日報や売り場の様子、倉庫の棚卸状況——こうした店舗や倉庫など現場のあらゆる情報をデータ化し、リアルタイムで共有することが求められている昨今、データ入力を簡単に行う手法としてアプリ活用が注目されている。

モバイルアプリ作成ツール「Platio(プラティオ)」を提供するアステリア マーケティング本部プロダクトマーケティング部 大野晶子氏は、9月22日にオンライン開催された「リテールDX ソリューションカンファレンス 2021」で、業務用モバイルアプリをノーコードで誰でも簡単に作成して現場ですぐに活用する方法について、事例を交えながら紹介した。

  • アステリア マーケティング本部プロダクトマーケティング部 大野晶子氏

なぜ現場には非効率な業務が残ってしまうのか?

DXの重要性は理解しているものの、何からはじめればよいのかわからない、上手く進んでいない、という企業も多い。大野氏は、DXのはじめの一歩を踏み出すためには、まず現場に残るアナログ業務のデジタル化に取り組むことを推奨する。ここでいう「現場」とは、店舗や倉庫、客先などのフィールドワークの現場のことを指し、現場で働くスタッフやエリアマネージャーが対象となる。

そして大野氏は、現場業務のデジタル化を通して業務プロセスの改善を図る取り組みのことを「現場のDX」と定義したうえで、「現場のDXを推進するにあたっては、業務をデジタル化し、非効率なアナログ業務から脱却することがポイント」と語る。

現場業務においては、情報管理の部分に課題が多い。たとえば、エリアマネージャーの場合、1人で多くの店舗を回って報告書を作成しなければならない、視察時のチェック項目が多く時間が足りない、外出が多く本部や店舗との情報共有がスムーズに進まない、店舗担当者の場合は、勤怠管理・在庫管理等の事務的な作業負担が大きい、他の店舗がどのような運用をしているか情報がなく不安、といったように、報告や情報共有がそれぞれの役割において上手くできていないことによる悩みが発生している。

こうした課題を解決するためには、アナログな情報管理の方法をデジタル化していく必要があるが、現場業務における報告や情報共有は、いまだに電話や紙などのアナログな手段が使われることが多いのが現状だ。

電話の場合は、記録が残らず情報共有がしづらい、紙の場合は、情報をExcelなどに手入力してデータ化するという作業が発生してしまうなど、非効率な面が大きい。なぜこのような非効率な業務が残っているのか。大野氏は次のように考察する。

「現場では、細かく煩雑な作業が多いため、既存のパッケージ製品では機能不足か、あるいは高機能すぎて使いにくく、最適なツールがない状態。コストを掛けて独自のツールを開発しようとしても、経営側からすると現場の効率化具合がわかりづらく投資のインパクトを把握しづらいため、優先順位が低くなる。また、費用対効果の算出が難しく、現場での検証や稟議に時間が掛かってしまう割に、ツールが完成したときには現場の運用が変わっているということもありえる」(大野氏)

そこで、大野氏が提案するのが、現場の業務に合わせてモバイルアプリを作成し、活用するという方法だ。現場では移動や立ち仕事が多くPCによる作業時間が取りづらい実情を考えても、誰もが持ち運びできるスマートフォンを情報管理のデバイスとして活用することは効果的である。

さらにモバイルアプリであれば、アプリで報告するだけでデータがクラウド上に蓄積されるため、リアルタイムで他のユーザーもスマートフォンからデータを確認できるようになるほか、集計や分析作業が容易になる。このように、モバイルアプリをうまく活用すれば、紙や電話による従来の報告業務の課題が解決されるというわけだ。

モバイルアプリの活用で期待される効果とは

続いて大野氏は、現場業務における具体的なモバイルアプリ活用のイメージをPlatioの導入事例をもとに紹介した。

大野氏がまず取り上げたのは、スポーツ用品店チェーンを展開するオッシュマンズ・ジャパンの事例。Platio導入以前の同社では、売り場ごとに写真を撮影し、メールに添付する形で店長が店舗の状況を本部へ報告。本部でこの情報をまとめ、週に1回の頻度で社内掲示板を通して全店舗の様子について情報共有していた。しかし、Platioを導入したことで、現場のスタッフ自らがアプリで売り場の状況を報告し、全店舗に対してリアルタイムに情報が共有されるようになった。

「売り場の変更報告が数分でできるようになり、報告を取りまとめる業務の工数がゼロになった。また、リアルタイムに他店の状況が把握できることで、店舗間のコミュニケーションが活性化し、よりよい売場づくりと接客時間の創出につながっている」(大野氏)

複合カフェ「自遊空間」を運営するランシステムでは従来、店舗巡回における運営状況の報告はメール、内部統制に関する情報の報告は紙を用いて行っていたが、Platioの導入によりこれらの報告がすべてアプリで一括管理できるようになった。かつて紙に記載された情報はExcel上に転載しデータ化する必要があったが、この工数が完全に撤廃されたと同時に、報告と取りまとめに掛かる作業時間を3時間から30分へと短縮。ゾーンマネージャー1人あたりの業務工数を年間600時間削減することに成功した。

大野氏は「報告内容が関係者に速やかに共有されるようになったことで、課題解決のスピードが向上。巡回報告のほかに内部統制のチェックもできるため、健全な運営の強化を実現した。アラートによる入力漏れ防止で、データの入力品質も向上できている」と説明する。

銀座・浅草で百貨店業を展開する松屋では、食品衛生管理にアプリを活用した。従来、食品衛生に関する情報は売り場で担当者が紙に記入し、これを衛生管理者が売り場へ出向いて確認して、その場で修正指示を出す必要があった。しかし、Platioを導入したことでアプリ上で衛生管理者が遠隔から確認できるようになったため、迅速な業務対応が可能となった。

「売り場で情報を共有して、現場での対応を待つという工数が大幅に削減されただけでなく、全店の衛生管理レベルが均質化された。さらに、確認履歴を参照できるようになったことで現場の知識定着が進み、ミスが減少している」(大野氏)

“ノーコード”だから、誰でも簡単かつ低コストでアプリの作成・運用が可能

上記で紹介したいずれの事例も、モバイルアプリの制作期間はたったの数日。Platioでは、「店舗視察」「店舗改善レポート」「写真日報」「清掃点検」などといった100種類以上のテンプレートから目的のアプリを選び、クリックやドラッグアンドドロップといった簡単なマウス操作のみでアプリを開発することができる。つまり、コードを書く必要のない“ノーコード開発”が可能ということだ。プログラミングの専門知識がない人でも、簡単かつ低コストでアプリを作成し、すばやく現場の要望に対応していくことが可能となる。

また、現場の状況に合わせてアプリの修正・改善も簡単に実施していける。大野氏は「日々の修正によってアプリがより使いやすくなることで業務改善に直結するうえに、現場のスタッフが意見を発信するモチベーションにもつながる」と説明する。

  • アプリの編集画面。日付や位置情報、チェックボックスなど必要なフィールドを選んで並び替えていくだけで、アプリを作成できる。

  • データビューアー。アプリから入力されたデータは項目ごとに整理されて一覧表示される。ExcelやCSVへの書き出しも可能。

Platioは、初期費用ゼロで月額2万円から利用することができる。30日間の無料トライアルモバイルアプリ作成体験セミナー導入事例集なども用意されているので、興味を持った方はぜひこれらも活用してみてほしい。

「まずは自社の現場業務に目を向けて、できるところから改善できる取り組みを始めてみていただければ」(大野氏)

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