現代のビジネスにおいて、デジタルテクノロジーの活用はもはや不可欠といえる。日本の通信業界では5Gの本格展開もスタートし、企業が扱うデータ量は増加する一方。あらゆるシーンで生成される膨大なデータを適切に処理し、有効活用できなければ競争力を維持することは難しいのが現状だ。こうした状況のなか、限られた人員や時間で、効率的にデータを処理し業務をこなすためのBIツール、すなわちデータ分析プラットフォームが注目されている。

 2021年2月25日に開催されたオンラインセミナー「【通信業界必見!】効率化・自動化を実現するAlteryxによるこれからの業務スタイル」では、モバイルとワイヤレスの豊富なノウハウを活かしたソリューションを展開するKCCSモバイルエンジニアリングと、最先端のデータ分析プラットフォーム「Alteryx」を提供するAlteryx社により、通信業界が抱える課題と、その課題を解決するためのアプローチについて語られた。

通信業界の課題を解決するデータ分析プラットフォーム「Alteryx」とは

通信業界における最先端の業務効率化・自動化について掘り下げられた本講演では、KCCSモバイルエンジニアリング株式会社(以下KCME) デジタルイノベーション事業部 データソリューション部 部長 梶谷 明正氏と、アルテリックス・ジャパン合同会社 ACCOUNT EXECUTIVE 遠矢 吾郎氏が登壇。世界600社以上の企業・組織が導入しているデータ分析プラットフォーム「Alteryx」が、現代の通信業界が抱える課題をどのように解決するのか、デモンストレーションと事例を交えて詳細に解説された。

携帯電話のエリア調査・設計・最適化業務に従事し、モバイル関連のデータ分析から業務の効率化までを行ってきた梶谷氏は、KCMEにおけるBIツール事業立ち上げにも携わっており、数々のAlteryx資格を有している。

「Alteryxを使い始めた当初は操作に慣れておらず、Excelのマクロのほうが簡単に自動化できるという印象でした。ただ、完成したものを動かしてみると、膨大なデータ量でも素早く結果を出してくれることに驚きました」(梶谷氏)

KCCSモバイルエンジニアリング株式会社 デジタルイノベーション事業部 データソリューション部 部長 梶谷 明正氏

KCCSモバイルエンジニアリング株式会社
デジタルイノベーション事業部
データソリューション部 部長
梶谷 明正氏

Alteryxのファーストインプレッションをこう語った梶谷氏。「Alteryxの使い方に慣れてくると、圧倒的に開発がスピーディになり、効率化・自動化の作業自体に時間を取られなくなりました」と、使い方を覚えることでより多くの効果を実感できたと続ける。梶谷氏は、Alteryxの個人的な見解として、プログラムができず、Excelの関数に慣れているようなユーザーには、ツール=関数という認識で受け入れやすいのではと語る。

梶谷氏の言葉を受け、遠矢氏はAlteryxの生い立ちを語る。

「Alteryx社の前身となるSRC(Spatial Research Consulting)は、人口統計をベースに米国の国税調査を担っており、そこに所属するデータサイエンティストが、自身の業務を効率化するためのツールを開発。それを2006年よりデータ分析プラットフォーム「Alteryx」として販売するようになりました」(遠矢氏)

「データ処理プロセスの自動化」により、通信業界が抱える課題を解決する

アルテリックス・ジャパン合同会社 ACCOUNT EXECUTIVE 遠矢 吾郎氏

アルテリックス・ジャパン合同会社
ACCOUNT EXECUTIVE
遠矢 吾郎氏

続けて語られたのは「通信業界を取り巻く課題」について。梶谷氏は世界のIPトラフィック(通信データ量)が加速度的に増加を続けている現状を語り、モバイルデータ通信に限ると、さらに高い伸びを示していると現状を確認。データ量が増加することで、データ分析プラットフォームの重要性が高まると話す。

それを受けた遠矢氏は、Alteryxをヘビーに利用しているワールドワイドのトップユーザー上位20社に、通信業のユーザー4社が入っていることを述べ、通信業界におけるAlteryxの活用が拡大していると説明する。

