウハウを持った他社と協業したりといった共創が重要になってきています」(大塚氏)

MATLAB EXPOの基調講演は「ホンダ Legend開発事例」と「デジタル衛星開発とDX」

技術の共創を実現するうえで見逃せないイベントが、MathWorksが毎年開催しているユーザーカンファレンス「MATLAB EXPO」だ。MathWorksが提供するMATLAB、Simulinkのユーザーが一堂に会し、自社の取り組み事例を発表する。今年の日本開催は、2022年5月25日で、グランドニッコー東京 台場を舞台にリアルとオンラインを組み合わせて実施される。

コロナ禍で昨年はオンライン開催となっていたが、昨年実績では4000名を超えるエンジニアや研究者が参加。DXのトレンドを反映するように、MATLAB EXPOへの注目度も年々高まっている。今年はリアル×オンライン開催になったことで、企業各社の取り組みがより身近にリアルに感じられるはずだ。大塚氏は今年の「MATLAB EXPO 2022 JAPAN」のテーマについて、こう説明する。

「今年の掲げるテーマは『ますます広がるMATLAB、Simulinkの適用先』です。多岐にわたる産業界で活用されていることを踏まえ、より多くのユーザー事例講演を設定しました。また、MBDの定義自体が広がり、製品のモデリングだけでなく、3次元空間でのシミュレーション環境そのものをモデリングするといった取り組みまで発展してきています。そうした広がりを感じられる構成となっています」(大塚氏)

1つめの基調講演では、本田技研工業が「自動運転レベル3を実現した開発現場の挑戦と今後の展望」と題して、世界で初めての自動運転の型式認証を取得し、2021年3月に発売を開始した「Legend」の開発事例を紹介する。開発の要件や基準が社内にも社外にも存在しない中で、現場ではどう苦闘したのかが明かされる予定だ。

2つめの基調講演では、三菱電機が「加速する宇宙利用時代に向けた次世代デジタル衛星開発とDX」と題し、次世代衛星開発における革新的なデジタル化設計・製造の取り組みを紹介する。衛星開発では、宇宙環境の過酷な状況における長期の信頼性確保に加え、低コスト・短納期化が課題になっており、それらをMBDでどう解消していったのかが紹介される。

当日しか聞けないMATLABとSimulinkユーザー事例講演

MATLAB EXPOは、MATLAB、Simulinkユーザーが積極的に参加するユーザー参加型イベントとしても知られている。基調講演はもちろん、講演のほとんどがユーザーの事例講演で占められていることが特徴だ。今年は全25講演中24講演がユーザー事例講演という構成となっており、当日しか聴講できない講演も多数ある。午後の講演は、カテゴリーごとに5つのトラックに分けられている。以下では、各トラックを簡単に紹介していこう。

「機械学習とディープラーニング」トラックでは、電源開発、新明和工業、トヨタ自動車の事例が発表される。「AIの進化は著しく、AIの専門家でなくても業務に活用できるようになっています。今年のトレンドは、高度な専門知識が必要となる業務を支援するAI。目視による外観検査など熟練のベテランに頼っていたさまざまな業務をAIで代替する取り組みが活発になっています」(大塚氏)

例えば、電源開発の講演では「異常検出アプリの開発及び実装に向けた取り組み」と題して、ドローンによる空撮画像をAIで解析して精度を向上させ、アプリに組み込むことでユーザーの使い勝手を向上させた事例が紹介される。

「広がるモデルベースデザイン」トラックでは、IHI、SUBARU、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ、トヨタ自動車、日立Astemo、日本信号の事例が発表される。「MBDの産業の広がりを強く感じられる内容です。ジェットエンジンやドローン開発、宇宙開発、鉄道の信号開発などの現場で、どのようにMBDが活用されているかをご理解いただくことができます」(大塚氏)

例えば、IHIの講演では「エンジン制御ソフトウェアの開発効率・製品価値向上への挑戦」と題して、航空機向けジェットエンジンのエンジン制御ソフトウェアの設計にMBDを導入し、設計効率と品質の向上を実現した事例が紹介される。

