2013年に3Dプリンタが脚光を浴びてから、はや8年の歳月が流れた。いまや製造業に欠かせない存在であり、より身近となった3Dプリンタだが、もっと大きな造形を高品質で出力したいというニーズを抱えている企業は多いのではないだろうか。

Formlabsは2020年8月、造形エリアW335×D200×H300mmを確保した「Form 3L」の国内販売を開始した。従来製品「Form 3」が備える高精細出力と多様なレジンへの対応をそのままに、5倍のビルドボリュームと2倍のレーザパワーを実現。そんな「Form 3L」は製造業にどのような価値を与えてくれるのだろうか。製造業が抱える悩みとともに探っていこう。

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Formlabsの3Dプリンタ「Form 3」と材料が、製造業にどのようなメリットをもたらすかについては、シリーズ前作「”製造業のよくある悩み” 3Dプリンタ『Form 3』と各種レジンで解決!」をご参照ください。

  • Formlabs製品画像

製造業が抱える3Dプリンタの悩み

「3Dプリンタがもう少し大きかったら……」と思いつつも小型3Dプリンタを使っている場合、「A:出力のアウトソース」もしくは「B:データを分割して出力後に結合」という2つの課題に直面することが多い。

一方、大型造形が可能な3Dプリンタを保有していても、それが「C:FDM(熱溶解積層)方式の大型3Dプリンタ」の場合は「造形の仕上がりが荒い」という課題を抱えることになる。

こうした3つの課題について製造業を例に掘り下げてみよう。

課題A:「出力のアウトソース」はコストと納期、仕上がりに不安

Aさんが勤める大型造形を取り扱う製造会社Aは、3Dプリンタを保有していない。なぜなら、製造するパーツが大きく、そのために大型の3Dプリンタが欲しくても設置するスペースを社内に確保できないからだ。そうした事情から、3Dプリンタが必要になった際には外部の出力サービスに委託しているという。

しかし、出力のアウトソースはやはりコストが割高となり、納期にも時間がかかる。そしてなによりも進捗状況が見えないため、納品まで仕上がりのクオリティがわからないリスクもある。先日は、届いたパーツの仕上がりが想定と大きく異なり、Aさんは上司に大目玉を食らってしまった……。

  • 課題A:アウトソースした大型造形が想定外の仕上がりで困惑している様子

課題B:「データを分割して出力後に結合」はリソースと特性に問題

自社で所有している3Dプリンタの品質には満足しているものの、大型造形に課題を感じている製造会社Bの開発部Bさん。一般的なSLA(光造形)方式の3Dプリンタは高精細ではあるものの、大型造形はできないためだ。大型造形が必要になったときは、縮小モデルで対応するか、元データを分割して個別に出力し、手作業で結合している。

縮小モデルでは顧客への提案意図がうまく伝わらず、実物大モデルの必要性を痛感。一方で分割出力による結合作業では、接合部分が合わないことも多く、加工による微調整に時間と人的リソースを浪費しているという。そのうえ使える素材も限られているので、機能的な検証ができず、ただ見たり触ったりする目的にしか使えない。

  • 課題B:商談で縮小モデルを持参するがイメージがうまく伝わらない様子と分割出力した際に接合部がうまくあわず工数がかかっている様子

課題C:「FDM方式の大型3Dプリンタ」はクオリティに難

FDM方式の古い大型3Dプリンタを所有している製造会社Cの開発部Cさんは、3Dプリンタの造形が粗く、品質に納得がいかなかったという。FDM方式の3Dプリンタを使用していることにより、社内で出力したものはすべて後工程として研磨を行っている。せっかく社内に大型3Dプリンタがあるのに、結局は仕上げに時間と人的リソースを浪費しており、出力した造形物は妥協の産物になりがちだ。

  • 課題C:自社で持っている3Dプリンターの仕上がりに満足いかず、研磨している様子

従来の3Dプリンタの悩みを解決する「Form 3L」

このような製造業の課題を解決する一助となるのが「Form 3L」だ。

「Form 3L」の最大の特長は、「Form 3」と同様の高精細と滑らかさを備えつつ、大型造形を実現できる点だ。その高品質の秘密は、SLA方式を進化させ、造形時にかかる剥離力を低く抑える「LFSテクノロジ」を採用していることにある。

また、従来の「Form 3」の造形エリアは145×145×185mmなのに対し、「Form 3L」は335×200×300mmとなる5倍以上の造形エリアを実現。分割したパーツを結合する手間が省けるのはもちろんのこと、結合によって生じる造形物の欠陥を抑え、完成度を飛躍的に向上させてくれる。

  • Form3Lで制作したヘルメットの写真

「Form 3L」は、「Form 3」や「Form 2」用の数多くのレジンがそのまま使えるので、堅い/柔らかい/熱に強い/薬品に強いといった物理特性を再現し、検証の幅を大きく広げられる。

  • ABS樹脂と同等の硬さを持つ「Tough 2000 Resin」の写真

    ABS樹脂と同等の硬さを持つ「Tough 2000 Resin」

  • ゴムのように柔らかい「Flexible 80A Resin」の写真

    ゴムのように柔らかい「Flexible 80A Resin」

造形物との接点を小さくすることで、造形物を支えるサポート材の取り外しやすさや造形後の処理を容易にするライトタッチサポートも「Form 3L」の特長だ。造形後の後処理の手間を減らすことで、時間と人的リソースも軽減できるのはもちろん、接合部表面もより滑らかに仕上げられる。

また、「Form 3L」はコンパクト設計で、W90×D96×H104cmのスペースがあれば設置できる。これまで大型3Dプリンタのためのスペースを確保できなかった場合でも、設置場所を確保しやすくなっている。

  • コンパクト設計の「Form 3L」の写真

社内で出力し、後処理の手間が減らせれば、人件費や発送費、材料代などのコストを抑えながら短納期を実現できる。そして出力状況を常に把握できるため、途中でデザイン変更があったり、想定どおりの仕上がりになっていなかったりといった状況でも柔軟な対応が可能になるだろう。

ものづくりを加速化させる大型造形

実際に、3Dプリンタでシャベルを出力した事例を紹介しよう。まず、時間・コストの面では出力をアウトソースした場合と比較すると、製作期間が7日かかっていたのが3日に短縮され、製作コストは$425から$70と大幅に削減している。また、サイズを縮小した場合、実際の使い勝手を想定することは難しいが、実寸大ならば「取っ手の握りやすさ」「収納時の利便性」「梱包箱・収納袋のサイズ」といった細かい使用シーンを想定した検証が簡単に行える。100%スケールでクオリティの高い出力できることは、スケール解釈をする必要がなくなり、製造業にとって大きなメリットとなるのだ。

  • Form3Lで制作したシャベルの写真

ピンチをチャンスに変える発想をカタチに

2020年の新型コロナウイルス流行においても、諸外国の3Dプリンタ市場では活況を呈していたという。パンデミックの影響が大きかったにも関わらず、そのような事態に対応するために3Dプリンタで新しいものづくりの在り方を模索していたのかもしれない。

「Form 3L」は大型造形に対応しつつも省スペースを両立。高精細な出力を実現しており、製造における時間と人的リソースの削減に寄与してくれる。より大型の造形物を高精細なまま作れることは、現場の開発スピードを上げ、新しい着想を得ることにも繋がるはず。製造現場に、確かな技術を備えた人材が多い日本であれば、その強みを活かしたものづくりが行えるのではないだろうか。

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