  • 増加し続けるモバイルデータ

日本の通信業界の課題として、梶谷氏が挙げたのが「利用周波数と無線基地局の増加」だ。1979年にアナログの移動通信サービスとして始まった携帯電話は、1993年にデジタル化したことを機に急速に発展。当初は2つ程度だった割当周波数は、トラフィックの増加もあり、現在では5Gも含め11周波数まで増加していると梶谷氏。さらに、社会基盤として日本全国どこでも利用できるようにするため、携帯電話基地局も増やす必要があったと語る。

「現在では各キャリア合計で約99万局(令和元年実績)の基地局が開設されています。これらの基地局は、日々保守・管理を行う必要があり、Excelなど従来のツールで管理作業を行うのは難しくなってきています」(梶谷氏)

  • 増え続ける無線基地局

梶谷氏は、基地局を設置する際の工程を大きく「計画」→「設計」→「工事」→「運用」の4つのパートに分け、「パートごとに担当部門が異なることも多く、各部門で管理システムを構築しているような場合はシステム間の連携が必要となってきます」と基地局の拡大に伴う課題を語る。さらに、携帯電話システムの移り変わりが早いことも課題に挙げ、システムが変更されるたびに何かしら手を入れなければならず、管理システムがブラックボックス化するケースもあると警鐘を鳴らす。
こうしたシステム間の連携や各パート内の工程での課題は、Alteryxで解決できるものが多いと梶谷氏。特にエリア調査や電波伝搬シミュレーション、工程管理などで大きな効果を発揮すると解説する。

さらに梶谷氏は、通信業界(携帯電話業界)が抱えるExcel/Accessでデータを扱う際の課題やGIS(空間処理のソフトウェア)を扱う際の課題をリストアップし、「属人化」「ツールの仕様(性能限界)」「データフローの見通しの悪さ」「自動化の高いハードル」の4つに分類。これらを解決するためには「学習コストが低く」「ツールの能力が高く」「データフローの見通しが良く」「自動化が簡単に行える」ソリューションが必要と述べ、このすべてを兼ね備えているのがAlteryxと力を込める。

  • Alteryxは「ツールの能力が高い」
  • Alteryxは「データフローの見通しが良い」
  • Alteryxは「自動化が簡単」

「Alteryxはアイコン型のツールを並べて、データフローを構築できます。このため学習コストが低く、属人化が起こりづらくなります。処理速度も早く、扱えるデータ量にも制限がない(Excelは約100万行、Accessは2GBの制限あり)などツール性能も十分です。また各ツール間のデータの流れが可視化されており、データ処理を行った時点で自動化も完了するなど、通信業界の課題を解決する要素を網羅しています」(梶谷氏)

梶谷氏は、Alteryxを「業務を最も知っているユーザー自らが手軽に効率化を行えるツール」と位置付け、Analytic Process Automation(APA:データ処理プロセスの自動化)を実現するプラットフォームと説明する。

「たとえばRPAは、現在行っている処理をブラックボックスのままロボットに実行させるイメージですが、AlteryxによるAPAは処理を明確化し、さらにデータと処理プロセスが集約されることにより、ビジネスの結果を、より高速に出すことができるようになります」(梶谷氏)

講演では、Alteryxプラットフォーム上で「データ準備/ブレンド」「分析」「共有」といった処理を実行、さらにBIツールなどへのアウトプットやPDFでのレポーティング、データベースへの反映などの出力を行うといった、Alteryxによるデータ分析の流れを解説。GUIによるノンプログラミングのワークフロー作成が行える「Alteryx Designer」の概要や、高度で柔軟な分析を実現するために用意されて260種類の豊富なツール群を用いてワークフローを組み立てる手順が、実演デモを交えてわかりやすく説明された。