独自の工夫や試行錯誤による成果が盛り込まれた講演から、取り組みのヒントを探る

「パワーエレクトロニクス」トラックでは、本田技術研究所、京都大学/トヨタ自動車、大阪大学、武蔵精密工業、IHIの事例が紹介される。「カーボンニュートラルの実現や燃料電池の開発におけるMATLAB、Simulinkの活用事例が多く、電力やインフラをどう制御していけばよいかなど、コンポーネントレベルでのエネルギーの効率化・最適化というよりさらに広い観点からパワーエレクトロニクス開発を把握できます」(大塚氏)

例えば、本田技術研究所の講演である「Honda eMaaS 実現に向けた、車両エネルギーマネジメントとSimulinkの活用」は、大塚氏の語る本トラックのテーマを強く感じられる内容となっている。

「自動運転とADAS開発」トラックでは、神奈川工科大学、本田技術研究所、いすゞ中央研究所の事例が紹介される。「自動運転は、街づくりとセットで研究が進められています。実車を作らずに検証する環境を作っていくことで、取り組みをさらに加速させることができます。そのためにはセンサーのシミュレーションなども必要になってきます」(大塚氏)

例えば、神奈川工科大学の講演「仮想空間による自動運転安全性評価シミュレーションDIVPの開発:DIVPとMATLAB/SimulinkのCo-sim.連携」では、走行環境から、空間伝搬やセンサーまでの一連のモデルを作り、リアル環境と一致性の高いシミュレーションモデルを実現した事例が紹介される。

「ロボティクスと自律システム」トラックでは、ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ(ソニーGMO)、AGRIST、FUJI、名古屋大学の事例が紹介される。「ロボティクスと自律システムは、自動運転とともに、DXの活用が進んでいる領域です。仮想環境でのシミュレーションやデジタルツインの取り組みなど、最新実例を確認することができます」(大塚氏)

例えば、ソニーGMOの講演では「ゲームエンジンを用いた生産自動化設備の撮像シミュレーション」と題し、自動化設備のセンサーカメラの画像認識プログラム開発において、Unreal Engineを用いて光源や対象部品を再現し、仮想空間でリアルタイムに撮影画像を生成した事例が紹介される。

いずれの講演にも、企業独自の工夫や試行錯誤の経緯、成果が盛り込まれており、自社の今後の取り組みに大いに参考になる事例ばかりだ。

プログラミングコンテスト、ライトニングトーク、Woman in Techなど人気企画もリアル開催

今年のMATLAB EXPOは、例年行なってきたブースでのデモ展示や、ライトニングトーク、Woman in Techなどの人気企画がリアル会場で復活する。

デモ展示会場では、パートナー各社とMathWorksブースが一堂に会し、ハードウェアの操作体験やロボット展示などリアルならではの展示も多数予定しており、直接エンジニアと話ができる。また、来場者が自ら作成したプログラムでスコアを競うプログラミングコンテストも実施予定だ。

毎年大人気のライトニングトークは、今年も社会人から学生まで幅広い層がエントリーしており、ユニークなセッションが繰り広げられることに期待したい。終了後は登壇者との交流会を予定しているという。また、女性エンジニアのネットワーキングプログラムであるWoman in Techも今年で5回目を迎え、ますますパワーアップしているとのことだ。

「2年ぶりのリアル開催復活ということもあり、当社のエンジニアの士気も高まっています。会場に参加いただき、質問や疑問を直接ぶつけていただくことで、未来の開発に向けてさまざまなヒントが得られるはずです。ハイブリッド開催なので、来場できない方も、オンラインで情報を収集することができます」(大塚氏)

MATLAB、Simulinkユーザーはもちろん、製品に触れたことがない開発者や、MBD導入を進めている企画担当者など、幅広い層を対象にした魅力的なイベントだ。奮ってご参加いただきたい。

MATLAB EXPO JAPAN 2022
5月25日(水)

MATLAB/Simulinkユーザー様による事例紹介を中心とする技術講演を通し、革新的な最新技術をご紹介いたします。

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[PR]提供:MathWorks Japan(マスワークス合同会社)