  • Alteryxによるデータ分析の流れ

通信業界におけるAlteryxのユースケースと、大きな成果を得た国内導入事例

セッション後半では、通信業界におけるAlteryxの活用事例が紹介された。まずはAlteryxがよく使われる一般的なユースケースとして、「処理に時間のかかるExcelのマクロの置き換え」「大量のデータを処理しているAccessのマクロやクエリの置き換え」があり、その効果は開発速度向上(50倍以上)、処理速度向上(数百分の1)にも及び、メンテナンス性も向上させると梶谷氏。さらに「レポーティングの自動化」に利用することで、複雑なSQLから脱却し、処理速度が1週間→数分に向上。「ポリゴン加工処理を含むようなGISを使った空間・地図分析の自動化」においても、容易な自動化と処理速度の向上を実現していると話す。

また、Alteryxによる通信業界向けソリューション例も多数提示。「ランドマーク内でのエリア外箇所の抽出」「電波伝搬シミュレーションツール用データのメンテナンス」「発注先から出てくる工程の集約、集計、進捗管理」「品質データの可視化、集計」「障害データから障害エリアの可視化」「法人向け売上先別の集計」など、Excelマクロ、Access、GISを使ったあらゆる作業を効率化できることが紹介された。

さらに梶谷氏は、国内における個別の事例をピックアップし、導入効果を解説した。

「『進捗管理のための集約作業自動化』事例では、ファイルを一箇所に保存し、実行ボタンを押すだけで瞬時に結果が出るようになり、入力データのエラーチェックも容易になるなど大きな成果を得ています。『品質データの集計・抽出処理』事例では、これまで2~3時間かかっていた基地局パラメータ変更前後2週間分のデータ(約40億レコード)抽出処理時間を83%削減。30分程度で実行できるようになりました」(梶谷氏)

  • 品質データ集計等処理

このほかにも、運用工程における「エリアマップ作成の自動化」(効果:手順の明確化、属人化の解消など)、「フィールドの調査ログ」(効果:マクロ開発時間を4時間→30分程度に短縮)、「ロケーションレポートの自動化」(効果:ノンプログラミングでの導入、省力化)、「電波伝搬シミュレーション作業の効率化」(効果:準備作業のワークフロー化により工数を72%(40人日→11人日/月)削減)などの事例を紹介。すでに多くの通信業の課題を、Alteryxが解決していることが確認できた。

  • 事例紹介

グローバルな事例から、通信業におけるAlteryxの導入効果を確認する

グローバルでの通信事業におけるAlteryxの活用事例は、遠矢氏から紹介された。まずは、Alteryxのヘビーユーザーで1,000名以上がAlteryx Designerを利用しているSprint(スプリント)の事例について語られた。RF(高周波無線)エンジニアリングにおけるタスクに導入した結果、1ファイルに1時間かかっていた処理時間を500ファイル/3時間にまで短縮。166倍以上の高速化を実現したほか、手作業からの脱却(自動化)、品質の向上、大幅な工数削減(1タスクで497時間削減)など、多くの効果を得ているという。

  • ROI事例/スモールスタート&ビックバン導入

「これは1つのタスクにおける効果を紹介したものに過ぎません。スプリントでは、10名程度のスモールスタートでAlteryxを導入し、効果を確認しながら活用を拡大。現在は多数のタスクをAlteryxで自動ワークフロー化して約41億6,000万円にも及ぶ膨大な投資対効果を実現し、通信品質ナンバー1、顧客満足度ナンバー1という実績を得ることができたといいます」(遠矢氏)

このほかグローバルな導入事例として遠矢氏が紹介したのは、ヴォーダフォン・グループをはじめ、ベライゾン(効果:開発時間4時間→1時間未満、再開発時間4時間→数分)、ロジャース・コミュニケーション(効果:生産性向上、モチベーション向上など)、テレストラ(効果:生産性向上など)など。Alteryxの活用がワールドワイドで拡大していることが理解できる事例紹介となっていた。 梶谷氏は、ここまで語ってきた内容をまとめ、講演を締めくくる。

「Alteryxは国内外で活用されており、さまざまな業務を効率化・自動化できます。高度な知識不要で現場のメンバー自身が使えるツールである、というところが大きなポイントといえます。実際に導入した企業からは『ワークスタイルが変わった』という声をいただいております。データ活用に課題を感じているのならば、無料トライアルで実際に体験してみてはいかがでしょうか」(梶谷氏)

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